紙の本
マイクが来たなら 微笑んで
2009/03/01 07:35
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「あの曲は部長の十八番(おはこ)だから歌うなよ」。スナックの店先で課長からこっそり耳打ちされた時代が懐かしい。
今でもそんな社会人マナー? が存在するのだろうか。
普段なにげなく利用している「カラオケ」であるが、本書で改めてその歴史を振り返ると、「8トラックテープ」の「カラオケ」に百円硬貨を投入したことも、貨車のコンテナを利用した「カラオケボックス」も「通信カラオケ」とこれみよがしに看板書きされた居酒屋も、みんな経験してきたことであることに驚く。
そして、あの時一緒に歌ったのはあの課の課長だったとか、隣の部署の同僚だとか、自身の社会人としての歴史にもダブるところがある。
「カラオケ」が進化していくにつれて、仕事の責任も重くなっていったような気がする
。
本書は今や世界共通語にもなった「カラオケ」の誕生秘史であり、成長の記録を丹念に追ったドキュメンタリーである。
それにつけても面白いのは、「カラオケ」誕生の「その時」だろう。
本書では二人の当事者の取材を行っているが、その二人は「東京と神戸で、ほぼ同時期(書評子注:1967年と1971年)に似た機械を作って」いたのである。
これは動物学でいうところの「百匹目の猿現象」と同じなのだろうか。(「百匹目の猿現象」というのは、ウィキペディアによれば「ある行動、考えなどが、ある一定数を超えると、これが接触のない同類の仲間にも伝播する」というものである)
つまり、歌に対する欲求や不便さがある一定の水準まで高まったことで、まったく別の場所にありながら、同じような「創意工夫」が生まれたように思える。
「通信カラオケ」誕生の秘話も面白いし、「カラオケ」音楽をどのように作っているのかという話も興味をひかれる。
「カラオケ」の曲は音楽会社が提供しているものばかりと思っていただけに、「耳コピー職人」と呼ばれる人たちのすごい才能に驚かされる。
河島英五の『時代おくれ』という歌にこんな歌詞がある。
「マイクが来たなら 微笑んで/十八番をひとつ 歌うだけ」。
この心境わかる人も多いのではないだろうか。
でも、この歌、私の十八番だから、歌わないで下さい。
◆この書評のこぼれ話はblog「ほん☆たす」で。
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通信カラオケのmidiファイルが、楽譜なしで曲を聴くだけで採譜よろしく書き取られて作成されているというのにびっくり。そんなアナログな作業で作られていたとは。インターネットが普及する前の電話回線の時代から、どうやって音楽データを送って再現したのかといった工夫の歴史も、思いがけない企業が絡んだりして興味津々。
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参考URL:
ギークなお姉さんは好きですか 通信カラオケの発明者はとんでもないギークだった!!
http://lovecall.dtiblog.com/blog-entry-112.html
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通信カラオケ エクシング ブラザーの子会社
ブラザー ソフトの販売 TAKERU を利用 JOY-SOUND
安友雄一
MIDI musical instrument digital interface Roland
梯郁太郎
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2011/4/5読了。
カラオケの発明者は10人以上もいる。それは、様々な人の努力によっていくつかのステップを乗り越えて実現ものが今のカラオケの形であることを意味する。
初めてカラオケ機器を作った人、それを商業化した人、カラオケボックスを作った人、音楽をデータ化する規格を定めた人、通信カラオケの原理を作った人がそれぞれにいる。1つ1つは大きいものではないが、それらが集まって音楽業界での世界的大発明となった。
そして、その中で誰一人として、金銭や名声の為に特許を取得した人はいない。
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[ 内容 ]
世界中の音楽はもちろん、生活スタイルまでも変えてしまったカラオケ。
その成り立ちを調べ始めた著者は、次々と意外な事実を発見する。
これまで伝えられていなかった「真の発明者」の存在、カラオケボックスが岡山のうどん屋から生まれた背景、原子力博士が通信カラオケを開発した事情…。
音楽を愛し、創意工夫を欠かさなかった男たちの情熱とアイディアが結実するまでを描く。
カラオケの正史にして決定版。
[ 目次 ]
序章 日本人はなぜ「聴く」より「歌う」のが好きなのか
第1章 「カラオケの発明者」になりそこねた男
第2章 カラオケボックスを考案した弁当屋のおじさん
第3章 原子力博士はなぜミシン会社で通信カラオケをつくったのか
第4章 音源づくりの耳コピー職人は自宅作業をしていた
終章 日本人はいつから人前で歌うようになったのか
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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カラオケの歴史という題材もさることながら、著者の読者を引きつける筆力によるところも大きい。新聞記者出身、実力がある。
