紙の本
期待をいたずらに高く持たなければ楽しめる小説
2007/04/29 00:14
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞に連載小説を書いている作家のもとに見知らぬ男から一通の速達が届く。「読者が犯人」という究極のトリックを思いついたので、ぜひそのアイデアを買い取ってほしいという手紙だ。「読者が犯人」という筋書きをもった小説は果たして可能なのか。作家は半信半疑ながら、この男の申し出に興味を持たずにはいられなかった…。
「ウルチモ・トルッコ」という一見コミカルなタイトルは、「究極のトリック」という意味のイタリア語。読者である私自身が真犯人になるという奇想天外な小説が成立するのか。登場人物である作家先生ならずとも、汲めども尽きぬ興味に突き動かされて私も、この300頁の本を一気に読み終えました。
この小説には言語や天文学、超心理学など、一見脈略がなさそうな様々な事柄に関する該博な知識が、決して衒学的ではない言辞で散りばめられていて、一体どこへ読者を導くつもりなのかとわくわくしながら頁を繰るのは楽しい体験でした。
そしてたどり着いた果てに待ち受けていた真相は、エドガー・アラン・ポー以来連綿と続く古今東西のミステリー史上かつて誰も思いつくことがなかった究極のトリック…というほどのものではありません。
結論から言えば、それは私の「そこそこの期待値」通りのものでした。その「期待値」は実のところさほど高いものではありません。なにしろ本書は講談社ノベルズの一冊であり、講談社が精力を傾けて世に問うという類いのものではそもそもないことは容易に想像がつきます。ですから本格ミステリーというものを期待していたわけではありませんし、まぁお手並み拝見という程度の心持ちで臨んだ書です。
それでも全く楽しめなかったわけではなく、私としては敢闘賞ものだと評価してもよいかなと思わせるエンターテインメント小説でした。
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<07/4/10〜07/4/12>タイトルにある「ウルチモ・トルッコ」はイタリア語で「究極のトリック」のこと。「究極のトリック」とは大きく出たもんですが、タイトルで宣言している通り読者を犯人に仕立て上げることができたら、あながち大ぼらでもありません◆読者=犯人に挑戦したミステリは数こそ少ないですがこれまでにもないことはありませんでした。しかしながら、どれも読者が心底「自分が犯人だ」と思えるようなものではありませんでした。本書はどうでしょうか◆確かにこれなら読者=犯人と言ってもおかしくはないかもしれません。でも、これはなあ、あんまりだよなあ。過去にもこのトリックを考えついた作家はいたはずです。でも、実際に使ってみようと思う勇気のある作家がいなかったに過ぎない・・・・とそう愚考します。そういうたぐいのトリックだということです、これは◆そのトリックを成立させるためのトリックがまたアンフェアなのも気になります。そこのところがもう少し上手に出来ていたらメイントリックの不自然さも気にならなかったかもと惜しまれます。
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「読者が犯人」という推理小説はある意味、究極の意外な犯人である。
その不可能トリックに挑んだ作品であり、推理小説マニアにはそれだけでも意味がある……
と、言いたいんだけど、正直読み終えた感想は「ふ〜ん」といった程度のものでした。
いや、トリックには「なるほど」とも思ったのですが、最初のページから帯から「読者が犯人」であることが明記されているので、どうしてもその不可能トリックにだけ興味が行ってしまってストーリーや登場人物に気持ちが行かないのですね。なんだか推理クイズを突きつけられて、回答ページを読み終えたような感触。
ちょっと期待はずれだったかなぁ。
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タイトル通り「読者」を犯人にした作品。トリックのためだけのストーリーで物足りない気がする。確かにこのストーリーなら「読者」が犯人だけど。
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「読者が犯人」なんてどんなトリックなんだろうかと期待していたんだけど、読み終わってもスッキリしない。
やはり究極のトリックは不可能なのかも
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軽く読める1冊。
一つ前のメフィスト賞がひどかったから余計に楽しめた。
伏線はもうばればれだったけど、
まあこれなら許せる範囲。
メフィスト賞なんだから、あれこれケチをつけてもしょうがない。
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ああ、確かに私が犯人だったみたいです。無責任な物言いですがそうとしか表現できない。フェアかどうかと問われれば思いっきりアンフェアだけれど読後感はそれほど悪くないです。内容に触れた途端にネタバレなのでレビューしづらいなあ。
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気付けばなんか思い出せないくらい本を読んできました。
途中で、くそくだらない本しか読んでなかった時代もありますし、海外ホラーに傾倒していたことも在りましたが、今では推理小説をメインに恋愛、エンターテイメント、ホラー、時代ものと何でもござれな雑食素人読書家に見事成長しました。
今現在記憶にある一番昔に読んだ推理小説は、宮部さんだった気がします。
たぶん、『魔術はささやく』だった気がします。もしかすると、『龍は眠る』だったかもしれません。
まぁ、少なくともその頃(たしか小学生)は推理小説だとは思っていませんでしたね〜。
それから、色々推理小説も読みました。
色々なトリックや色々な犯人や色々な探偵を見てきました。
犯人のいないモノ、探偵のいないモノ、トリックの無いモノもありましたが・・・。
面白いのもありましたし、途中で投げ出したのもあったと思います。
