女心は昔も今もみな同じ
2006/03/26 12:33
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「かくありし時過ぎて、世の中に、いともはかなく、とにもかくにもつかで、世に経る人ありけり。」
(こうして女盛りの時もむなしく過ぎ去ってしまって・・・)
という序文からはじまる「蜻蛉日記」。
平安時代中期、十世紀末ごろ書かれた日記文学である。
作者は本朝三美人の一人ともいわれ、歌人としても評判が高かった才媛「藤原道綱の母」である。
作者は19歳で藤原兼家の妻となった。
夫、兼家は右大臣藤原師輔の三男。情が深くて、出世街道驀進の御曹司、冗談好きの色男。和歌もそこそこに詠み、教養もある超もてもて男。
一方、作者はたいそう美人で、和歌に秀でている才女。プライドが高く、お嬢様育ちの女。
この二人が結ばれて、人も羨むカップルの誕生のはずが、モテモテ夫は一夫多妻の時代とあって、あっちにふらふら、こっちにふらふら。
お嬢様育ちの女はプライドが高くて甘えべた、美人なのでこびたりへつらったりするなんてできない。
さあさあ、どうする、どうする?
すねたり、喜んだり、いじけたり、悲しんだり。もてもて夫をひたすらむなしく待ち続けた21年間の女の苦悶。それが「蜻蛉日記」と、ひとくくりにしては実も蓋もない。
そこは天下の和歌の名人にして才媛。むなしい結婚生活を上巻(15年)、中・下巻(各3年)、計21年分を回想して書かれた日記文学となっている。
本書が一千年も前のものとはとても思えないほど身につまされ、身近に感じるから不思議。
なぜだろう?文明が発達しても男と女の生態や思考は変わらないからだろうか。
夫の浮気相手に嫉妬したり、待ち焦がれていた夫に素直に甘えられないで、つい、いやみを言ってしまったり・・・
女心の愛らしさ、いじらしさ、醜さ、矜持、など作者の心の揺らめきが深い陰影を帯びてその華麗な和歌と共に読者の胸に食い込んで共感と哀感とを呼ぶのである。
歌人としても名だたる作者の和歌はひときわの光彩を放っており、この和歌をとりまく詞書としての日記は文学の香り高い。
内面を物語る日記文学は紀貫之の「土佐日記」から受け継ぐものであり、本書はこの先、誕生する「源氏物語」の先駆的役割も帯びている。
さて、この一千年前の日記文学がすいすい読めてしまったのはなぜだろうか?
その秘密は本書の構成の妙に負うところ大なのである。
すなわち、本書は現代語訳と原文を併記し、その後解説がついており、実に分かりやすく、読みやすく、古典に親しみやすくなっている。
「ビギナーズ・クラッシック」と銘打っている道理である。
歴史をひもときつつ、時を超えて真摯に人生をみつめてきた一人の女性の息遣いが確かに現代に届いた作品だった。
いつの時代も変わらない
2021/10/27 08:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
夫婦の仲は冷めていても、子どもがいるから、どうにか成り立っている。いつの時代も変わらないなと思いました。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
源氏物語よりも古い時代の貴族の恋愛模様。古典でも古い時代の私情がわかる。初心者向けなので抜粋であるが最初に現代語訳があり原文の理解が進む。年表も掲載されているので流れもつかみやすい。
物語自体はさほど面白くないかも。
2016/05/03 02:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
古典日記文学を色々読んでみようと思い、「蜻蛉日記」も手にしてみました。ビギナーズ・クラシックスシリーズならではの現代語訳、原文、解説という構成が古文への苦手意識を和らげてくれますが、物語自体はまあ頼りない女の日記と言うことでダンナの薄情さを嘆くことがメインテーマなので、さほど面白くは感じませんでした。
投稿元:
レビューを見る
亀梨君が好きだと言っていたので読んでみましたが、なるほど面白いです。切なさがドクドクと感じられますね。
投稿元:
レビューを見る
11/13 古事記が面白かったシリーズで、平安期へ。やっぱりある程度の流れを掴み、本文へ、というスタイルが良い。蜻蛉日記そのものも、楽しめる。継続中。
11/30. あれれ、全然読んでない。
投稿元:
レビューを見る
最後まで読みきれなかった・・・
昔は夫の帰りをひたすら待つだけだなんて大変だったんだなぁとしみじみ思う
一夫多妻制なんて私は我慢できないな
道綱母の切ない思いがひしひし伝わってきた
自分以外の女の元へ行く音を聞いてやりきれないことなどちょっとしたことが書いてあって
それが些細なことだけに余計に切なさがこみあげてきた
このころの女性はすごいな
投稿元:
レビューを見る
作者の、道綱の母が、私は大好きです。ものすごく今現代の人に近い、と思います。誰だって、自分だけを見てほしい。だから浮気をする(その当時の男性なら当たり前でしょうが…)夫にイライラするし、その相手にも強烈な嫉妬の炎を燃やす。けど、それは人間として当たり前ではないでしょうか?それを「嫉妬に狂い寵愛を失った女」として扱われるのはいかがなものか。私は彼女を本当に可愛くて、いじらしい人だと思っています。でも、「ちょっとは素直におなんなさい」と忠告したいけどね。
投稿元:
レビューを見る
いろいろすっ飛ばされているようだけれど、雰囲気は伝わるので、ざっと知りたい方に。
教科書のように本文・読み下し文・解説付き。
投稿元:
レビューを見る
初心者向けですね。読みやすくて、手に取りやすいと思います。
授業で先生が、道綱母のことを「女子力がない」って言っていたの面白かったなぁ(笑)そういうこと言わなそうな上品な先生だったから尚更。蜻蛉日記好きだなぁ。
投稿元:
レビューを見る
出た! 平安朝こじらせ女!!
