紙の本
そしてあたらしい言葉が生まれる。
2009/06/03 11:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
前巻で悪魔の破壊兵器、TPexを手に入れたテロリスト集団、ローズダスト。彼らの最終目的は臨海副都心、有明・台場地区の壊滅だった。そこまでして彼らが訴えたかった事は、「この国の現況」を国民に知らしめる事。古い体制やシステムに縛られ、新しい言葉を生み出す事をしない世の中。政界・警察・自衛隊、あらゆる日本の旧態依然の体制、システムに。そして日本の全国民に、それを知らしめる為に、彼らは戦いを起こしたのだ。
地下に設置されたとあるシステムを使い、有明・台場地区を縦横に駆け巡るTPex。TPex内の3液混合が始まり、臨界に達するまでたったの15分。その15分で自衛隊や機動隊が必死に阻止しようと試みるも、とうとうTPexは起爆してしまう。奪取された全量のわずか10%程の量の起爆だったにも関わらず、有明・台場地区は深刻なダメージを負ってしまう。人口の島である当地区は、地盤が緩いのだ。このままTPexの爆発が続けば、活断層が刺激される事で起きる巨大地震によって誘発された液状化現象が、街ごと全てを海に沈めてしまう。そして絶望の3発目のTPex反応が観測された時、丹原朋希と羽住一尉の乗った戦闘ヘリ「コブラ」が、有明の空に舞い上がった。
上巻中巻と比較的ロジカルな感じで展開されてきた当物語であるが、とうとうこの下巻で超加速。はらはらどきどきの戦闘シーン満載である。中でも天才ガンナー、ローズダストの留美がTPexを止めようと有明上空に集まった複数の戦闘ヘリと撃ち合うシーンは圧巻。時間を忘れて物語りにのめり込んだ。とにかく一気に加速した物語は空前絶後の破壊を重ね、終焉に向かう。ローズダストのリーダー、入江が言った「東京の空にローズダストを舞わせて見せる」の意味とは何か。やがて訪れる結末、そして生まれる新しい始まり。最後まで息をつかせない。
戦場となる有明地区を、とにかく緻密に調べ上げてあり、良くこんな作戦思いつくなと感心させられた。だけに非常にリアルで、シュールなものさえ感じてしまったのだが。前作「終戦のローレライ」や「亡国のイージス」が、広い大海原に飛び出したのに対し、東京、臨海お台場地域に限定した本作品は、やはりどこか世界観の狭さを感じさせられてしまった。戦闘や兵器の特性などは非常に緻密に描かれておりリアルだが、スケールの大きさという点では前作に劣るように思われた。それからやはり、無辜の市民に対する無差別テロ、というのはいかな義憤にかられていようとも決して許される事ではない。その設定に少し眉をひそめるような感もあったのだが・・・いやしかし。これはもしかしたらあの某大国が起こしたあの意味の無い戦争に対する、痛烈な批判の意味を含んでいるのかもしれないとも思われた。いやもっともっと深いいくつかの思惑が深く複雑に組み合わさって、本作を比類ない程深く濃い物語へと昇華させているのかもしれない。よって受け取る物は、読み手によって千変万化するようにも思う。
息を飲んでページを繰り、活字と取っ組み合うようにしてストーリーを追う。そしてそこに深く刻み込まれた作者の思惟や深遠なテーマを追い求めて。ついに訪れる壮大なラストにただただ茫漠と脱力させられる。そんな読書の醍醐味を満喫させてくれる一冊。上中下巻三冊で1500ページを読破したこの三週間。「本を読んだ」というより、「彼らと付き合った」という感覚が残り、読後の今少し寂しい感さえする。何しろ重厚感極まりない、まさに大作であると思う。
電子書籍
時代を経てより進化した福井小説
2012/10/08 01:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sleeping lion - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終わった。
非常に長い小説ながら、夢中で読ませる。
上巻で読者を散々振り回し、引っ掻き回し、
中巻で圧倒的な戦闘を描き、黒幕を徐々に明かす。
そしてこの下巻で、戦いに終止符を打つ。
すべての伏線が回収され、謎は解ける。
あと5ページだけ、最後の続きが読みたいと思うけれど、
たぶん、それを書かない方が読了感が高いのかも知れない(笑)
結局、この長大なテロ計画とそれに立ち向かう男たちの戦いは、
一人の女性に対する気持ちがすべてだったように思う。
元々福井晴敏さんは無骨な中に、微妙な恋愛的雰囲気を
描くのが得意な作家さんだと思っているけれど、
今作においてもそれは完璧に発揮されていたように感じる。
愛や恋ではなく、生きる目的、希望、可能性。
そんな言葉がふさわしい、彼らとその女性。
彼らが結局「新しい言葉」を生み出せたのかどうかはわからないけれど、
不思議なテーマを持つ作品だったように思えた。
最後まで深い意味を持った、ローズダスト、新しい言葉。
今回も素晴らしい体験をありがとう!
