多彩なジャンルの実力派エンタメ作家！はじめての篠田節子

美しく不思議な光沢を放つ絹に魅せられ、蚕の品種改良を研究者とともに行う長谷。改良は成功したかに見えましたが、小さな過ちからとんでもないパニックが巻き起こります。小説ならではの「文字から想像する怖さ」を存分に味わえるバイオSFホラーで、新人文学賞を受賞した著者のデビュー作です。

都市部で農業を営む男性が、不思議な力を持つネパール人の花嫁をもらうところから始まる「不幸の連鎖による喪失と再生」を描いた長編小説。国際結婚、農業の後継者問題、宗教と信仰、民族問題など、さまざまなモチーフが盛り込まれていて、重厚かつ壮大なストーリーを圧倒的なスケールで描き切った傑作です。

保険会社で働く5人の女性の群像劇。今よりも女性の選択肢が少なかった1990年代、男性優位社会のなかで、もがきながらもたくましく生きる女性たちの姿を克明に描いています。それぞれにリアリティがあり、その時代を知っていればより共感を抱いて読めるでしょう。直木賞を受賞した著者の代表作であり、痛快で爽快な一冊です。

DV被害者などの女性が住む施設で火災が発生し、1人の女性が死亡。その女性は「聖母」なのか、あるいは「毒婦」なのか？過去を追い、紐解きながら、その実像を解き明かしていきます。ミステリーにサスペンス、オカルトの要素も絡んだ油断のならない展開が秀逸で、読み応えは抜群です。

新型の日本脳炎ウイルスによるパンデミックが発生した都市で働く人々の奮闘を描いたパニック小説。1995年に発表された小説ですが、2020年の新型コロナの騒動を予見するかのような内容だと改めて話題になりました。丁寧かつリアリティに満ちた描写を現実と比べながら読むと、怖さがより増して感じられることでしょう。