ブックキュレーター文筆業 矢内裕子
冬の夜長に何を読む? 物語の世界を旅する季節にふさわしい、とっておきの小説たち。
寒い季節に暖かな部屋で、じっくりと向き合いたい物語がある。厚い一冊を旅するように、丁寧に読む楽しさ。本の中で出会う登場人物のなかには、自分自身も入っているはず。
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薔薇の名前 上
ウンベルト・エーコ(著) , 河島 英昭(訳)
14世紀初頭、異端審問が嵐のように吹き荒れるヨーロッパ・イタリアを舞台に、記号論学者であるエーコの面目躍如な歴史ミステリー。神聖ローマ帝国皇帝の命を受け、山上の修道院を訪れた修道士ウィリアム。だが修道院では、不可思議な連続殺人が起こり、修道院長の依頼で、ウイリアムは若き見習い修道士アドソとともに事件を調べることになる。事件の秘密は迷宮のような図書館にあるらしい。殺人の目的は? そして「薔薇の名前」とはなにか?
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コロナウイルスの流行で、日本でも『ペスト』が35万部を売り上げた。その作者、アルベール・カミュが『異邦人』『ペスト』の次に書いたのが『転落』だ。暗い運河の街・アムステルダムの酒場で、パリで弁護士だった男・クラマンスが語り始める「告白」の物語。クラマンスの話はどこまでが信用できるのか? 話を聞いているのはいったい誰か?クラマンスのようにアルコールと一緒に読むのも一興だ。一緒に収められている『追放と王国』はカミュ唯一の短編集。明晰で美しい、カミュの文章を味わえる。
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連載から30年、400字詰め原稿用紙3900枚の未完の小説に、架空の都市の詳細な手描き地図、500枚を超える「人名地名その他嘘八百辞典」を添えた破格の1冊。「千州最大の都市である比良野」の大学生・テツオとキイチは、市長が計画している人工島建設に違和感を持ち、自分たちの反対運動を始める。だが、一体何をどうしたらよいのかがわからない。テツオたちの親・祖父母世代の話や関連する人々の歴史にまで脱線しながら、物語は進んでいく。1995年、阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件が終わった、その都市の5月に向かって。
ブックキュレーター
文筆業 矢内裕子文筆家ときどき編集。東京都文京区育ち。出版社で書籍編集者として勤務後、独立。担当した本に角田光代『古本道場』、三浦しをん『三四郎はそれから門を出た』、いとうせいこう『ボタニカルライフ』など多数。著書に『落語家と楽しむ男着物』、萩尾望都さんとの共著『私の少女マンガ講義』がある。現在、橋本治さんへのインタビュー集を準備中。note:https://note.com/yanaiyuko
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