竜崎署長のしきたりを破る面白さ
2010/03/14 21:33
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
今野敏の新シリーズである「隠蔽捜査」の第2弾である。『果断』というタイトルであるが、副題に「隠蔽捜査2」とある。前回、家族絡みの事件で、警察庁長官官房総務課長から、警視庁の大森警察署長に配置換えになった主人公竜崎。配置換えというよりは明らかに大左遷である。通常、このような異動はない。
ここまでは前回の『隠蔽捜査』での進行であった。警察署長は副署長、警務課長、刑事課長、警備課長などに囲まれて仕事をする。別のテレビドラマで、船越英一郎の演ずる副署長は承認の印鑑押しに多忙だが、本編では竜崎署長が印鑑押しに忙しい。
強盗事件が発生し、緊急配備を行ったが犯人に逃走された。打つべき手を打ったのだが、ミスがあり功を奏さなかった。こういうことが起こると、所轄署は責任を取らされると戦々戦々恐々となる。しかし、竜崎は緊急配備をしても必ず上手くいくとは限らないと割り切る。
こういう場面での竜崎は毅然としている。最初こそ署員は驚いているばかりであったが、次第に署長に一目置くようになる。副署長との関係も面白い。通常は実務の執行者は副署長であるらしいが、竜崎は自分で執行してしまう。
竜崎の友人で警視庁刑事部長の伊丹というキャリア警察官僚がいる。この伊丹との会話で、保身に走る伊丹の姿が浮き彫りになる。そうであっても、竜崎は伊丹を頼りにしている。一方で、各警察署を監督する方面本部の管理官は悪役として描かれている。管理官は警察署を監督する役割を担っているので、所轄署がへまをすれば当然指導に当たる必要が出てくる。
この悪役管理官は署長を何とも思っていないようだ。しかし、階級を考えれば、自分よりはるかに上位にいる警察署長である。もう少し敬意を払って然るべきである。管理官に対する竜崎の態度には読者は溜飲を下げることになるだろ。このように通常は考えられないシーンがよく出てくるが、テレビの警察モノ同様、これをあまり繰り返すとリアリティを失い結果となる。
しかし、本編での竜崎はキャリアの署長、しかも見習いではない署長である。こういう実例はほとんどないであろう。それだけに小説の材料としては、面白い設定である。今後も署長・竜崎の活躍を期待したいし、本編もそれに応える充実したエンターテイメントになっている。
風呂が長くなりました
2019/07/04 22:04
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投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
『果断』を読みました。
面白いので風呂が長くなりました。
(私は半身浴しながら読むので)
堅物のキャリア警察官竜崎伸也を主人公にした「隠蔽捜査」シリーズの2です。
まだ続くので、楽しみが増えました。
今野敏の警察物は、必ず家族のことを描き込んでいるところも面白い。
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2010/1/30 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。
2018/1/22〜1/24
9年ぶりの竜崎シリーズ。すっかりキャラを忘れていたが、読んでいるうちに思い出してきた。変人と呼ばれる竜崎であるが、前作より一層共感出来る存在になったのでは無いか。
「迷ったときに、原則を大切にしようと努力しているだけだ」。常にこうありたいものである。
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シリーズ第1作が傑作だったので、待ちわびてました。文庫になるのを。(お金がなくて単行本買えず・・)
今回も期待にたがわず、原則を貫く主人公が素敵です。
解説に次回作への気になる一言が。早く読みたいよー。
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このシリーズ一作目では、冒頭で本当にびっくりしてしまった。まったく感情移入を許さぬようなキャラクター設定。東大卒の嫌みなやつ。それがどうだ。最後に至っては・・・。
この第二作ではもうこの主人公の人物像は読者は捕まえている。第一作のような展開は二番煎じになる。そこは著者はさすがで、様々なサブキャラクターをうまく配して意外な展開を見せてくれる。うまいなあ。読み始めたら一気本。三作目ではまた本書に登場したキャラクターがまた良い味を出してくれるのだろうと期待させる。(もしくはもっと意外な手が使われるのか)
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竜崎シリーズ第二弾.若干展開が無理やりな気がしないでもないが,テンポ良く読める作品.次作も期待....
