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文明としての教育(新潮新書) みんなのレビュー

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みんなのレビュー9件

みんなの評価3.6

評価内訳

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9 件中 1 件~ 9 件を表示

教育について頭を整理するには最良の書

2008/01/04 10:17

15人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る

子供の中学受験があって教育についてあれこれ考えることがあり、随分教育関係の本を読んだ。頭の悪い自称プロ教師が書いた本、それをそっくりそのまま引用しては世間の人気に便乗して商売する関西の大学教授が書いた低俗本、はたまた灘中東大医学部卒という学歴のみを唯一の売りにして商売に励むビジネスライターの書いた本など、どれもこれも読むにつけ腹が立つものが多かったが、これは違う。やはり現代の英賢が教育を語るとなるとかくもレベルが高く教養の香り芳しいものにしあがるものかとほとほと感心した。やはり山崎正和はそんじょそこらの連中とは一味も二味も、いや数十段レベルが違う。

山崎は本書を書くにあたりギリシャ・ローマ時代の古典に遡って教育論を通読した上で本書を書いたという。その過程で、児童中心主義の論者達の理論も総ざらいした上で、それらをきちんと整理しきちんと批判しているので頭を整理するのに非常に便利な本ともなっている。

まず山崎は「教育とは国家による統治行為である」ときちんと言い切っている。反体制の不逞の輩を育てるのは教育とは正反対の行為であるとすがすがしく言い切っている。国旗国歌に敬意を学校内の公式行事の場で敬意を表するのは国家から教員免許をさずけられた全ての教員に課せられた当然の義務であるという。子供に順法精神を刷り込むのが全ての教員に課せられた義務である以上、国旗国歌法で定められた国旗国歌に一定の敬意を表するのは当然だというわけだ。なんとシンプルな、なんと清々しい断定だろう。いや、心が晴々する。

山崎は教育の目的は高度産業化社会の中で国家が集団として競争力を維持していくための最低限の素養を強制的に国民に叩き込むのが義務教育のそもそもの目的であるという。現代の社会では、例えどんなウスラバカでも無知である自由、無教養である権利は無いのだという。読み書きそろばんの最低ラインは国家によって強制的に国民の一人ひとりに叩きこまれねば、その国家は厳しい国際競争の中で脱落していかざるを得ない。それ故、山崎は今の義務教育のトコロテン式進級方式に疑念を呈する。暴走族予備軍やプータロー予備軍と化しているプーさんたちはきちんと落第させ、一定の水準に達するまで中学を卒業させないことも必要なのではとほのめかす。

また山崎は、教育を「国家が国民の一人一人に最低限の素養を叩き込む統治行為」としての教育と、高度な知識を身に着けて出世街道を歩む人たちのためのサービスとしての教育の二つに分け、後者のサービスとしての教育については民営化してはどうかとも提案している。山崎が中教審で提案した週休三日制はこの発想の延長線上のものであって、要するに休みの3日間を利用してSAPIX等の塾に行きたい人は自腹で勝手に行けというものなのだ。明治以来、日本の教育は人材選抜という科挙制度の香りを強く持ちながら発達してきた。それでも旧制中学・旧制高校を経て帝国大学へと進む層が人口の1%前後だった当時では旧制高校の段階で選抜され終えたエリート達が「人格を陶冶する」教養のための教養を磨く「擬似学歴貴族」となりうる瞬間もあった。しかし戦後、高等教育を受ける層が爆発的に増えるに従って、こうした「学歴貴族制度」は崩壊し、日本社会はそれに続く制度をいまだに模索している最中である。このあたりについての山崎の考察も極めて鋭い。