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新技術は、個人の努力から形成されることが多いと聞く。
カラオケの成立においても、何人かの個人の努力の一端が、本書に記載されている。
大手企業は、試作のための費用は許可しても、製品として販売する許可はなかなかしないとお聞きします。
会社の方針と矛盾しないように、自分の作りたいものを作っていく、技術者の魂、芸術家のはしっくれの生き方を見る。
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カラオケは、1)カラオケ装置 2)カラオケボックス 3)通信カラオケという三段階の発明を経て、世界中の文化を変えたのだが(色んな意味で。普通アジアでKARAOKEといえば風俗)、そのことはあまり知られていない。
初めて読むことばかりだが、ほとんど体験していることなので非常に面白かった。
特に通信カラオケが、ブラザーのソフトウェア自販機「TAKERU」を「インフラ」として活用し作られた秘史が凄まじい。
「TAKERU」自体は商業的にはほぼ失敗で、撤退を余儀なくされていたのに、その技術者の先見により「カラオケの音楽情報(MIDIデータ)の中継サーバ」として変更され、会社の幹部も知らない内に力を発揮していた、という。
その「TAKERU」を中継サーバにして作られたカラオケ装置が「JOYSOUND」だったが、他社の追随を許さなかった。
「JOYSOUND」よりも先にリリースされ売上を挙げた他社の通信カラオケ装置もあったが、人気になると日本中からひとつのサーバに音楽データ配信の要求が集中し、容易にダウンしたり、極端に遅くなり1曲ダウンロードするのに1時間かかったりしてしまった。
中継サーバを置いていた「JOYSOUND」にはそういうことは起きなかったため、高い人気が長続きした。
また、カラオケの音楽は、歌手がうたっている曲からボーカルを抜いただけでは素人は歌えないので、耳コピして一から作っているというのは驚いた。
思わぬ収穫の一冊だった。
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身近にあるカラオケの起源をあなたはご存知だろうか?
カラオケの創始者は実は特許をとってなかった!?あのカラオケ音源はすべて耳コピだった!?
驚きの事実とともに仕組みをしらずに使っていたカラオケの歴史を垣間見れる、それは非常に興味深い内容の一冊です
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逗子図書館で読む。この図書館の新書コーナーは充実しています。蔵書数では、この図書館よりも充実している図書館もあるでしょう。しかし、一箇所にまとまっているので、便利です。正直、期待していませんでした。予想外の面白さです。いつものことですが、著者の文章は読みやすいです。興味を持った点を整理すると、以下のようになります。第1に、カラオケの発明者はいない。発明者らしき人は複数存在する。その定義により、誰が発明したのかが異なる。そして、ビジネスの成功は技術だけではない。ここら辺が面白い。第2に、通信カラオケの開発プロセスが面白かった。通信ゲームソフト販売システムの応用なんですね。かなり無茶苦茶なことをやっても許されるんですね。名古屋企業の底力を感じました。最後に、カラオケボックスも偶然なんですね。再読の価値はありませんが、本当に面白い本でした。
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カラオケの発明は、世界に誇る日本の発明かもしれないが、その発明者は何人もいると言われている。
そんな疑問を多くの人にインタビューの形で正史を造ろうとした試みの本。秘史とはあるが、どこかで聞いた話が多いが、インタビューを通じてカラオケに携わった人の苦労がわかるような本である。
結局のところ、「流し」と呼ばれる人たちが全盛時代の頃、機械で演奏するハード部分と曲のソフト部分を誰が発明したのか、コンテナでカラオケを始めたのは誰か、通信カラオケという形はどのようにして始まったのか、今も曲を作る人たちの現状という4章をベースにコラムで関係の深い人や話を紹介している形である。
カラオケといえども侮りがたし。
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2008年刊行。◆カラオケの形成・発展史について、ハード・ソフト両面からリサーチしたもの。原子力研究の博士が、ミシン会社で、通信カラオケを一大産業にまで興隆させたところは興味深い。特にその某ミシン会社の経営陣のよい意味でのずぼらさに技術発展・新産業構築のヒントを見る思いだ。また、打ち込み職人の職人ぶりにも驚嘆。そして、本書で紹介されている人々が、特許等で自分のビジネスモデル・技術を囲い込みしていないが、ここに良きにつけ悪しきにつけ日本の特徴がうかがい知れよう。
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ブラザーのTAKERUがジョイサウンドの布石になって、技術者のアンダー・ザ・テーブルな仕込みによってバックボーンを支える拠点となっていくくだりは胸熱。設置店の負担が最小になるようにアナログ回線で夜間オートパイロットする巧みな仕込みとか。