静かなのに胸を打つ、熱い物語が魅力！池辺葵の世界へようこそ

祖母から店を受け継いだ若い仕立て屋の南市江。第1話では「頑固じじい」と評されるほど、頑なに自分のポリシーを曲げない市江でしたが、彼女の服に惚れ込んで何かと世話を焼く藤井や、さまざまな思いを胸に店を訪れる人々との交流のなかで、少しずつ考えが変わっていきます。市江の生きざまに、背筋がしゃんと伸びるはずです。

オリンピックを目前に控えた東京で、分譲マンションの内覧会に足しげく通う沼越幸。家族連れやカップルばかりのなかでおひとり様は浮いてしまいますが、怪訝な視線を気にすることなく、幸は唯一無二の我が家を探し求めます。その一途な思いが次第に周囲にも伝わり・・・。ハートフルで共感度の高いマンガです。

町の外れに建つ、男子禁制の修道院。修道女たちが祈りを捧げる静謐な毎日のなかで、シスターマルエナは密かに窓の外に目を向けます。視線の先には1人の男性の姿がありました。一見穏やかな日々のなかで、徐々に「人の持つ危うさ」が明らかになっていくさまが描かれる、スリリングな展開も魅力の一冊です。

もうすぐ巣立つたった1人の息子、孤児たち、姉妹、引きこもりの子ども。さまざまな境遇に置かれた人々の思いを描く、母をモチーフにした短編集です。作中には『かごめかごめ』の登場人物たちの後日談も収録されています。涙や怒り、嫉妬などの感情が、静かに、しかし激しく表現されていて、読み進めるほどに引き込まれていきます。

通り過ぎる人が顔をしかめて鼻をつまむ、ちょっと臭う川。その川のほとりで、1人の老婆が目を閉じてじっと座っています。彼女が夢想するのは4人姉妹が暮らす屋敷での日々。フォアグラを食べ、ドレスを新調し、笑いさざめきながら優雅に暮らす想像の世界と現実に起こるエピソードは、なぜか少しずつリンクしていきます。