良くできた作品、以上のものではない
2010/01/06 14:01
7人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒロイン長谷川初子の皮肉った観察眼が秀逸。周囲の「友達ごっこ」の内実を軽やかに且つ鋭く抉る醒めた視線を持ちながらも、群れるのは嫌だけど独りになるのは怖いという葛藤に悩む主人公には非常に共感が持てる。強さと弱さの間で揺れる心理をうまく描いているというか、匙加減が絶妙なのだ。
ただ、アイドルおたくの「にな川」の魅力が薄い。
作者にしてみれば、20歳に満たない若輩の優等生という自らの狭く浅い人生経験に基づく矮小な作品世界を広く深くするための〈特異点〉として「アイドルおたく」を登場させたのだろうが、いかんせん人物造形がぬるい(実際、本作以後、作者はこれといった作品を書いておらず、底の浅さを露呈してしまっている)。ご高齢の芥川賞選考委員には新鮮に見えたかもしれないが、おたく世代の人間にとって「にな川」の性格と言動は理解可能な範囲に留まり、驚きがない。
何より「にな川」のキャラクターは類型的な〈おたく〉像の域を出ていない。きっと作者には〈おたく〉の知り合いはいないんだろう。
主人公は同じ〈孤独〉な人間として「にな川」に親しみを感じる一方で、自分はあんな〈おたく〉とは違うと蔑視している。しかし、「にな川」の他人の視線を気にしない孤高ぶりや「おりちゃん」に対する純真な愛に心を動かされ、徐々に屈折した想いを抱くようになる。
その愛憎ない交ぜの微妙な距離感がこの小説のキモである以上、にな川の〈おたく〉度はもっと並はずれたものでなければならなかったはずだ。
まあ、そうすると、主人公がにな川に惹かれていく部分を描くのが難しくなり、話の収拾がつかなくなる可能性があるが、そこに挑戦するのが文学なのではないかという気がする。
しかしこの話、おたくのにな川よりも、おたくの男に奇妙な愛情を寄せつつ接近していく主人公の方がどう考えても変な人間に見えてならないのだが、作者はそこまで計算しているのだろうか? しかし、にな川の本質的な〈真っ当さ〉を際だたせるには、やはり外見としての異質さ、異様さはもっと描き込む必要があると思う。
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投稿者:千那 - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校生の頃に初めて読んだが、その時はすごく感銘を受けたような気がする。しかし大人になってから読むと、あまり共感できなかった。作者も私も若かったということだろうか。
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17歳の若さで文藝賞をとり(インストール)、現在大学在学中にして、この作品で芥川賞受賞。
仲間はずれにされている卑屈な女子高生が、同じクラスの、これまたオタクでアウトローな男子を
ばかにし、ばかにしつつも目が離せず、「もっとみじめになればいい。」とサド的な気持ちになっていく。
なんでもない言葉でなんでもない日常を淡々と綴っているだけだが、非凡な才能を感じる。
肩に力も入っていないし、好感がもてる。
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“この、もの哀しく丸まった、無防備な背中を蹴りたい”長谷川初実は、陸上部の高校1年生。ある日、オリチャンというモデルの熱狂的ファンであるにな川から、彼の部屋に招待されるが…クラスの余り者同士の奇妙な関係を描き、文学史上の事件となった127万部のベストセラー。史上最年少19歳での芥川賞受賞作。 (amazonより抜粋)
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話の内容は、なんか、流れるように読んでしまう本。ただ、これを書いたのが、19歳の人ってことを意識しながら読んだ。例えがちょっと分かりにくいかも。
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にな川、そして主人公…なんて微妙な関係なんだ!そんな関係と微妙さに悶えます。そして思いの表現の仕方がすごく素敵。この年頃と言えば普通は青春のお話なのに、この二人は青春かどうか解らない事してます、にな川がどこかぬけているのか、主人公さんがぬけているのか。
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多分この書棚で初めての一つ星
文庫版になったのではじめてよんでみたのだが、これが文学がこれ文芸かと思いました。 少しの経験と少しの妄想で表面的な観察 表面的な描写 文芸というの少し偏向した拘りの世界間があり 人の人生を違ったアングルでえぐり取っていくものだ。
これはよくできた日記である。
コーンフレークがきになった
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文庫が出てたの買って読むことにしました。
予想外に面白かったです。
内容が暗いこと。
主人公の性格が悪いこと。
ありきたりなオチじゃなかったこと。
そこがよかったです。
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文庫でたから買って改めて読んでみたけどやっぱいまいち好きになれん。同時受賞で話題になった「蛇にピアス」のがグロイけど好き。
ただ、ものごっつ読みやすいから小説を読みだそうみたいな人にはお勧めの一冊。
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芥川賞受賞作。
さらっとした文体のせいか、さらっと読めてしまうが、テーマに思いをめぐらせると以外に深い。
しかし。にな川の背中は確かに蹴りたくなるかも(笑)
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なんていうか・・・フィクションだけどノンフィクションみたい。
主人公は高校生だから親近感あるし・・・クラスにこういう子、一人はいるなって感じがした。
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綿矢りさ、話題にのぼっている間は、なんとなく敬遠していたけど、読んでみたら好きだった。軽くて少し無機質なのに何となく残る文章。蹴りたいっていう感情の根源がどこにあるのかはわからないけど、夢中になりたいのになれない、強がるけど強がりきれない、そういう不安定で矛盾した何かをあたしも持っていたし、そして今もきっとあたしの中にある。
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10代の作者が書いた作品のためか、会話や感情がかなりリアルですこしどきりとしました。個人的に「寂しさは鳴る」というはじまりがすき。
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10代だからこそ書けた話。
淡々と書き綴られている感じで、
好き嫌いはっきりしそうな一作。
「蹴りたい」
の意味の捉え方はたくさんあると思います。
なかなか進まなくて、むず痒い
そんな、お話。
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有名な作品。とにかく「すごい」、さすがです。
まず、比喩の仕方がすごく個性的で、おもしろかったです。
主人公ハツの気だるい世界がリアルでした。
曖昧(?)なラストもマッチしてて、本当に素敵です。
「恋」と呼ばない「多分恋」、な感じ(どんなだよ。が素敵でした-