ブックキュレーター哲学読書室
断絶と孤絶の時代に抗して他者について考える
憎悪と分断が無限に噴出する現代社会。そのような状況でなお他者への責任を引き受けること、しかもそれを制度化された民主主義やコミュニケーション空間とは別のかたちで考えること。困難な試みですが、断絶を越え他者とともに在ることへの希望がそこにあります。【選者:吉田健彦(よしだ・たけひこ:1973‐:東京農工大学非常勤講師)】
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赦すこと 赦し得ぬものと時効にかかり得ぬもの
ジャック・デリダ(著) , 守中 高明(訳)
「可能なるものとしては存在しない」赦しについて極限まで研ぎ澄まされたデリダの思想が、読者に異様な迫力をもって突きつけられます。最後まで読んだとき、私たちは赦しが赦しであるためになぜ不‐可能でなければならないのか、その秘儀を知ることでしょう。訳者による丁寧な解説つき。
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何も共有していない者たちの共同体
アルフォンソ・リンギス(著) , 野谷 啓二(訳)
自分ではどうしようもない状況に直面したとき、私たちは自身のすべてを曝け出し、投げ出し、他者に身を委ねます。そのときそこには交渉や合意形成とは異なる、きみと私の徹底して固有なコミュニケーションが現れます。信頼とは、愛とは、そして代替不可能であるとはどういうことかを問う名著。
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2015年6月17日に米国サウスカロライナ州のチャールストン教会で起きた銃撃事件についての優れたノンフィクション作品。あまりに独善的な犯行動機とむごすぎる被害。それでもある遺族が犯人に言う「あなたを赦します」という言葉が衝撃的です。赦しとは何かを考えさせられる、この時代における必読の書です。
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怒りに囚われてはならないということが、様ざまな例を通して生き生きと説得的に語られていきます。人間の生はしょせん束の間のものに過ぎず、せめてその間は互いに人間性を尊重して過ごそうという結語は、ストア派のセネカらしく恐ろしいまでの厳しさと美しさをもって私たちに内省を迫ります。
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メディオーム ポストヒューマンのメディア論
吉田 健彦(著)
限りなく進化する技術によって、あたかも自らが神であるかのように振る舞う人類。けれどそこには永遠の孤絶しかありません。すべてがデータと化していくこの時代において、それでも他者とこの私の関係を確信することはいかに可能なのかを探る《存在論的メディア論》。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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