ブックキュレーター花まる学習会 平沼純
「タブー」の崩壊―過酷な運命に遭遇する子どもたちの物語
児童文学研究者の石井直人氏によると、1980年代以降、それまでの子どもの本では「タブー」とされてきたもの―死、性、暴力、家族の問題など―が、積極的に書かれるようになったとのこと。よくあるハッピーエンドの物語ではなく、読むにはちょっとした勇気がいる、でも間違いなく読者に鮮烈な印象や強いメッセージを与える5冊を紹介します。
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『ぼくらは海へ』と同じく作者は那須正幹氏(2021年に急逝)。さまざまな世界観の物語が収められた短編集です。核戦争後に避難したシェルターの中で起きた出来事。卒園6年後に行われたクラス会で明かされるみんなの「秘密」・・・。子どものもつ「負」の部分や人間の愚かさをこれでもかと描き出し、衝撃を与えた一冊。
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ある夏、突然母さんが家を出ていった。小学生のあかりは父さんと一緒に慣れない家事に取り組みますが・・・。父母の別れから生まれた、新たな家族のかたち。さまざまな人とつながりながら生きる二人の姿が、静かな雰囲気で描かれます。80年代にドラマ化されたことでも話題となった、作者自身の体験を基につくられた物語。
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ある日突然、全国のお父さんたちが増殖した。そして政府は、それぞれの子どもに一人だけ選ばせ、残りのお父さんたちは処分することに・・・。表題作も含めて、不条理なストーリー設定とぞっとする結末で、世の多くの子どもたちにトラウマを与えた短編集。佐々木マキ氏によるシンプルでチャーミングな挿絵が逆に不気味。
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米軍基地のある街で暮らす中学3年生・奈々のひと夏の物語。反戦喫茶への出入り、親や教師への反発、基地反対デモへの参加・・・。奈々はさまざまな経験を通して少しずつ、もがきながらも自分なりの生き方を模索していきます。物語に登場する反戦喫茶は、作者が20代の頃に実際に通っていた岩国市内の喫茶店がモデルです。
ブックキュレーター
花まる学習会 平沼純1982年生まれ。慶応義塾大学文学部卒、同大学院社会学研究科修士課程修了。花まるグループの受験部門であるスクールFCで、国語や公立中高一貫コース授業のほか、総合的な学習の時間である「合科授業」などを担当。多数の受験生を合格へ導くとともに、豊かな物語世界の楽しさ、奥深さを味わえる授業を展開し続けている。各種メディアで紹介された『子どもを本好きにする10の秘訣』(実務教育出版)のほか、書籍、雑誌・新聞記事などを多数執筆。読書をテーマにした講演会や連続講座も精力的に行い、本を読む楽しさ、物語を味わう大切さを訴え続けている。2016年よりほぼ毎月開催している連続講座「旅する読書」は、全国から参加者が集まる人気イベント。
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