更に山崎は、「教育とは強制であってはならない。教育とは子供が本来うちに秘めている可能性を引き出すお手伝いをするものだ」式の児童中心主義、自由主義教育論を一刀の下に切って捨てる。このアホな教育論を提唱したのはアメリカのシカゴ大学の教授で、彼が彼の方式を実験したのは高度な教養を身につけたシカゴ大学の教授たちの子弟を集めた学校であって、だからこそそれがある程度うまくいったのであって、これを下層階級や無教養家庭の子弟に対して適用しても上手く機能するはずがないと言い切るのである。これも合点がいく断定だ。日本有数の進学校である筑波大附属駒場中学校・高等学校には「駒場の自由」という言葉がある。同校には校則も宿題もほとんどなくすべては学生の自治に任されているというが、これが機能しているのは筑駒という日本最優秀校だからこそ可能なのであって、これが2番手3番手の学校、例えば麻布などとなると、もう「自由」は機能し無くなり放縦に堕してしまっている。麻布の昨年の運動会は取り止めとなったが、これには麻布の生徒が自分で自分を律することが出来ず放縦に堕したことが原因であると仄聞している。

最後に山崎は公立学校における課外活動=クラブ活動を一切やめ、これを地域のクラブ活動に外だしにせよと極めて最もな提言も行っている。一般に公立の中学高校の教師は薄給である。薄給のわりに近年どんどんその負担が増えている。なかでも最も負担となっているのが生徒のクラブ活動の顧問であり、これは実質的な時間外勤務であるにもかかわらずほとんど手当てが出ない無償奉仕となっている。それでいてクラブ活動中に事故でも起これば担当の教師は法的責任さえ昨今追求されかねない状況である。こんなバカなことは一刻も早くやめ、クラブ活動は地元の野球クラブなりサッカークラブなりに外注せよと山崎は言うのである。名門私立はプロのコーチを高い給料で呼び寄せて生徒指導に当たらせているところも多い。こういう連中とタダ働きの公立学校のチームがマトモにぶつかって勝てる可能性は少ない。学校の基本機能は勉学であることを山崎の指摘は我々に思い出させてくれる。

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やっぱ好きやわぁ,この爺さん

2009/08/15 09:38

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る

山崎正和と言えば確か大学入試の模擬試験だか,それとも本番だったかにそのエッセイが国語の問題に使われてて,その試験の出来は忘れたが(本番だったのなら出来は良かったはずだ,だって合格したんだから),イナカのジャカイモ高校生だったワタシはその内容にイタク感動し,以降著書を見かけると極力読むようにしてきた。申し訳ないことに本業(なんでしょ?)の戯曲は未だに1本も観てないんだけどさ。

なんでもセンセ,昨年から中教審……こりゃ何の略だ,中央教育審議会か? ほんぢゃ末端教育審議会ってのもあるのかしら? とにかくそこの会長に就任し,今後の我が国の教育制度とかについて拘束力はないんだけど話題にはしてもらえて,文部科学省とその天下りの利権にバッティングしなければ実施もされるかも知れないという……はぁはぁ,ものすごく限定されますねこれ,提言をする立場になった。

会長という立場上,皆の意見の取りまとめをせねばならず,そうそう自分の意見を主張してばかりはいられないだろうから,オレはこういう考えをもっているというのを本に書いておき,願わくば審議会メンバーにはこれを事前に読んでおいてもらって……あ,そこまでは書いてないけど要はそういうことである(違います?)。

ともあれ前半,というか第6章「近代国家の成立に伴って」までの教育というものがニンゲンの歴史にどのように立ち現れ現在のように制度化されてきたか,その過程にはどのような議論が成されてきたかという部分は,実にニュートラルな立場で「教育の歴史」というものがまとめられていてどんな意見の人も一読して損はないと思う。デュルケームの「教育とは『未成年者の体系的な社会化』である」なんて懐かしくて涙が出そうでありました。

そして第7章「統治とサービス」以降がつまり,それまでの歴史を前提とした山崎センセの現代教育に対する持論なわけ。「知識とは文明社会においては持つことを義務づけられたもの」だとか,「キリストの死は精神世界における『ポトラッチ』の代表的な例」だとか,さすが,いつだったか養老センセとの対談で「年寄りには麻薬を解禁すりゃいい」とか言っただけのことはある御仁,卓見というか当人が聞いたら怒るよというか,オレ好みの立論満載でやっぱ好きやわぁ,この爺さん。機会があれば是非戯曲も拝見いたしたいっす。

