ブックキュレーター早稲田大学教授 岩村充
コロナ禍の世界を生きるために
新型コロナウイルスは経済や政治の姿だけでなく、私たちの価値観までも大きく動かしつつある。それが日本と世界の国家や経済社会の姿をどう変えていくのかを多面的に考えることで、起こり得る厳しい未来に備えるための数冊を紹介することにしたい。
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2020年8月に刊行した時局書。ウイルス禍は国家と企業そして通貨の今後に多様な影を落としつつあるが、そうしたなかで国家財政と通貨との間に起きるだろう役割変化、とりわけ金融政策の無力化と税制再デザインの可能性に焦点をあてて考察している。
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コロナ禍直前までの世界の政治と経済の状況を、国民国家と株式会社そして中央銀行制度の成立と変質という角度から俯瞰した書。本書が提起している格差や世界分断などの問題は、コロナ禍が去った後でさらに困難な姿となって再来するだろう。
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第一次大戦末期から戦後にかけ世界を襲い3,000万もの死者を出したスペイン・インフルエンザを最初に本格的に分析したアルフレッド・クロスビーの名著の翻訳である。コロナウイルス後の世界を見通そうとするとき本書を外すわけにはいかない。
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歴史人口学の速水融が日本におけるスペイン・インフルエンザ流行史を膨大な資料に基づき分析した名著である。速水が本書を刊行したのは2006年だが、2019年末に没するまで、いつ再来するか分からないパンデミックの危険を警告し続けていたという。
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臨床脳生理学者にして社会学者としても活動し続けている美馬達哉が、ウイルス禍最中の2020年7月に刊行した書。医学や疫学の対象としてウイルス禍をとらえるだけではなく、それがもたらす政治あるいは社会的な大変化をも展望する書となっている。
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歴史が織りなす物語の因と果を知るために読んで欲しい書である。川北稔が初版をダイヤモンド社から刊行して25年が経つが、本書で描かれる物語は新しさを失っていないだけでなく、コロナ後の世界を考えるために有益な知見をも私たちに与えている。
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コロナ禍は私たちの心に暗い影を落とすだけでなく、私たちの自由な社会のかたちにも大きな脅威となりつつある。そうしたとき、不都合な現実に耐える「心の力」の大切さを説く帚木蓬生から学べるものは大きい。異分野からの一冊を推薦に加えておく。
ブックキュレーター
早稲田大学教授 岩村充1974年、東京大学経済学部卒業。同年日本銀行に入り、ニューヨーク駐在員、企画局兼信用機構局参事などを歴任。1998年から早稲田大学に移り、現在は同大学院経営管理研究科教授。『中央銀行が終わる日』(2016年新潮選書)、『金融政策に未来はあるか』(2018年・岩波新書)など著書多数。早稲田大学博士。
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