視界が開ける？ 不安に押しつぶされる前に読む本

表題作、人生に絶望し、死に場所を求める主人公。戸惑いながら彼をある場所へと案内するタクシー運転手。どちらもそれぞれ、とても辛い経験をしています。他人が肩代わりできない重荷を背負った人を照らし続ける、秋の月。苦悩は消えないけど、過去は変えられないけど。下見のできない人生を生きていく。そのための力を貸してくれる作品です。

主人公たちはごく普通の学生や主婦。それが、良かれと思ってしたことが裏目に出たり、一番頼りにしていた人に裏切られたり。でも、のしかかる不幸に自暴自棄にならず、あきらめきって悲観するでもなく、生きていく。うまくいかない世の中を、ままならない現実を、それでも生きる人々を描く連作短編集です。

水面下で努力する人、戦う人。疲れても立ち上がる人。立ち上がる気力も、誰につらさを打ち明ける元気もなくした人。心で泣く誰かを夜毎訪れて、その涙に寄り添うしゃべる猫、遠藤平蔵が主人公のコミック。平蔵は猫だから、大抵は励ますことくらいしかできないけど、それがどれほど支えになることか。だいじょうぶ、大丈夫だよ。

突然の事故で夫を亡くしたサヤは、生まれたばかりのユウ坊を連れて新天地「佐々良」へ移住する。お人好しでちょっと頼りないサヤの身に降りかかる、すこし不思議な事件から彼女を守ってくれるのは、知人の体を借りて現れる夫の幽霊だった。サヤを取り巻く人々のの温かさにほっとする素敵な一冊です。

力が入らない日は、ナッツやチョコをたっぷり入れてパウンドケーキを焼く。雨でだるい日はプリンを作る。ちょっと元気な日はお掃除をしたり。毎日眠る時間、起きる時間が変わってしまう著者が、人と違う時間に目覚めてしまったり、気力がわかない日に作るおいしいお菓子の作り方をていねいに紹介するコミックエッセイです。