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このシリーズは3作品出ていますが、その中でこれが一番好きだ。どこにいても姿勢の変わらない竜崎の潔さがいい。その裏表のなさが、所轄でも徐々に受け入れられていくさまが、読んでいて爽快。
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最近、今野敏の警察小説にハマっており、
樋口顕シリーズを読んでいたが、
この隠蔽捜査シリーズも非常に面白い。
警察官僚であった竜崎伸也は、
隠蔽捜査1で、息子の不祥事により所轄の署長に左遷される。
その赴任先である大森署での事件の話である。
竜崎は合理性を重んじており、正しいことは正しいと主張する。
「俺は、いつも揺れ動いているよ。ただ、迷ったときに、原則を大切にしようとしているだけだ」
そんな風に言って、公私とも厳しく、原則を貫く。
だから、組織の中では「変人」ともされるが、その覚悟が彼の魅力なのではないか。
仕事の上で合理性を貫く姿勢は素晴らしいのだが、
プライベートではてんでバランスがとれていない感じがする。
東大以外は大学ではない、と言い切ってしまうし、
いまどき珍しく家庭は妻が守るものだとしてしまっているが故に、
妻が入院となると、ボタンスイッチで沸くお風呂さえ沸かせない…。
ただ、こういったところもまた魅力なのだと思う。
いろんな方向にまるーくそこそこ魅力を持っているというのは、
トータルでみると結果的にはあまり魅力的でないことが多いのではないだろうか。
竜崎みたいに、どこかとんがっている人が、
組織では煙たがれるのかもしれないが、とても魅力的にうつったりする。
今回の話は所轄を舞台にしており、
読み始めて少し「踊る大捜査線」を思い出した。
現場と会議室、ノンキャリとキャリアという構図。
この小説にもそういった構図がでてくることはでてくるが、
こちらのほうが断然リアルに感じられることと、
現場と言いながらも主人公は元警察官僚であるが故に、
幼馴染の伊丹刑事部長(現場からすると雲の上の人らしい)と親しげに話したりするあたりが違う。
元キャリアのツテを使うことで、中途半端に偉い輩が、それまで高飛車だった態度を急変したりする。
そのあたりに竜崎視点で読んでいる読者はすっきりするのだろう。
これは内田康夫の浅見光彦シリーズに通じるものがあるかな。
ということで、警察内部のキャリアとノンキャリアの対立軸だったり、
そこに事件の意外な結末があったり、
竜崎という人物の合理性に自分の仕事に思いを馳せてみたり、
竜崎が抱えている家庭の問題を考えてみたり、
いろんな視点で楽しめるだろうと思う。
しかし、竜崎の妻冴子、この女性がたぶんこの物語の中で一番魅力的なのではないだろうか。
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文庫化を待っていた作品。
竜崎という真っ直ぐすぎて変人と言われる警察官僚、息子の不祥事も隠さず降格になった前作のその後を楽しみにしていたが、期待以上の変わらなさ。
個人的には警察署長として地域の防犯連絡協議会のようなものに出席したときの竜崎の発言が痛快すぎて面白く、笑いながら読んでしまった。
会社の上司にぜひ読んでもらいたい作品。
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読み進んでいくうちにどっぷりとはまっていきました。敏先生が伝えたいたくさんの事がくどすぎず、かといってあっさりもせず絶妙なバランスで詰まってます。最後の一行を目で捉えた時の、なんとも言えない爽快な気持ち! 個人的には主人公の奥さんと、ちょっと影の薄い美紀ちゃんがお気に入りです。
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前作(隠蔽捜査)で、長男の不祥事により、所轄の警察署長に左遷させられた竜崎警視長が、着任早々たてこもり事件に直面。
ぶれない原則の信念のもとに、バッサバッサと問題解決。犯人射殺、人質は無事解放、となったんだが、、、
警察署長の仕事は書類の判子押しだけで1日が終わるという、そんな仕事も本当にあるんですかねぇ。。。
(2010/3/19)
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前作で息子の不祥事により左遷させられ大森警察署長となったエリート官僚だった竜崎。今回も本音と建前を使い分けない頑固さは健在。
ノーブレス・オブリージュ、多くを持つ者は多くを求められる。竜崎のような官僚が一人でも増えてくれれば、日本は良くなっていく気がする。
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1から続けて一気に読了しました。冴子さんの「男前」っぷりがさらに増していて、こういう妻だからこそ、実直でいられるのか、それとも実直だからこそ、こういう妻と巡り合えたのか・・・。シリーズなので期待大です。
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よかった。
当初に散りばめた事象を生かし、違和感なく、ダイナミックに展開された。公務員の究極に位置する警察組織の実情や矛盾を記しながら、でも、警察に対する信頼を損なわない。期待すら持たせる。
竜崎みたいな奴が必要。
そうなりたい。
そして、竜崎の家族は、新たな問題や展開を見せる。
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隠蔽捜査の2作目。1作目に比べて竜崎の動向が気になり、その変人(?)ぶりにひかれた。ここまで正しいことを正しいと言えるキャリアを見るのは正直すがすがしくていい。風呂を沸かせない、ワイシャツがない、あとは妻との何気ないやり取りなど人間的な一面も垣間見えてよかった。事件の内容としてはなんだかはじめからしっくりこない事件だなと思っていたので、なるほどという感じ。でもそれが仕組まれたものなのか、それとも著者の力の無さなのかは謎。まぁきっとわざとだと思いますが。最後副署長の言葉なのにほっとし、感動した。3冊目も、まぁ文庫になったら読んでみようと思えた作品。