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日本史の大きな謎・女帝
2021/12/31 20:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近集中的に読み直している永井路子の、日本の女帝の意義を問い直す意欲作。
カルチャーセンターの講義をまとめたものらしいためとても読みやすいが、そこは永井路子、しっかり押さえるべきところは押さえている。
天皇の原初の形であった大王とは、どういった存在だったのか、そこに男女の性差は必要だったのか、実に様々な問題を投げかけてくる作品だ。
そもそも天皇の正妃である皇后は、単なる配偶者ではなく、夫である天皇に何かあった場合には、次期天皇として政を執ることもできる重要なポジションだった。その指摘を考えると、初期の女帝たち、推古、皇極(斉明)、持統は明らかに中継ぎなどではなく、皇后としての地位を背景にした当然の即位だった。さらにいえば元明も、皇后にはなっていないが、夫である草壁は、天武によって実質次期天皇として認められていたため、当然皇后になっていたはずであり、その意味ではそれ以前の女帝たちの系譜につながるものだと思う。
さらに永井路子作品で語られる「蘇我氏系女帝VS藤原氏」という対立構図を念頭に置くなら、元明や元正が聖武の成長を待つための中継ぎなどではありえないということも納得がいく。文武の即位に伴い、律令の改正、遷都と矢継ぎ早に攻勢をかけてくる藤原不比等に、一歩も引けを取らない女帝たち。歴史家の先生たちによれば、女帝たちと藤原不比等が対立していた証拠はなく、数々の政策転換も彼女らの意思を無視したものではなかったようだが、実際のところはどうだったのだろうか?
この皇后位が女帝となるために重要だったというポイントが、藤原氏から皇后を出すために長屋王を排除したという事実と矛盾しないことが、やはり作者の説を説得力のあるものにしているのは間違いないところだ。
そして皇后位を経ずに即位した孝謙が、藤原仲麻呂とタッグを組んで唐に倣った政策を次々実行に移してゆく(とくに四字元号の採用など)のを見ると、明らかにここで女帝即位の条件が緩和されたように思われる。
まだまだ謎は尽きないが、定説というものが案外当てにならないことに目を開かせてくれた本書だった。
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