願わくば、完璧に再現された映画化だけど、
今回ばかりは無理そうかな(苦笑)。
投稿元:
レビューを見る
主人公の若者とソレを支える旧世代のオジサン
取り巻く日本の組織
「毎度おなじみの」といってもいいかもしれない。
脇役たちの背負う動悸や悲しみの描き方も
物足りないかもしれない。
でも「古い言葉」「新しい言葉」という切り口には
少しだけ考えるところもあったし
あとは、映像化されたときにガッカリしないことを
祈るのみ。
それも全て個人的には留美の配役次第。
投稿元:
レビューを見る
待望の文庫版登場!!
ハードカバーでも上下巻になる大作ですが、「終戦のローレライ」のように文庫版4冊にならなかったのは買う方としてはありがたいところです。
内容はこの本棚のハードカバーの方の紹介を参考にしてください。
通勤、通学、授業中のお供に最適な文庫版の紹介しでした。
投稿元:
レビューを見る
2009/2/14 ジュンク堂住吉シーア店にて購入。
2013/3/13〜3/18
いよいよ、クライマックス。TPexをめぐる攻防は読み応えあり。とても面白く読めた。が、結局ローズダストの目指した世界観が今ひとつ理解しきれなかったのが、残念。
投稿元:
レビューを見る
上中下三冊を一度に買った、のだが、そのとき「読んでる間に長いと感じるのではないか」という危惧が一瞬差した。まあ買ったんだけど。そしてようやっと読み終わり、まさにそんな印象をもっている。長さが読みごたえでなくくどさの方に向かっているように感じ、なかなか没入して読めなかった。それが異常に時間がかかった原因でもあると思う。
次作を読むかどうかわからない、というところに来てしまったなあ。残念。
投稿元:
レビューを見る
組織に裏切られ死んだ少女が残した「新しい言葉、ローズダスト」を巡る物語。
臨海副都心を舞台にテロをたくらむ「オペレーション・ローズダスト」
かつては同じ防衛庁の特殊機関に所属しながら、他のメンバーとは別の道を歩む朋希との闘い。
4年前の事件をきっかけに孤独な人生を送ってきた朋希と、「公安(ハム)の脂肪」と呼ばれ、第一線から外れた並河の出会いから物語は始まる。
何段階にも巧妙に仕掛けられたテロに立ち向かううちに、人間らしさを取り戻していく朋希と、かつてのやる気を取り戻す並河。
自己利欲しか考えない桜田門や市ヶ谷の官僚たちに振り回されながら、独自の闘いを貫いて行く・・・
臨海副都心を破滅させると言う壮大なストーリーの中にも、かつて一緒に過ごした仲間の死を迎えるシーンは丁寧に描かれており、下巻は涙なしでは読めなかった。
スケールが大きく、専門用語も多く、慣れないと多少読みにくさはあるものの、エンターテイメントと言う言葉だけでは語れない人間の絆を感じさせられた一作。
投稿元:
レビューを見る
ようやく全3巻、読了。頑張ったオレ。
確かにこの大掛かりな事件の最終最終局面での
異様なテンションとスピード感は息を呑む
面白さだったと思います。ここまでの苦労を
取り戻すようにグイグイ読めましたし、宿命の
2人と対決、そしてその後のシーンにはかなり
鼻奥が...ツンとしてしまい、電車ので中で
噛み殺すのが大変でした。
こういう描写はベタですが上手いですねー。
よりリアルに...という意味なのか、(個人的には)
病的なまでの細かい描写には最後まで馴染まなかったのが
残念。他の作品に挑戦するにはかなりの時間が必要だなー。
不謹慎なのはわかっていますが...テロ、テロル、
テロリスト...といった言葉自体に何か強力な危険な
魅力がある...と感じるのは自分だけなのかしら?
