ブックキュレーター港の人 編集者 井上有紀
作家の妻たち、その小さな声。
作品のために七転八倒する作家ほど業の深い生きものはいないかもしれない。そんな怪物と人生をともにした妻たちの本です。無数の苦労をのみこむ妻たちは決して饒舌ではなく、その声はか細い。夫への献身が手放しで賛美される時代は去ったけれど、彼女たちの率直な言葉は、作品の裏側だけでなく、人の心のなまなましい姿を見させてくれます。
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漱石の思い出
夏目 鏡子(述) , 松岡 譲(筆録)
「癇癪持ち」の人気作家である夫と、お嬢さん育ちの妻、頻繁に出入りする曲者の弟子たちなど、平穏であるはずのない生活が、死後10年以上経っているとは思えない驚くほど細かな記憶で語られる。「短時間で一気に、とても楽しそうに書いていた」なんて話を聞くと、漱石の名作の数々がぐっと近しいものに感じられます。
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クラクラ日記
坂口 三千代(著)
時代を射る鋭い洞察と多彩な文学表現・・・異能の人、坂口安吾の人生もまた波瀾万丈、スキャンダラスだった。安吾のエネルギーと愛を受け止める妻は、巻末の解説で松本清張も絶賛の名文家。鬼気迫っていて、もの哀しくて、あたたかな愛に彩られている本。ふたりで心中を図るくだりなどは、まさに文学作品のよう。
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私の絵日記
藤原 マキ(著)
演劇の舞台に発つ女優で、漫画家・つげ義春と結婚後は漫画や絵を書いたが、50代で癌で亡くなった著者。精神の不調に悩む夫とのけんかや可愛い息子との何気ない日常がペン画と短い文で淡々と記されているだけなのに、人の心のあらゆる微妙な色合いが繊細に表現されている。つげ義春への味のあるインタビューも収録。
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淳之介の背中
吉行 文枝(著)
吉行淳之介が若い頃に結婚した妻。15年間の結婚生活後、吉行は人気小説家となり、新しい女性と生活を始め、他の女性との噂も絶えなかった。離婚はせず妻は一切の沈黙を守り通したが、吉行の死後、この本一冊のみが発表された。若い夫婦のきらきらとした濁りのない美しい思い出の結晶だけが、ここに残されたのだった。
ブックキュレーター
港の人 編集者 井上有紀鎌倉の由比ガ浜にある出版社「港の人」勤務の編集者。手がけた本は、『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』(マーシャ・ブラウン)、『きのこ文学名作選』(飯沢耕太郎編)、『胞子文学名作選』(田中美穂編)、『世界 ポエマ・ナイヴネ』(チェスワフ・ミウォシュ)、『90度のまなざし』(合田佐和子)など。海を見ながら自転車で通勤する時間が、毎日のいちばんの贅沢です。本棚の隅っこにあるような本もふくめて、一冊一冊大切に紹介します。ホームページhttps://www.minatonohito.jp
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