私たちはなぜ物語に惹かれてしまうのか？はじめての「ナラトロジー（物語論）」

イギリスの作家デイヴィッド・ロッジによる小説技法の指南書です。英米の小説を中心に50作品を紹介しながら、作中の技術的要素をエッセイ風に解説。ヴァージニア・ウルフの「意識の流れ」、カズオ・イシグロの「信用できない語り手」などを取り上げ、文豪たちがどんな技巧を凝らしてきたのか知ることができます。

作家歴60年超えの筒井康隆が「作家としての遺言」と称して、独自の小説作法を教えてくれる贅沢なエッセイ。物語を引き立てる要素を「色気」「省略」「電話」といった項目に分類し、古今東西の文章を例にとりながら解説していきます。創作に役立てるだけではなく、読書の楽しみ方を広げるという意味でもオススメの一冊です。

物語論は20世紀初頭のロシアで流行したフォルマリズムを起源とし、フランスの言語学や構造主義に持ち込まれながら発展してきました。本書はそうした物語論の歴史や仕組みを学び、実際に作品を解釈することで「物語」の設計図を明らかにしていきます。バラエティに富む作品の選び方も秀逸で、入門書として絶好の一冊です。

人間は、事物をストーリー形式で理解し、さらにそれを物語として表現します。私たちは今この瞬間も目の前の事柄を物語化しているのです。では、「物語化」とは具体的にどういう意味を持つのでしょう？本書では物語を思考の枠組みとして捉え、情報をつないで因果関係を作ろうとする心理を、物語論の観点から解き明かします。

前著『人はなぜ物語を求めるのか』で物語化のシステムを重点的に説いた著者が、本書では物語における「フィクション／ノンフィクション」「必然／偶然」などの意味を解釈しながら、物語化によってもたらされる影響を具体的に解説しています。物語論を知ることは、巡り巡って人間の心理を知ることにつながることがわかります。