ウルチモ・トロッコ(読み終わった今でも、意味がわからない)は、そんな中でもかなり異色な一冊。
一言で言えば、この本は犯人は読者だというありえないトリックを、おった作品。鯨統一郎が、実は一回試していますがw
こういう発想は、あちきには出来ないな〜。
こういう人を見ていると、やっぱり自分には推理小説は書けないし、ネタが考えつかないな〜と思ってしまいます。
まぁ、元からそんなに書けるわけではありませんが・・・w
作中で何度でも言われていますが、推理小説は終焉へと向かっているジャンルなのかもしれません。
トリックは出尽くしている。
序盤から登場する犯人らしくない人物が犯人である。
これに、当てはまらない作品を書く人は鯨統一郎位かもしれません。
そんな終焉に向かっている推理小説界において、この『ウルチモ・トルッコ』は救世主となりえるのか・・・それとも終止符になってしまうのか・・・
まぁ、そこまでは売れないだろうな〜、メフィスト賞だしwww
って、読み返してみると、鯨統一郎の賛美がちらほら見当たるな〜。
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色々と推理小説というかこのような類の本を読んできましたが、まあこれは異色といえば面妖な作品でした。苦笑。
ラストは、ああそうきたかという感は持ちましたが、それが何か?という気も無きにしも非ず。強引つっちゃあ強引ですが、確かに誰も気がつかなかったなあと思います。メフィスト賞取ってるけど、この後の作品ってどうするのかな?って逆に興味がでますが。
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2007/11/18
トリックにあまり関心のない私が珍しくトリックが面白いと思えた小説。
私は犯人じゃない気もするけど。
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伏線の張り方はまあまあ。読者が犯人(ばらしてるからいいよね)であると、確かに納得は出来る。しかし、読者=自分とはならないなぁ。
あとは、超能力の薀蓄とか描写はあんなにたくさん必要なの?
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主人公のもとに、謎の手紙が届く。差出人に心当たりはない。ミステリーで最も「ありえない」犯人、つまり「読者が犯人だ!」というアイディアを売りつけるというもの。そのトリックとは・・・??そしてこの手紙の送り主の意図は??
「推理小説の犯人は、大抵怪しくなさそうなヤツが犯人だ」とよく言われている。実際トリックなど全然見破れず、伏線にも気づけず…という私ですら、勘で犯人が分かってしまうことがわりとある。(逆に勘でわかっちゃうから真剣に読まないのか?)「意外」な犯人のパターンは出尽くしたともいわれていて、究極の犯人=読者であるが、こんなトリックは今まで成立していない。
そして超能力・心理学関連の話がよく出てくるんだけど、これを面白いと感じるか、ついていけないか、人によって結構分かれると思う。第六感を信じている私としてはテレパシーの話とかスプーン曲げの話とか楽しめたんだけどねー。あ、でも女の子たちのテレパシーの「トリック」はちょっと無理があるかな?面白いけどさ。そして女の子たちのエピソードが本編とは関係なかったのがちょっと残念。
あ、あと手紙に挿入されている数数のエピソードも好きだったかな。
結末は・・・・本当これは人によって好き嫌いが分かれそう。私としては「ありえない」理屈(?)だけど、かなり気に入っているかな。無駄に超能力のエピソードが入っていたわけじゃないのね、と。
メフィスト賞受賞作だけあるし、推理小説としてはともかく、読み物としては楽しめるんじゃないかな。SF好きな人なら特に。こういう作品がもっと世に増えてもいいと思う。推理小説を名乗っていいのか微妙な気もするけどw
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第36回メフィスト賞受賞作。
読者が犯人という最後の不可能トリックに挑戦した作品。
伏線の張り方や物語の進め方はやや拙く、トリック自体も成功したかどうかは、賛否が分かれるところだろうが、なるほどといえるものであり、挑戦した事自体が素晴らしい。
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あー犯人私だ…と思わざるを得ない展開。完全に一発ネタだけど、バカじゃなくむしろすごいと思ってしまった。筋書き(ネタバレ)だけなら完全にバカミスなのに。
最初本筋とどう絡んでくるんだろうと疑問に感じていた部分がどんどん繋がってくるのが面白い。
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小説家である私のもとに、一通の封書が届いた。差出人の名には心当たりがない。手紙を読んだ私は驚いた。そこにはこう書かれていたのだった。
「まだ誰も実現させていない最期の不可能トリック、それは≪読者が犯人≫というものです。私はそのトリックを実現させるアイディアを考案しました。それを一億円で買ってほしいのです」と。
本を読み終わったときに読者に≪私が犯人だ≫と言わせられれば作者の勝ち。たしかに読んだことのないトリックでしょう。広域の意味で言えば、風評や悪意のない差別など、≪ああ、私も一因になっている≫という気持ちを抱かせるようなものはありますが、トリックとは別でしょうから。本書でも、特定の人や状況ではなく、全ての読者にそう思わせることができて初めて成立すると繰り返されているので。
いったいどんなトリックなんだろう・・と期待しながら読んでいきました。
途中、語り手が新聞に連載している小説がこの内容だということや、超能力の実験などの事柄が差し挟まれて、え~そうういう落ちじゃないよね・・と、嫌な予感がしてきたのですが、当たらずとも遠からずの結末に・・・。
要は特異体質(しかも実際にはないであろう超常現象的な)を利用して読み手を犯人とするもの。文を読んだから人が死んだといわれてもねぇ。『メフィスト賞受賞作』となってたのに、肩すかしをくらってしまいました。
≪私が犯人だ≫とはとても言えない気分です。