卓越した人間描写力でどのジャンルも痺れるおもしろさ！はじめての奥田英朗

デビュー2作目、著者の出世作です。主人公となる男女3人の視点で群像劇風に進み、負のスパイラルにはまり、転落していく様子を描きます。当初はまったく接点のない3人が少しずつ関係を持ち始め、運命が絡み合っていくさまが読みどころ。本当に最悪だけど読む手が止まらない、エンタメ犯罪小説の傑作です。

1964年、開催間近の東京オリンピックを妨害しようとする1人の青年を丹念に追うクライムサスペンス。熱に浮かされたような当時の東京の様子が臨場感たっぷりに描かれ、街の喧騒が聞こえ、匂いが鼻をつくかのよう。華やかな舞台の光と影を克明に写し出した、読み応え抜群の物語です。

肥満でマザコンの変人精神科医・伊良部、助手の看護師・マユミ、彼らのもとへ受診に訪れた患者が織り成す物語を収めた短編集です。医師にしてはハチャメチャだけど、なぜか症状は改善する・・・。そんな不思議な治療がコミカルに描かれます。本書が第1弾となる「精神科医・伊良部シリーズ」の第2弾、『空中ブランコ』で著者は直木賞を受賞しています。

東京編、西表島編の2部構成で、元過激派の父親と小学6年生の息子、その家族の絆を描いた小説です。型破りでワイルド、破天荒だけど一本筋が通っている父親がなんとも格好よく、後半から終盤にかけての怒涛の展開はさすがのひと言。笑いあり涙あり感動あり、痛快で爽快な、満足度の高い一冊です。

家や夫婦をテーマにした短編集「平成の家族シリーズ」の第1弾です。著者の描く小説にはアクの強い登場人物が多く出てくる印象がありますが、ここに登場するのはどこにでもいそうなごくごく普通の夫婦。その日常を切り取り、ほっこりするような物語に仕立てています。さらりと読める作品集でシリーズ第2弾、第3弾もオススメです。