愛しているから面倒くさい。ひと筋縄ではいかない家族関係を綴ったエッセイ

芸人・にしおかすみこが、酒浸りの父と認知症の母、ダウン症の姉との暮らしをまとめたエッセイです。家族を支えるために著者はひとり暮らしをやめて同居を始めますが、暴言と物が飛び交うケンカに翻弄される日々。「家族全員がポンコツ」だと断言したうえで受け入れ、ユーモアをもって家族と向き合う著者の姿に励まされるでしょう。

エッセイは、何年も絶縁状態だった兄の死を告げる電話から始まります。著者は、兄の元妻とともに遺体の引き取りに火葬、借家の片づけなど「人生終い」に奔走。その過程で、生前は憎んですらいた兄の足跡や知らなかった一面に触れていきます。「許せなくても兄を認めてあげたい」という著者の葛藤に、共感せずにはいられません。

アートディレクター・増田セバスチャンによる自伝的エッセイ。物心ついたときには崩壊していた家族関係を、祖父母の代まで遡って語ります。親から子に受け継がれる因果、それを自分の代で断ち切ると決めた著者の覚悟は壮絶です。家族のトラウマを忘れるのではなく、作品に昇華するという創作の原動力にも触れられます。

耳が聞こえない両親と元ヤクザの祖父、宗教にハマった祖母との関係が記されています。著者は、「普通ではない」家族や周囲の偏見から逃れるように上京。しかし、祖父の死で否応なく家族と向き合わざるを得なくなります。両親の愛を再認識し、普通ではない自分と家族を肯定しようとする著者の姿に胸が熱くなるでしょう。

文筆家・岸田奈美が中学2年生のときに急逝した父、車いす生活の母、ダウン症の弟からなる「岸田家」の物語です。悲しい話かと思えば大間違い。トラブルも大らかに受け止め、周囲の人たちの温かさに助けられる日常に心がなごみます。著者の関西弁とユーモアあふれる語り口に笑いながら、自分と家族との関係を見つめ直せる一冊です。