投稿元:
レビューを見る
著者の作品のファンなのでこの作品も期待して読んだ。ある意味では漫画チックとも映画っぽいとも言えるストーリーやキャラクターが出てくる、まさにエンターティメント的なノリが著者の世界観であり、それは今回も健在で、肩の力を抜きつつ楽しみながら読んだ。…途中までは。
最後のクライマックス。お台場での決戦シーン。文庫本で言えば下巻になるのだが、それがヒドイ。これは批判しないわけにはいかないだろう。
専門用語と言うか、本当にそんな物があるのかどうかも分からない軍事用語が出てくるのが著者の作品の特徴だが、それは著者の節なので、ある程度は我慢できる。しかし500ページのうちの300ページ程がそれに埋め尽くされたら、さすがに読む気も失せる。上巻・中巻で語られていた登場人物達の過去や因縁なども完全に無視され、心理描写一切無く、延々と何メートルやら、どこかやらで爆発したみたいなことが書かれていい加減にしろって思った。完全に著者の自慰行為である。よほど好きな人じゃなければ読む気も失せるだろう。後で知ったが、著者がクライマックスだけ大量に書き足したと言うことだが、それが丸々いらない。完全に自分の趣味に走っただけの文章だ。さすがに辛口評価にせざるを得ないと思う。ちょっとガッカリした。
普通に上下巻でまとめられるし、その方がもっとスッキリして絶対良かったと思う。さらに最後、ホントのクライマックスが意外とあっさりしていて適当で、これまたガッカリ。力入れるところ完全に間違ってる。
投稿元:
レビューを見る
三島ファンの相方が買って来ました。
割腹自殺した作家の呪怨が低重音で鳴り響いているかのような小説です。
今まさに亡国の地下核実験、ミサイル発射等の渦中、
小説の中に「いざという時」の日本国民の右往左往のあり様が赤裸々に描かれていて、自分自身のあいまいな部分にも目を向けざるを得なくなります。
平和ボケしている日本人の目を覚まさせる熱い小説です。
投稿元:
レビューを見る
戦いの終わり・・・とうとう完結。長かった・・・濃厚すぎる描写は、逆に読みにくいかも・・・。でも、福井晴敏さんの小説の醍醐味は、その圧倒的な描写ですよね。目標を失った若者達へのメッセージが込められていると自分は思います。
投稿元:
レビューを見る
元々週刊誌に連載していた小説のようだが、とてもそうだとは感じられないほど、これほど長大な物語でありながら最初から結末まですべてデザインしてから書き出したとしか思えない。
この著者の作品は設定、プロット、ディテール、何をとってもいかにも映像化したくなるようなものばかりだが、しかし、「亡国のイージス」や「ローレライ」を観ても分かるように、とても2時間やそこらの尺に収まるようなスケールのお話ではない。
政治情勢の描写などもかなりのウェイトを占め、舞台そのものはどちらかというと男性読者向けに作られており、それを含め若干難解であったり非現実感を伴う展開もあるにはあるが、それにも拘らず極めて優れた筆運びと巧みな書き込み、リアルなキャラクターづけの力により、グイグイと読者を引っ張っていく。
一体どこまでリサーチしているんだろう? と驚愕するほどのディテールもものすごい。
ただ、最後の臨海副都心での戦闘シーンの細かい描写はちょっとくどくて読み進むのが辛い部分もあったけど…。
いずれにせよ、福井晴敏作品が好きな向きであれば充足できることが確実な、大作。
投稿元:
レビューを見る
ローズダストのテロによって戦場と化した臨海副都心。最終局面のスペクタクルな描写は相変わらず健在だが、ヘリ戦や少女戦闘員などは少々マンネリかな。一貫しているのは、テロリストを単なるアナーキストとして描くのではなく対峙する主人公丹原や並河と同列に描いているところ。本来見つめ直さなければいけないのは、現在の日本の「状況」なのだという著者の主張が垣間見られる。加筆したとされるAfterは少々冗長に感じられた。
投稿元:
レビューを見る
会社の先輩から借りた本
上中下読み切りました!
完全に娯楽小説で、アクションシーンの描写が細かくて圧巻!
そして主人公がカッコイイです。
ただし若干描写がくどい、同じような描写に感じる。。。
って所があんまりだったかな。
でも読む価値はありです。
投稿元:
レビューを見る
読み終わってしまった。
かなり長かった!!けどおもしろかったー。
途中で説明が長くて少しくじけそうになったけど
読んでよかった!満足感でいっぱいです。