そこに作家のすべてが詰まっている!?著名作家のデビュー作

「半沢直樹シリーズ」で有名な池井戸潤のデビュー作は、元銀行員の知識を十分に生かしたミステリー『果つる底なき』（江戸川乱歩賞受賞作）。都市銀行を舞台に、ひとりの銀行員の死の内幕を描いた本作は、ドラマ化もされています。近年では金融界を舞台にした物語だけではなく、幅広いジャンルを手掛けるようになりました。

ミステリーだけではなく時代小説やファンタジーまで手掛ける宮部みゆきのデビュー作は、『我らが隣人の犯罪』に収録されている表題作の短編（オール讀物推理小説新人賞受賞作）。隣家の犬の鳴き声に悩まされた僕たちが取った行動は・・・。日常に潜むミステリーを、軽快な筆致で鮮やかに暴いていく著者の原点ともいえる作品です。

多彩なミステリーを刊行して多くのファンがいる伊坂幸太郎のデビュー作は、江戸以来外界から遮断されている島が舞台の『オーデュボンの祈り』（新潮ミステリー倶楽部賞受賞作）。嘘しか言わない画家や島の法律として殺人を許された男、人語を操るカカシなどが出てくる本作は、のちの伊坂作品の源流となる一冊といえるでしょう。

国民的歴史作家・司馬遼太郎の初長編作は、忍者小説の『梟の城』（直木賞受賞作）。短編でのデビュー作の「ペルシャの幻術師」と同じく、珍しい伝奇小説でした。後年多く手掛けた歴史小説とは趣が異なりますが、どちらの作品も司馬遼太郎らしい歴史的事実と創作をうまく織り上げた作品になっています。

大ベストセラー作家である東野圭吾のデビュー作は、青春推理小説の『放課後』（江戸川乱歩賞受賞作）。女子校の教師が事件の真相を探る本作は、作者らしく綿密に構成された物語です。わかりやすく丁寧な文章表現に加え、細やかな人物や風景の描写など、のちに続く作品の核となる要素が詰まっています。