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紙の本
ロシアの知識人の系譜
2005/07/23 22:11
12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まさぴゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』を読んで以来、彼女の全作品を読破中。今まで知らなかった自分恥ずかしいほど素晴らしい。最高傑作は、やはり嘘つき〜ではあると思うが、『オリガ・モリソヴナの反語法』も、素晴らしい物語だった。なんでもっと早く知りえなかったのだろう?。読者好きの自分としては恥ずかしいのやら悲しいやら。その幅広い知識の豊かさに感服。しかも分かりやすい平易な文章は、僕の理想とするところの文章力だ。しかし、物語から入ったが、実はエッセイストとして有名な方だ。しかし、その基本は、どの文章でも変わらない。彼女の素晴らしさの特徴を僕が挙げるとすれば3つ
①ヨーロッパ的なもの
②ロシアのインテリゲンツィアの伝統
③コミュニストの子である自意識の強さと表現への強い衝動
こう要約できる。
とりわけ、エッセイには、②の側面が強く出る。彼女が職業としては、在プラハ・ソビエト学校を経て、東京外語大ロシア語学科卒業、東京大学大学院露語露文学修士課程終了し、ロシア語通訳協会の初代事務局長そして会長も勤めた、ロシア語同時通訳の大家です。彼女の核は、ゴルバチョフ元ソ連書記長による冷戦終了、ソ連解体の最前線の報道は彼女の力に大きいという、日本におけるロシア語の大家であるということを抜きには語れません。米原麻里さんは、まだまだ荒削りなものの、明らかにヨーロッパの知識人の幅広い感受性を持っています。なによりも、
①複雑な民族を抱えるヨーロッパ大陸の生活世界での感受性(言語の発音にこだわってその人の文化的な出自を想像してしまう部分など)や②ソビエト・ロシアでのコミュニストの理念が吹き荒れた歴史上最大級の人類に実験に対する感受性などなど、ヨーロッパ生活世界に住む人々には等身大で実感の視線や嗅覚や世界最先進資本主義地域であるヨーロッパでの知識人が持つ、さまざまな歴史的ヘリテージがまざまざと文章を読んでいて感じられます。
それを一言で要約すると、いわゆるロシアのインテリゲインツィア(知識人)の系譜に連なると思えるのです。レーニン、ゴーリキ、ドストエフスキー、トロツキー、バクーニン、ネチャーエフ、ラブロフ、プレハーノフなどなど。
ヨーロッパやアメリカ、中国などのアジアの情報は、かなり日本には入ってきます。しかし、ロシアの等身大の情報は、なかなか出会えません。そういう意味で、とてもセンスオブワンダーを感じます。
こうした臭いを感じさせる彼女は、僕の中では、イタリアなら塩野七生で、ロシアなら米原万里を読め、という感じになっています。
紙の本
ロシアの小咄、おもしろうてやがて哀しき
2010/01/07 08:22
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風紋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
米原万里の本は、なかみを読まないでも買って損をしない。
本書は、飲食に関してあちこちに書き散らした雑文をまとめたものだ。豊富な海外体験(ロシア、東欧)、博引旁証(調べ魔)にはいつものことながら感心させられる。その独特の切り口、語り口は一見シニックだが、暖かい。
表題ともなっている「旅行者の朝食」は、ロシア人が好む小咄だ。
ある小咄に登場する「旅行者の朝食」という言葉に、ロシア人はクックッと笑うが、理由がわからない。ある時、別の小咄を聞いて疑問が氷解した。「旅行者の朝食」という非常にまずい缶詰があるらしい(ソ連がまだ健在な頃のこと)。
彼女は「ちょっと感動した。まずくて売れ行きが最悪な缶詰を生産し続けるという厖大な無駄と愚行を中止するか、缶詰の中身を改良して美味しくするために努力するよりも、その生産販売を放置したまま、それを皮肉ったり揶揄する小咄を作る方に努力を惜しまない、ロシア人の才能とエネルギーの恐ろしく非生産的な、しかしだからこそひどく文学的な方向性に感嘆を禁じ得ないのだ」
こんな小咄もある。
旅先の森で大きな熊に襲われた旅行者が絶体絶命の場面で天に祈る。
「この恐ろしいけだものに敬虔なキリスト教徒の魂を授けたまえ」
すると、あら不思議。熊は両前足を合わせ、祈りはじめたのだ。
「天にまします我らが父よ・・・・美味しい朝食を恵んで下さいましてありがとうございます」
旅行者の願うように熊はキリスト教徒の魂を授かり、敬虔に祈りをささげるのだが、その祈りの内容たるや、旅行者にとって不都合きわまるものなのであった。権力に下の宗教を揶揄して、痛烈きわまりない。
全文読まないと妙味が十分に伝わらない。本屋で立ち読みしてもよいから、pp.36-37をぜひ一読していただきたい。
紙の本
ロシア、東欧の食のエッセイ
2016/12/30 22:47
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:M77 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「心優しく意思の強い人々はベジタリアンになるのだろう。ヒトラーもベジタリアンだった。」
この一文の破壊力と言ったら!
他にも、ロシアを中心に食べ物に関する蘊蓄ガセネタその検証等々が語られる。米原万里の食のエッセイ。
チョウザメの腹のYKK、ウォトカとメンデレーエフ、ジャガイモ普及の苦労、憧れのトルコ蜜飴、ちびくろサンボの国籍、面白いネタが沢山だが、
一番気になったのは、妹ユリちゃんの子供の頃の話で、追悼本で語られていた幻の童話は実現していたらこんな雰囲気だったのかなとしんみりしてしまった。
紙の本
おいしそう!
2015/05/06 13:20
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆーみん - この投稿者のレビュー一覧を見る
どのお話も興味深くて、ぜひとも食べたくなる料理も多々!
ハルヴァ(米原さん曰く、本当に美味しいらしいです!)は先日ヨーロッパのお菓子レシピに、
そのルーツとなるものが載っているのを初めて見つけて興奮しました(笑)そっちのほうに旅した時には、ぜひとも探してみたいなあと思っています
相変わらず米原さんらしいユーモアで書かれてるので
ぜひ読んでみてください
紙の本
忘れられない味
2020/07/22 12:22
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
旅先での思わぬ食べ物との出会いや、不思議な体験がユーモラスに綴られています。ロシア語の同時通訳者として、大陸を駆け回っていた著者が思い浮かんできました。
電子書籍
食べ物エッセイ
2020/02/07 07:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もも - この投稿者のレビュー一覧を見る
食べることについての著者の意気込みが素晴らしい。世界各地を活躍の場とした著者が、異国の知らない食べ物と食べ物事情について、臨場感あふれる文章で紹介してくれる。世界の食べ物についてもっと知りたいと思った。
電子書籍
秀逸な食エッセイ
2024/04/29 13:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Akita - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロシア東欧の生活や童話など深い教養から、普段の食生活に話が繋がり、非常にお腹が空いてくる。東海林さだおの丸かじりシリーズの記載が特に親近感を覚え印象的だった。