ブックキュレーター哲学読書室
アート・オブ・ライフ、生きかたを創る芸術
人生を芸術作品のようにして創りだし生きる人たちがいます。いや、人間だけではありません。動物も、鉱物や星も、オブジェも、思想も、それが存在していることが一箇の芸術のようになることもあるでしょう。「芸術」といっても千差万別。まだ見ぬ芸術もあるにちがいありません。【選者:堀千晶(ほり・ちあき):仏文学者】
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ベケットの友情 1979−1989
アンドレ・ベルノルド(著) , 安川 慶治(訳) , 高橋 美帆(訳)
ベケットは小説や戯曲のなかで、様々なものを削り取ってゆくように生きる人々の姿を描きだしました。そのことによって、生が濃密に粒立ってあらわれるのです。「どこまでも開かれた細部、どんな評価も呼び込まないような細部を手放さない」。こんな作家のうしろ姿を、本書は見事に浮かびあがらせています。
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オーランドー
ヴァージニア・ウルフ(著) , 杉山 洋子(訳)
「Life」を描くことをおおきな課題としていたウルフは、時を超え、性別をまたぎ、「女性」や「男性」に期待される役割を悠々とかわしてゆく人物を、きわめて魅力的に、ユーモアと愛に満ちたしかたで創りだしました。原文では「アート・オブ・ライフ」という言葉が実際に使われています。移ろいゆく雲の動きにも注目です。
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独身者たち
ロザリンド・クラウス(著) , 林道郎(著) , 井上康彦(訳)
「女性」の芸術家を論じたテクストをあつめた本書は、近代の表象空間を統べるイデオロギーを批判的に検討し、具体的な作品をとおして、身体/イメージ/言葉の関係を精緻に解剖してゆきます。「女たちの作品に特別な弁護は必要ない」。クラウスはひたすら明晰であり、今までもこれからも参照されてゆく古典でしょう。
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倫理とは生きかたです。ただし善悪を交えず、希望も絶望も抱かず考えること。生きかた(様態)は無限にあり、感情も欲望も愛も幾何学的に記述されます。一瞬しかあらわれないかもしれない、「この」身体のユニークネスを永遠のものとして摑むこと。この静謐な哲学は、マルクス主義やアナキズムにも着想を与え続けています。
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ちいさな生存の美学
ダヴィッド・ラプジャード(著) , 堀 千晶(訳)
近年、世界的に話題の美学者=哲学者のエティエンヌ・スーリオ。彼は、無数の存在のありかたを緻密に腑分けしてゆきます。本書はスーリオを現代に甦らせながら、もろく壊れやすい生を破壊から救い、存在の権利をつくりだすものとして芸術を位置づけます。ベケット、カフカ、ペソア、ホフマンスタールらの読解も素晴らしい。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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