ブックキュレーター作家 木村紅美
第32回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作『あなたに安全な人』にとって大切な5冊【Bunkamuraセレクション】
小説というものを書き始めて気がつけば17年ほど経ちましたが、いまだに書き方がよくわかりません。一作ごとに、書き方をど忘れし、暗闇を手探りするところから始まります。そのときに支えになるのが読書の蓄積です。ばらばらの時期に憧れたり打ちのめされたりしたいろんなものが混ざりあって影響が滲むように出てくる気がします。
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フラナリー・オコナー全短篇 上
フラナリー・オコナー(著) , 横山 貞子(訳)
三十すぎの義足の、楽しい経験などなにもなく孤立し暮してきたひとりの女が、町に来た聖書売りの男を軽蔑しながら次第に気を許してゆく「田舎の善人」。その揺らめく情動の割り切れなさ、あまりの不穏さに叫びたくなるラスト、ぞっとするのに好きです。
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蜘蛛女のキス 改訂新版
マヌエル・プイグ(著) , 野谷 文昭(訳)
監房に同居する真面目な青年テロリストと、映画マニアの同性愛者の中年男(ドラッグクイーン風の容貌が思い浮びます)。密室を舞台に登場人物二人でここまで奥行きのある小説を書けるのかと惹きこまれました。モリーナの使命と運命にかきむしられますが、シリアスなのに可笑しみのあるところも好きです。
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眼の奥の森 新装版
目取真 俊(著)
戦後まもない頃、沖縄の小さな島でひとりの少女に起きた酷すぎる事件を巡り、復讐に挑んだ少年、密告する村人、家族、加害側の米兵、あらゆる視点が交錯し何十年にも渡る傷の深さと波紋が描かれる長篇。現代の苛められている女子中学生に声が届く箇所は泣きました。つらいけれど読み始めたら止まりません。
ブックキュレーター
作家 木村紅美1976年兵庫県生まれ。小学校六年生から高校卒業まで宮城県仙台市で過ごし、現在、岩手県盛岡市在住。明治学院大学文学部芸術学科卒業。2006年に『風化する女』で文學界新人賞を受賞しデビュー。2022年、『あなたに安全な人』で第32回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞(選考委員:ロバート キャンベル)。その他の著書に『風化する女』『月食の日』『夜の隅のアトリエ』『まっぷたつの先生』『雪子さんの足音』等がある。【Bunkamuraドゥマゴ文学賞】https://www.bunkamura.co.jp/bungaku/winners/32.html
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