ブックキュレーター哲学読書室
「真理(真実)」と「生」の関わりを考える
気候変動や感染症拡大の状況のなか、科学的知見は人々の行動にいっそう影響を与えている。他方、政治経済的な要請が科学的見解に反する形で人々の行動を促すときもある。「正しく(真理とともに)生きる」とはどういうことか、古代から今に至る議論を手がかりに考えてみたい。【選者:大橋完太郎(おおはし・かんたろう:1973-:神戸大学准教授)】
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フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ
笹原 和俊(著)
ソーシャル・メディアにおける情報伝播の仕組みを解析する第一人者である著者が、認知バイアス、エコーチェンバー、フィルターバブルなど、ネットワーク環境で人が「誤り」に陥りやすい状況を科学的に解説し、そうした「偏り」に対する対策を提唱することも試みている。研究結果から導き出される精密かつ誠実な本書内での見解は、科学的探究のもつさまざまな「正しさ」の姿を明確に示すものでもある。
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フーコー・コレクション 5 性・真理
ミシェル・フーコー(著) , 小林 康夫(編) , 石田 英敬(編) , 松浦 寿輝(編)
死の直前のフーコーが題材としたのは「率直に自らを語る」ことを意味する「パレーシア」という概念であった。この主題に関する最後の講義を収めた講義録『真理の勇気』(筑摩書房)とともに、本書に収められた「生存の美学」や「自己への配慮」についてのいくつかの論考は、生あるものの統治と真理の関係をめぐる後期フーコーの思考を辿る出発点になるだろう。
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競売ナンバー49の叫び
トマス・ピンチョン(著) , 佐藤 良明(訳)
1966年に発表されたピンチョンのキャリアの初期に位置するこの小説は、ビート世代のアメリカを背景に、古代より続くといわれる闇の郵便組織の存在を描いている。痛快な小説的展開の裏に、わたしたちを別の仕方でつなぐ真理のネットワークが存在しているかもしれないという、ネット社会やヴァーチュアル世界を想起させる複数世界論が示唆されている。それを単なる妄想や陰謀論として片付けることができるだろうか?
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ポストトゥルース
リー・マッキンタイア(著) , 大橋 完太郎(監訳) , 居村 匠(訳) , 大崎 智史(訳) , 西橋 卓也(訳)
アメリカの科学史家である著者が、トランプ大統領誕生の前後にかけて顕著となった「ポストトゥルース」現象の歴史と構造を解明する。政治的思惑と古いマスコミの凋落が結びつき、新しいネットワークメディアの中で「科学」や「真理」の位相が蔑ろにされる状況が簡潔かつ適切に説明される。哲学や思想の功罪も改めて考える必要がある。
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スクリッブル 権力/書くこと
ジャック・デリダ(著) , 大橋 完太郎(訳)
18世紀のヒエログリフ論を対象にした現代フランスの哲学者デリダによる本論考は、文字やコードの独占が権力と結びついていた古代エジプトのヒエログリフ論を解析し、アーカイヴが「保存しつつそれ以外のものを隠す」権力であることを明らかにしている。アーカイヴを重視する現代の文化状況に対してもきわめて示唆的な議論である。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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