一次情報に当たれ
2005/02/22 10:29
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投稿者:高杉親知 - この投稿者のレビュー一覧を見る
何気なく手に取ったが、なかなかの掘り出し物だった。分量が少ないのが残念である。書名に出ている「エコノミック・アニマル」は、かつて日本の経済力に対する批判の言葉として、新聞やニュースでたびたび目にした言葉であるが、英語では批判の意味合いは無いという。驚いて英語辞書 (The American Heritage) で animalを調べてみた。すると確かに、語義の一つに A person having a specified aptitude or set of interests (特定の能力や関心を持つ人) とあり、例として、音楽の天才を musical animal と評した文が挙げられている。そうだったのか、悪い言葉ではなかったのか。つまり economic animal とは経済に優れた人という意味なのだ。
また、日本人は「ウサギ小屋」に住んでいると指摘したヨーロッパの報告書が話題になったことがあった。狭くて汚らしい印象がある、とてもいやな言葉だ。ところが元のフランス語では、政府系公団が作る中低所得者用の画一的なアパートのことを、ウサギ小屋を意味する cage a lapins と呼ぶのだそうだ。つまり元の文は日本人は都営や市営のアパートに住んでいると言っているだけなのである。「ウサギ小屋」は単なる誤訳なのだ。
著者も指摘しているが、日本人は批判されるのが大好きなのだろう。褒め言葉は忘れられて、批判ばかり流布してしまう。それにしても、当該言語の能力を持つ人が一次情報に当たることがいかに大事なことか。この当たり前のことが、この国のマスメディアではあまり顧みられず、誤訳の可能性がある二次情報を垂れ流しているのは情けないことだ。
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投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
結構多い。だって、言葉は単純に置き換えできるものではないから。伝言ゲームのように、もとある言葉だって変化する。そんな楽しい読み物です。
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英語の誤訳についていろいろと書いてある。日本人の評価について自虐的にならずに公正に評価すべきだとしている。
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褒めてもらった言葉なのに誤訳され批判的な意味の言葉として定着しやがて一人歩きして別の地域にも伝わることになります。こうなってしまうと訂正するのが難しくなりいつまでも間違った意味として使われてしまいます。
そう考えると翻訳し情報発信をした人の責任は大きいです。誤訳されたため批判的意味となってしまった言葉が本書によりその言葉本来の意味を取り戻したことは大変意義のあることです。本書を読まなければ誤訳・誤解について考えずに一生間違った意味のまま使っていました。
意味は知っていたつもりだけど本質的意味を勘違いしていた言葉がグローバル・スタンダードです。この言葉は世界標準という意味で多種多様な著作物の中で頻繁に登場しています。状況を表現するのにとにかく便利な言葉で響きも格好良いです。
世界標準という意味で使われている言葉が和製英語で外国では通じないという事実に驚きました。
演説などでこの言葉を使っても日本人以外には意味が通じてなかったのです。
この言葉を使って聴衆にインパクトを与えようとしても外国人はしらけてしまうだけということになる。
外国人にグローバル・スタンダードという言葉を使ったことはないけど
今後恥をかかないためにも意味を覚えておいた方がよさそうです。
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まさにタイトルのとおり、テーマは「誤訳」。いいですねぇ、ウサギ小屋発言は世紀の誤訳だった!……なんてかなり刺激的で。けれどいきなり自分の留学体験を回想していい経験だったとか語られてもなぁ。「読み飛ばしてもらっても構わない」と書きながら一章まるごとそれなんだもの。編集方針としてどうなのよ。
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[ 内容 ]
マッカーサーの「日本人は十二歳の少年」という発言や、「エコノミック・アニマル」「ウサギ小屋」といった言葉は、日本人をネガティブに評する際に使われる決まり文句である。
しかし、実はこれらの言葉に批判的な意味はなかった。
日米開戦のきっかけになった誤訳、ダイアナ妃の招いた誤解、世界には通じない「グローバル・スタンダード」の意味等、近現代史のさまざまな場面での誤解、誤訳を紹介する。
[ 目次 ]
第1章 「日本人は十二歳」の真意―この一言で、マッカーサー元帥は日本人に嫌われてしまったのだが…。
第2章 「エコノミック・アニマル」「ウサギ小屋」は悪口か―二つの言葉には、日本への意外な高評価が隠されていた。
第3章 アーネスト・サトウと山下将軍の無念―外交の場では小さな勘違いが致命傷になる。そこに悪意はなくても…。
第4章 暗号電報誤読の悲劇 日米開戦前夜―悪意に溢れた米国側の「誤訳」が、日米開戦のきっかけだった!
