鋭い観察眼と独特の視点から綴られた物語。はじめての門井慶喜

美術品の真贋を自らの舌で感じ取れる特殊能力を持つ美術コンサルタントの神永と、短大講師の佐々木のコンビが、超有名な美術品や巨匠にまつわる謎に挑む美術ミステリーの連作短編集。美術品の歴史的な背景の説明や難し過ぎないうんちくが、知的好奇心をくすぐります。シリーズ化もされている人気作です。

徳川家康が豊臣秀吉に命じられ、何もなく湿地帯だった江戸に町を拓いていくさまを、土木や治水、貨幣鋳造や江戸城の建築などを軸に描いた連作集。町づくりという一大プロジェクトを成し遂げんとする家康と、その部下たちの熱い物語が描かれています。著者2度目の直木賞候補となった小説です。

若くして他界した宮沢賢治の生涯を父・政次郎の視点から描き、3度目の正直で直木賞を受賞した著者の代表作。人間味あふれる人物であった宮沢賢治は、父親の深い愛情がそそがれて「作家・宮沢賢治」になったということを、さまざまなエピソードを交えつつ描いています。美しい表現の数々にも注目です。

GHQ占領下の戦後間もない日本。神田神保町の古書店で、店主が古書の山に圧し潰されて死亡・・・という幕開けで始まる歴史小説＋ビブリオミステリーです。一冊一冊の本が持つ歴史や文化、それらを守り続けることの意味を改めて考えさせられます。古書店主たちの熱く壮大なドラマが、軽妙なタッチで語られた一冊です。

東京駅や日本銀行本店など、誰もが知る建築物を設計した建築家・辰野金吾の物語です。著者の『家康、江戸を建てる』姉妹編ともいえ、江戸から東京への変遷を建築という観点から綴ります。破天荒かつ勉強家な辰野、そして彼に関わる人物が魅力的で、読み応え満点。建築に造詣が深い著者の知識も楽しめます。