食べることは生きること。美味しく食べて、楽しく生きるためのヒントを教えてくれる本

グルメ本のはしりと言われる90年前のベストセラーの復刊。新仮名遣いとなって読みやすく、巻末の福田育弘氏の解説、資料も貴重だ。関東大震災から復興した東京の風景、食文化の変遷は歴史資料としても一級品。昭和モダンの挿絵も楽しい。

食いしん坊で知られる百閒先生が、幼年時代から戦中の窮乏生活、友人知人との食膳までを自在に語った随筆集。タバコやお酒も、もちろんご馳走のうち。「うまい、まづいは別としてうまい」など、著者ならではの「御馳走観」が味わえるのも楽しい。

おでん、飯蛸、すきやき、てっちり――短編小説の妙手が描くのは、美味しそうな食べ物と男女の一筋縄ではいかないやりとり。料理だけではなく「あらまほしい」人間関係や雰囲気が、はんなりとした大阪弁で語られる。料理の湯気までがこぼれてくるような1冊だ。

「生きるために食べるのではなく、食べるためにこそ生きる」をモットーとする著者が華麗に披露する、各国要人の「食べ方と生き方」、世界の食についての意外な薀蓄が満載。著者が魅了されたお菓子、「ハルヴァ」とは何か？読めば食べたくなってくる。

パリに移住してから30年、今はスイスに暮らす著者による、記憶の中を旅するような食のエッセイ集。バゲット、クスクス、焼鳥からフォアグラまで、「食べることはけだし魔法にかかること」と著者は言う。一つの味が次々に思い出を呼び起こす。