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概論としてはよいが、各論には問題が多い。

2008/01/05 19:52

12人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:越知 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 山崎正和は先に中教審会長として、学校に道徳教育は必要ないと言って波紋を投げかけた。無論これは「道徳を政府が子供に押しつけるのはケシカラン」というようなアナーキスト的な意味ではなく、そもそも倫理観というものを知識と同様な意味あいで教えられるのかという高邁な立場から発せられた意見であるが、本書はそうした山崎氏の教育論を一冊にまとめたものとして興味をそそる。
 しかし一読した印象は、概論だな、というものであった。確かに教育の基本が押しつけであるというところをふまえ、近代においては一定の知識を持たない者は市民たることすらできないのだ、とする主張は正論であろう。子供の権利を金科玉条にする一部の論者がものする非常識な議論への反駁として、すがすがしい読後感が残る。
 ただし、具体的な提言をする段になると相当に乱暴だし、現場を知らなさすぎる箇所が目立つのに加え、記述の相互矛盾も見られる。
 例えば、ある箇所では小渕内閣時代に著者が学校週三日制を提言したと書いているかと思えば(149ページ)、他の箇所では最近ゆとり教育が見直されて学習時間が増えたことを歓迎している(190ページ)。学校の学習時間は増やすべきなのか減らすべきなのか、主張はどちらか一方にしてもらいたいものだ。
 また、学校で教えるべきことは知識であってサービスはそれと区別するべきだとして、クラブ活動を教師の手から離してボランティアなどにゆだねてはと提唱しており、これは教師の負担を減らすという意味では一考に値するが、逆に学校の立地条件による格差を拡大させかねないという、きわめて基本的な考察が欠けているのはどうしたことか。言うまでもなく大都市なら様々な人材が学校の周囲にいるだろうが、地方都市ではそうした条件は望めない。著者自身主張しているように、近代教育は平等を旨として展開されてきた。学校がそのせいであまりに多くのものを抱え込んでしまったことは確かにマイナスだが、他方でそれにより平等感覚があまねく広まっていったプラス面を忘れてはならない。したがって教師の負担を減らせと主張するなら、新自由主義的な「民間にゆだねればうまくいく」式の単純な主張をするのではなく、地域の特性を見据えた上で、場合によっては公立学校に公的な費用でクラブ活動指導者を招聘する制度を設けるなどの提言を行うのが筋であろう。
 クラブ活動だけではない。昔なら授業を受けた後の子供は帰宅するのが当たり前だったが、現在は学童保育という制度があり、子供たちを放課後に預かる施設が税金を使ってそれなりに機能している。こういう施設やその職員は、それこそ民間のボランティアに頼ればよさそうなものだが、人口が多い東京ですらそうなっていないのはなぜか、少し勉強してもらいたいものだ。
 著者は教育における素人支配に警告を発している。最近のモンスター・ペアレントなどの現象はその最たるもので、私としても著者の主張に賛成だが、中教審を含めて著者自身が素人的な教育論に陥ってはどうしようもないわけで、一層の研鑽が望まれる。私としては、日教組などのイデオロギーに染まっていない現場教師の声をもっと聞いた方がいいと思う。
 なお概論部分でも、ところどころ古い知識で書いてある箇所があって気になった。例えば狼に育てられた子供という話(37ページ)は、以前はかなり流布していたが、最近ではその真実性に疑問符がつけられている。ヨーロッパ中世社会には子供という概念がなかったという説(81ページ)は、著者自身書いているようにアリエスにより唱えられたが、最近ではこれに否定的な見解が主流だろう。また戦後日本の採用した六・三制がアメリカに生まれたと書かれているが(86ページ)、アメリカの教育制度は州によって異なり、六・三制でないところも多い。

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2007/12/22 14:29

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2008/03/07 21:33

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