溢れる才知、輝く美貌、そしてむやみに高いプライド。
一体どういう扱いなら、この人満足するんだろう、と思ってしまう。
町の小路の女への「命はあらせて、わが思うふやうに、おりかへし物を思うはせばや、と思いひしを、さやうに(兼家の愛を失う)なりもていき、果ては、産みののしりし子さへ死ぬるものかは」、「わが思ふには、今少しうちまさりて嘆くらむと思ふに、今ぞ胸は空きたる。」という悪口を読むと、いかに身分差があったにせよ、ドン引きした。
が、不思議なことに、本を置いてみると、何かその率直さが悪くない感じがしてくる。
でも・・・これは作者の生前から流布した本なのだろうか。
これを読んで、関係者たちは、特に兼家はどう思ったのだろう?
中巻は物詣の場面が多く、自然描写に惹かれる。
大学で『蜻蛉日記』の講義を受けたことを思い出した。
当時は、そのお寺の由来やら、本尊がどんな仏かという話が続き、思わず睡魔に襲われたものだったが、今にして読み直すと、なぜ先生が上巻を飛ばして中巻、下巻を扱われたのかわかる気がした。
投稿元:
レビューを見る
この時代の上流階級の女性の結婚と、その生活について、描かれた日記。兼家さんの悪びれない女好きに作者はプライドが許さずに苦しんだり喜んだり、また凹んだりと、躍らされてしまう人生を送ります。最後のあたりではもう兼家さんは来なくなり、悲しさ切なさひとしおで日記が終わり、何とも言えず後に残る話でした。
投稿元:
レビューを見る
「蜻蛉日記」には、954年夏から974年暮れ。全体で21年間にわたる記事が収められている、とのこと。
内容は、著者の「はかない結婚生活」がテーマということで、けっこう面白い内容である。
この本は、ところどころ読んでみた。全体の半分位か。
●2023年1月3日、追記。
本作の内容は、次のとおり。
---引用開始
美貌と歌才に恵まれ権門の夫をもちながら、蜻蛉のようにはかない身の上を嘆く藤原道綱母の21年間の日記。鋭く人生を見つめ、夫の愛情に絶望していく心理を繊細に描く。現代語訳を前面に出し、難解な日記をしっかり理解できるよう構成。現代語訳・原文ともに総ルビ付きで朗読にも最適。
---引用終了
それから、本作の著者、藤原道綱母のが詠んだ和歌が百人一首にある。
それは、
なげきつつ ひとりぬる夜の あくるまは いかに久しき ものとかはしる
投稿元:
レビューを見る
メンヘラとして心惹かれるものがあり読んでみました。
藤原道綱母のはかない結婚生活をテーマにした日記文学。
まず、現代語訳・原文・解説があり古文の勉強にもなるし、古文に詳しくなくても内容を理解できる。
解説では和歌の縁語など書かれているため勉強になる。受験生の時に出会いたかった…。
内容としては、自分以外の女のもとへ通う兼家を想い不安になる様子が多く書かれている。
いっそのこと出家した方がいいのか、死んだ方がマシと考える様子は今のメンヘラと相違ないし、気持ちが非常に理解できてつらいものがある。
最終的には兼家への気持ちも落ち着きつつあるが、それでもやはり夫婦関係が終わってしまうのは悲しい。。
もっと素直になりなよ!と思う部分もあるものの、なれないよねわかる、、という気持ちもわかる。笑
結婚生活が何十年と続いても兼家への気持ちが冷めないという点、愛情深い人だったのかなあと感じた。
好きな和歌はこちら
年ごとに余れば恋ふる君がため閏月をば置くにやあるらむ
投稿元:
レビューを見る
蜻蛉日記
古典では男女の仲という単語を「世」と表すが、それを痛感できるような話であった。
道綱母にとっては兼家との関係は自分の人生そのものであり、辛いものとしても幸せなものとしても存在していたのだと思う。
最後のシーンが特に印象的で
'今年、いたう荒るることなくて、はだら雪、ふたたびばかりぞ降りつる'
兼家のおとづれが途絶えた日常を表しているが、金家に思い悲しんでいた日々と比べたらこちらの方が圧倒的に辛いと思う。
平坦であることの手持ちぶたさ、辛さを訴えられたような気がした。
自分の生活を振り返ってみると自分の身の回りにもこのような、こんなにも苦しいものなくなってしまえと思いつつも実際無くなってしまうと辛さを感じるものがある。
今自分がその渦中にいる受験という戦争。
辛いこともたくさんあるが、辛いからこその充実を感じられる。
辛さを超えての幸せがやはりなによりも充実感を感じられるような気がする。
ストイックに受験勉強に励んでいこうと思う!!