現代物も時代物も！鎌倉の魅力を再発見できる小説

悩みを抱えた人たちが迷い込む「鎌倉うずまき案内所」。各章の登場人物たちはそこで悩みを聞いてもらううちに、問題解決のヒントを見つけていきます。独立した各章がうずまきのようにつながっていき、ラストで「あの人につながるのか!?」となる伏線回収も気持ちいいお話です。読めばきっと案内所に行ってみたくなるはずです。

仕事を失い、中途半端な自分に嫌気がさしていた潤香がたどり着いたのは、癒しの古民家カフェ「かまくら大仏」。本書は、その店の料理人・鎌倉さんに影響を受けた潤香が「本当に自分がやりたいこと」を見つけていくストーリー。鎌倉の風景とおいしそうな料理の描写も見事で、今すぐ鎌倉に住みたくなってしまいます。

左遷され、鎌倉にある会社所有の古びた豪邸で住み込みの管理人をすることになった畔木朋。そこで出会ったワケありの人たちとの不思議な縁をきっかけに、畔木は自分を見つめ直していきます。阪神大震災で両親を失い喪失感を抱えていた主人公が、豊かな自然と海に囲まれた鎌倉の地で大切なものを取り戻していく再生の物語です。

鶴岡八幡宮で鎌倉幕府第3代征夷大将軍・源実朝が暗殺され、混乱のなか、その首は行方不明になります。本書では、史実でも消えたままの「首」をめぐり、幕府、朝廷、坂東武者が駆け引きを繰り広げる歴史小説。鎌倉の地形や情景が物語に密接に絡んでいるため、地図を確認しながら読むことでより深く世界観に没入できるはずです。

江戸時代、妻側から離縁を申し出る唯一の方法は鎌倉・東慶寺に駆け込むことでした。駆け込み審議を行う東慶寺の御用宿・柏屋に居候している医者見習いの主人公は、審議の書記として事情を聞き、女性たちにやさしく寄り添っていきます。1話完結の短編集で、リズム感のある語り口と鎌倉の四季の描写が印象的な一冊です。