紙の本
「メメント・モリ」と戯れよう。
2004/02/11 11:28
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
文化人の多い姥坂市で、文化人のみを狙った連続殺人事件が起こる、という「恐怖」のシュチュエーションは自体は、まごうことなきミステリー小説のそれである。しかし、主人公を「最初の殺人の第一発見者」で、なおかつ、「作家」、という設定にしたあたりから、「ミステリー小説」の文法から微妙に逸脱する部分がでてくる。
この主人公、いつ殺害されてもおかしくない「立派な被害者候補」であるわけで、そのために、ことある毎に、何でもないような子細なことでも大仰にびくびくして怖がる。同時に、第二、第三の殺人が発生すると、「あ。これはいいミステリーになるな」などと詳細に構想を練りはじめる。現在進行中の事件と、クリスティの「そして誰もいなくなった」との構造の類似と相違点を子細に点検したり、恐怖している自分をどこかで客観的に観察している部分もあり、ハイデッカーの恐れの分類を想起したりする。
現実に進行する事件やそれに対する主人公らのリアクションに関する描写はむしろ滑稽味を強調したスクラプティップスな描き方をしていて、ビクビクしながらも、どこかで、(自分自身の恐怖や醜態も含めて)進行する事態を冷静に分析しているあたりの知的な動作とのギャップが、ミスマッチな感じで、なかなかに面白おかしい。
結局、事件は犯人の自白という形であっけなく収束する。このあたりは肩すかし的というか、ミステリー特有の犯人当ての遊戯性は意図的に犠牲にされている形だが、代わりに、すでに老境に入り否応なく「死」を意識せざるをえない主人公の、タナトスとエロスが、間接的な形で浮き彫りされる。
やはり老境の主人公の内面に題材をとった、同作者の「敵」と同系譜の作品として読むのが適切なようだ。
酩酊亭亭主
電子書籍
閑静な街並みに不協和音
2020/04/15 22:53
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
鎌倉や成城を思わせるような、文化都市・姥坂の情緒が伝わってきます。連続殺人によってお互いが疑心暗鬼に陥る、心理サスペンスの面白さも抜群です。
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東京出張の際に、伊丹空港で購入。
歸途の機上で讀み了へた。
この作品、タイトル通り、恐怖がテーマである。
姥坂市で連續殺人事件が發生するが、被害者は姥坂市の文化人ばかり。
犯人は姥坂市の文化人に怨みを持つ人間らしい。
主人公の作家は、文字通りの恐怖にをののくのであつた。
犯人は誰かといふミステリーの味はひとともに、ホラー小説の雰圍氣も横溢してゐる。
また、筒井ならではのスラプスティックな感覺も堪能できる。
薄手の本だが、なかなか盛り澤山で樂しめる。
2004年4月10日讀了
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レトロチックな雰囲気の中で進んでくのに、現代っぽいところもあって。独特の世界観に惹かれます。トリック的な部分はあんまり無いけどこういうのが実は怖かったり…恐怖です
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http://blog.livedoor.jp/masahino123/archives/65199817.html
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・2/27 読了.いやー、早かった.あっという間.久し振りのミステリーだった.ちゃんと犯人も明らかにされて、正統的ミステリーを読んだ感じだ.でもなんで最近の筒井康隆はミステリーなんだろう.
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ミステリーorホラーかと思いきや、
恐怖を覚える人間の心理が延々と書き連ねられる一作。
ある意味肩すかしでもあり、
人が恐怖をつのらせていくプロセスが楽しくもあり。
ただまあ、もう少しストーリーとして
まとまってほしかったかもなぁという気も。
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人によってなにかしら怖いもんがあると思う。それは他人からみると全くこわくないものであるのだ。そのちがいこそが恐怖の原点である。恐怖を恐怖することこそが恐怖なのである。
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建物の保存運動をした文化人が次々と殺されていく。次は誰が殺されるのか。その恐怖をテーマにした小説。
まじめそうでまじめでなく、緻密そうで荒っぽい。200ページほどなので一気に読める。そのせいもあってか、時間つぶしというほかにあまり読後感が残らない作品だった。
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疑心暗鬼で臆病で発狂という筒井康隆らしいミステリ。話が面白い反面、薄く字がでかいので、あっという間に読めてしまって物足りない。「邪眼鳥」の方が好み。
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ミステリというより筒井先生に「恐怖とはなんぞや」という講義を受けているような内容。おもしろいとかおもしろくないではない。
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そんなに面白くなかったな。怖さにリアリティがない。ギャグ作家にそんなものを期待するべきではないのかもしれないが、この直球のタイトルは。。。「文化人」の自虐スタイルが好きな作家ですね。
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面白くなかった。
ミステリーとして読むにしても恐怖を募らせる過程として読むにしても物足りなさを感じる。
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2014/8/31
うーん。この人の文章が苦手なのか、ミステリーとしてもイマイチに感じた。
次は自分が殺されるという恐怖でおかしくなっていくというのはわかったが、読んでも気持ちが伝わってこなかった。
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筒井の発想はいつも新鮮である。本作品は筒井流のオリジナル・ミステリーである。本文でのアガサ・クリスティーなどのミステリーの言及も興味深い。爆笑はなかったが、他の筒井作品ともかぶる点が楽しめた。ミステリーとしてはそこそこのできである。