第5章 漱石の鬱屈、魯迅の感動―イギリスで屈辱を味わった文豪と日本の人情に触れた文豪。
第6章 ダイアナ妃とブッシュ・シニアの文法―世界を揺るがせたプリンセスの三人称。大統領が見せた言語学の知識。
第7章 存在しない「グローバル・スタンダード」という言葉―政財界がお題目にした「基準」は、日本でしか通用しない言葉だった!
第8章 ブッシュ・ジュニアの国連演説―単数か複数か、それが大問題だった。イラク戦争を巡る駆け引き。
第9章 騒動の中心はたったひとつの言葉―「うすのろ」「強情者」呼ばわりで大統領も首相も激怒。
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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へぇーっ、っていうことが沢山あり読んで損はないと思います。著者は(元?)外交官なので、英語には精通されているはずですが、その著者にしても「英語は難しい」と言わしめています。名詞の countable, uncountable、冠詞、英語と米語の違い、王室英語など話題も多彩で、かつ読みやすい。英語勉強しなきゃ。。。
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小泉政権時代、某省の官僚が「全面的民営化」とすべきところを「全面的に民営化」という文言にしたことで意に沿う法案を作ることに成功したという話をどこかで聞いたことがある。
本書でも同じように、単数形と複数形の違いといった細かな表現の違いで歴史が動いた、あるいは動きかけたケースについて、丁寧に原典をひきながら論じている。
それと並んで重要なのが通訳にまつわる話で、通訳が意味をねじ曲げるようなことが起きてしまったケースを取り上げている。語学力をあなどってはならないと肝に銘じた。
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私もしっかり翻訳せねば!
翻訳者(ときには読者)の性格や心理から思わぬ誤訳が生まれてしまう事を指摘している。日本では、マッカーサーの「日本人は12歳」発言を筆頭に、外国人の日本に対する発言を悪く誤訳する。その背景には日本人の国際社会での自分の立ち位置に関する自信のなさ、コンプレックスが表れている。
さらに英語では冠詞の有無で意味が大きく異なってしまうことや、自分のことを三人称で話すことから読み取れるニュアンスなど、英文法や語法に関するトピックも興味深い。
また、これだけ英語に造詣の深い著者が、moronという単語を知らず、また周囲の英語熟練者も知らなかった、でも英語ネイティブなら誰でも知っている単語であることに驚いていたエピソードが印象的だった。私にとっては、高校留学時にまっさきに耳にした単語の一つだった。
今思うと、現地で覚えた単語って使いようのない差別単語ばかりだったなぁ。
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英語の知識がある程度ないと難解な本。
世界しに残る重要な事件が、翻訳の誤解によるものがこんなにたくさんあることを知り、面白く感じると同時に少し怖くもあった。
タイトルにあった「エコノミックアニマル」が実は褒め言葉だったことについては筆者の想像の域を出ていないのが残念だった。
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さすが元?外交官英語の表現は、ちょっとしたことで全く意味が違ってくるんですね。こういった微妙な違いが、勘違いを生むということが、面白かったです。
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“金の亡者”と同様なイメージと思われがちな「エコノミック・アニマル」という言葉は、日本人を侮辱するつもりで使われたのではなく、むしろ「経済面で非常に優れた才能がある」という褒め言葉だったという。
タイトルになった「エコノミック・アニマル」を始め、「ウサギ小屋」「12歳の少年」など一般に日本人を揶揄していると捉えられている言葉の真意や、翻訳や通訳のミス(あるいは故意の誤訳)によって意図がねじまげられた事例を紹介している。
薄い新書なので1日あれば読了できる。著者は30年の外務省勤務の大半を海外で過ごした人であり、特に英語の微妙なニュアンスによる印象の違いには敏感のようだ。前半は興味深いエピソードが多く読みごたえがあるが、後半はやや著者の回顧録のような内容になっているのが残念。