ブックキュレーター海猫沢めろん
海猫沢めろんの推薦する名著5冊
海猫沢めろんの「推薦図書」はこの5冊! ※こちらの推薦文は、クーリエ・ジャポン読者のために寄稿いただいたものを転載したものです。
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グラフィックデザイナーの仕事をしている時代に師匠から読めと言われて読んだが、ピンとこなかった。今となっては当時の鈍さを恥じるばかりだ。
アフォードとは(与える・提供する)という意味の言葉だ。人は椅子を見たら座り、ドアノブを見たらひねる。その動作は誰に教えられたわけでもなく行える。環境に埋め込まれ、相互に作用する力──アフォーダンス理論はそれをさまざまに説明しようとする。
当時は難解で観念的な理論だったが、人工知能やUXデザインなどの分野が勃興するにつれて、今やこの概念は当たり前のように引用される。 -
アメリカ音楽史を「偽装」というキーワードから読み解く。アフリカ系音楽を白人が演奏すると言われると古くはプレスリー、近年ではエミネムなどが思いつくが、本書は19世紀アメリカで人気のあった、白人が黒人を「偽装」する演芸「ミンストレルショウ」にまで遡る。
この「偽装」というキーワードが、近年のアメリカの政治思想や陰謀論などにも通底していることに驚く。章ごとのタイトルをななめ読みするだけで、ブルース、ジャズ、ロック、ソウル、パンク、ヒップホップなどの音楽はもとよりアメリカ全体を覆う思想まで射程が広く展開されることがわかる。どれかにひっかかった人なら必ず思索を深めるヒントがある。 -
人間にそっくりなロボット「ジェミノイド」を制作しつづける石黒浩の、ステイトメントとも言える著書。人間のことはわからないが、人間が人間そっくりだと思うロボットを作ることができれば、それは人間の一部を理解したことになるのではないか──ある意味で逆説的な考え方だ。
しかし、AI研究がすすむにつれて必ず現れる「人間とはなにか?」という問題を、ここから考えるのは正しかったのではないか。画像生成AIが世間を騒がせている2022年において、改めてそう思わされる。
ブックキュレーター
海猫沢めろん文筆家。1975年、大阪府生まれ。兵庫県姫路市育ち。2004年『左巻キ式ラストリゾート』でデビュー。『キッズファイヤー・ドットコム』で第59回熊日文学賞受賞。著書に『零式』『全滅脳フューチャー!!!』『愛についての感じ』『ニコニコ時給800円』『夏の方舟』などがある。
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