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いま、ここにある地獄
投稿者:yjisan
イスラム原理主義テロリストの手作り核爆弾によってサラエボがクレーターと化した近未来。先進諸国ではテロ防止を理由に、人や物の流れをITによって徹底的に管理・追跡する監視体制が構築されていた。今やピザを注文するにも、指紋による個人認証が必要なのだ。その甲斐あってか、先進国ではテロが一掃されたが、その一方で途上国においては、内戦や民族浄化による大規模虐殺が激増していた。
覇権国家たるアメリカ合衆国は、世界で頻発する大量殺戮に対処すべく、虐殺を指揮している武装勢力の指導者たちを暗殺するための部隊を設立した。それが情報軍特殊検索群i分遣隊だ。彼等は特殊なテクノロジーとカウンセリングのおかげで、感情に左右されることなく冷静に任務を遂行することができる、殺しのプロフェッショナルだ。
この組織に属するクラヴィス・シェパード大尉は、任務のために世界各地の紛争地域に潜入するうちに、それら全ての虐殺に、謎のアメリカ人、ジョン・ポールが関わっていることを知る。彼はどのようにして虐殺を引き起こしているのか? そして彼の目的はいったい何か? シェパードは虐殺の連鎖を終わらせるため、ジョン・ポールの暗殺に向かう・・・・・・
現実逃避的なファンタジー作品が氾濫する当今、ここまで徹底して「いま、ここ」に拘った硬質なSFも珍しい。
作者自らが語ったように「ちょっとだけ未来」を緻密に構築しており、その迫真性は類を見ない。グローバル経済、国際テロリズム、監視社会、特殊部隊、民間軍事会社、国際PR会社、少年兵、新植民地主義・・・・・・本作で描かれる悪夢の近未来世界は、私たちの世界の延長線上に、極めてリアルに存在しているのである。
それでいて現在の世界情勢を表面的になぞった単なる国際軍事サスペンスではなく、これらの事象を素材に、進化心理学など現代の科学的知見をスパイスとして加え、「自我」や「良心」「実存」といった哲学的な領域にまで主題を掘り下げている。
戦争小説であるにもかかわらず、一人称のナイーヴな語りという叙述形式を採った点は斬新。作中世界では「戦闘適応感情調整」という〈画期的な〉テクノロジーが生み出されており、作戦行動用にこの調整を施された主人公は、任務のためなら子供であっても何ら躊躇うことなく撃ち殺すことができる。任務終了後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされることもない。
自己の責任の下に人を殺したという実感を持たない(持てない)主人公は、「罪と罰」を引き受けないが故に、決して成熟しない。内省的でありながら、どこか他人事のような主人公の淡々とした語り口は、悪魔的なテクノロジーの産物なのだ。スペクタクル的な爽快感もなく、悲劇を殊更に強調する反戦色もない、一見無機質で理知的で、それでいて恐怖と緊張と狂気に溢れた、奇妙な戦争アクションである。
内容と文体とのギャップは作者が最初から意図したものであるという。この巧妙な構成によって、世界の不条理がより露わになったと思う。本作の異質性に違和感を抱くとしたら、それはそのまま、私たちの世界に対する違和感なのである。
読了直後、言葉が出ないほどの衝動を受けた。作者の夭折が惜しまれる傑作。
投稿者:yukkiebeer
米軍大尉クラヴィス・シェパードはある男の暗殺を命じられていた。インドやアフリカといった内戦地域で大規模虐殺の種子を蒔いている米国人ジョン・ポールだ。当該地域の人々に憎悪と殺戮の念を植えつける上でポールが利用するのは、人間が持つ“虐殺器官”であった…。
緻密に構築した近未来の世界を舞台に著者が描くのは、人間社会を大きく突き動かしていく力を持った言語の姿です。
作者はサピア=ウォーフの法則や、チョムスキーの生成変形文法を模したかのような「脳に刻まれた言語フォーマットのなかに隠された混沌を示す文法」などの言語学風言辞を駆使しながら、人類を戦争へと駆り立てる駆動力を言語の中に見出そうとしています。
思えばオーウェルの「1984年」もニュースピークなる綿密に操作された言語が近未来の人間の思考の筋肉を弛緩させていく様をグロテスクに描いていましたし、事実ナチスドイツがいかに言語を緊縛しながら国民を戦争に駆り立てていったかについてはヴィクトール クレムペラーが「第三帝国の言語「LTI」―ある言語学者のノート」で明らかにしています。
私は「虐殺器官」を、オーウェル的な言語と戦争の系譜を新しい形で受け継いだ小説として大変興味深く読みました。
しかしこうした戦争を生む力を孕む言語はまた一方で、だからこそ戦争を抑止する力もあわせ持つはず。そんな希望に満ちた信念が作者・伊藤計劃の脳裏にはあったと私は感じるのです。
「文明は、良心は、殺したり犯したり盗んだり裏切ったりする本能と争いながらも、それでもより他愛的に、より利他的になるよう進んでいるのだろう」(382頁)。
シェパードの胸に灯るこの希望を支えるのが言葉であり、畏敬の念をもってその言葉と対峙することが出来るとき人は真に平和を実現できるのではないか。
テロの時代に生きる私たちにとって、この小説が提示する理念に心震える思いがしたのです。
9・11を経て、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう……彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは? ゼロ年代最高のフィクションが電子書籍版で登場。
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