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わんわんハードロマン
2012/04/29 18:23
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
男ってほんとうに馬鹿。そういう風に言われてみたいじゃない。助平で飲み助で浅薄かで無神経。節操無し、強情で無鉄砲。そういう風に生きたくてもなかなかムツカシイ。登場する二人の男のコンビは、食い扶持を失って危機管理サービスなる珍業を立ち上げる。やけっぱちだ。
それが失踪した人妻探しというさらにいんちき臭い仕事の途中、一匹の奇妙な犬と出会い、なぜか助け、助けられる間柄となる。事件はおぞましい売春組織が絡み、さらに頑鉄と名付けた犬の超能力、謎の組織の追跡、そして旧日本軍の秘密研究と、重層的に発展していく。それは事態の変化にとらわれずに突進する二人の姿勢が引き出したものでもあり、またスケールがどんどん拡大していっても相変わらずの軽薄さを保つ彼ら にも苦笑する。
彼らの行く先には次々と新しい謎が現れ、普通の人間なら気が狂いそうになるところを、狭量さと思い込みの強さで、勝手にでたらめな解を断定して突き進み、打開してしまう。
もういったいなんなのよ。
まったく強靭な頭の構造をしているのだ。
現実の様相がいかに変容しても、まったく動じない鈍感さ。ただ煩悩だけが突き動かされて右往左往する図太さ。
犬というのはそもそもが、目にも見えない耳にも聞こえない、匂いの痕跡を辿るという、人間からすれば超能力みたいなものだ。匂いを伝える物質から時間と空間を再構成する能力とする。すると違う何かから、そこに無い何物かを見る能力があってもさほどの飛躍はないかもしれない。そこは犬のことを熟知している作者らしい飛躍かもしれず、「犬笛」の延長上のようなところもある。この犬もただそういう変異を平然と受け止める男は、何かが麻痺しているのに違いない。
それでも女に絡んでやるやらないの話になると、繊細で傷つきやすい。沽券なるものが顔を出す。
こんな男ですみません感が満載で、恥ずかしいやら、情けないやら。しかしそうは言っても、馬鹿な男を貫くのはなかなか難儀なことなのでもある。
この二人組の設定は「風紋の街」などの鉈割と斧割の従兄弟コンビの設定をなぞっている、作者お気に入りの掛け合い漫才シリーズ。それにこの奇妙に落ち着いた犬が絡んで、一途さに自信を持つような変なテイストが混じっているようだ。いつまでも馬鹿な男でいたい。それはハードでロマンな生き方なのだ。
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