誰もがほかならぬ人を探している
2020/10/09 22:14
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投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の明生は、有名大学を出て社会的地位もあるいわゆる華麗なる家族に囲まれて育った。その中で兄弟に劣等感を感じて育った明生は、断りもなくこんな自分を世に送り出した何かに抗うべく、“人生は復讐だ”と考え日々生きていた。そんな明生の前になずなという容姿端麗な女性が現れ、家族の反対を押し切り結婚するのだが‥‥。
もう1つの物語「かけがえのない人へ」では、結婚を前に以前付き合っていた黒木との関係を続けながら本当にこの人が結婚相手でいいのかと考えるみはるという女性が出てくる。
本書では、ベストな相手を見つけた時には全員その証拠を手に入れると書かれている。
この2作に共通するのは、何かしらの証拠は掴んでいるのにそれに気づかずに回り道をしたり、相手を失ってしまうことだ。
ベストな相手の証拠を手に入れたとしてもそれが証拠だとはなかなか自分で感じにくいもので、案外あとになって分かるものなのかもしれないと思った。
この2つの物語では愛する人や、結婚について色々と考えさせられ、自分自身のほかならぬ人について自分なりの証拠について考えるきっかけにもなった。
また、“結婚なんてものはとりあえず今の自分に○と思ってるときにするもんだ。””自分なんてあってもいいが、なくてもいい。その程度でも、人間というのはちゃんと生きられるようにできているのではないか?“などなど心に残る言葉がこの本にはたくさんつまっていた。
そして何より文庫本では、編集者の方が書かれた解説が素敵なエピソード満載で、キラキラした著者の言葉が詰まっていて、白石一文という人間が私は心底好きになった。著者のファンとして他の作品もこれからどんどん読んでいこうと思う。
渡辺淳一も認めた恋愛小説
2023/11/17 07:18
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第142回直木賞受賞作(2009年)。
受賞作『ほかならぬ人へ』は単行本のページ数でいえば180ページほどの中篇小説で、単行本にはもう一篇『かけがえのない人へ』と、表題作とよく似たもう少し短い作品が収められている。
直木賞は『ほかならぬ人へ』という単独の作品に与えられたのではなく、もう一篇も収めた一冊の中篇集が評価されたようだ。
この時の選考委員の一人である宮部みゆき氏などは二つの中篇の登場人物である女性をさも同じ人物であるかのように読み違えをしたことに陳謝しているほどで、なるほど、よく似たタイトルをつけると、さすがに著名な作家であっても読み間違えることもあるのかと、微笑ましく感じた。
ただ、二つの作品はタイトルこそよく似ているが、作品の構造はまったく違う。
やはり表題作である『ほかならぬ人へ』の方が少し長いだけ構造が複雑で、その分作者が描こうとした愛の世界に広がりがでたように思う。
主人公の明生は資産家で名家の三男。兄二人の出来がいい一方で、明生は自身生まれそこないとずっと思いつづけてきた。
そんな明生は一挙に魅かれた女性なずなと結婚するが、彼女にはずっと思い続けた男がいて、その男が離婚したと聞いたなずなは明生から離れていく。
失意の明生を救ってくれたのは、会社の先輩であった東海さん。次第に東海さんに魅かれていく明生。
それだけの関係でなく、そのほかいくつもの恋愛模様が描かれている。
恋愛小説といえば、やはりこの時の選考委員の一人渡辺淳一氏の評価が気になるが、「この作品は久々に男女関係を正面から描いたもの」と高い評価となっている。
まさに渡辺淳一氏も認めた恋愛小説だ。
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考えた以上に面白くって一気読み。
なんというか、自分の意思とは反対に無意識が体が自然と反応する人が「かけがえのない人」や「ほかならぬ人」なのかなぁと読んでて感じた。
形や状況は違えども、失う前に気づいて良かった気もするし、最後が失ってしまうので、気づかなかった方が良かったのかと考えてしまう。
個人的に解説が面白かった。他の作品も読み進めたいと思う。
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白石一文著。直木賞受賞作品ってことで大量に平積みされていた。恋愛ものが2話入っている。『男女間の恋愛を突き詰めた傑作』という触れ込みだが、大体は"本能に忠実な女性"の恋愛感情を語っている。
面白かったですが、何と言うか、「わりとよく聞く話」って感じでした。本能と文化っていう相反しがちな2つを両方追って破綻する話。結婚は文化、恋愛は本能。結婚という文化を受け入れるなら、その文化に反する本能は制する覚悟を持たなきゃいけない。それが出来ないのなら結婚という文化に関わるべきではない。それだけのことかと。
あとこの人の作品、『人が死ぬ』というイベントを安易に使い過ぎる気がする。そりゃドラマを生むって意味では楽だけど、なんかリアリティが無い。人はそんな狙ったようなタイミングで死なないよ、って思ってしまう。
まぁそんなん言うても、最後まで楽しく読ませて頂きましたが。笑
「結婚なんてのは、とりあえずいまの自分で○と思ってるときにするもんだ。俺やあの女みたいに何かを変えようとか、違う人間になろうとか思ってしちまうとろくなことはない。そういうことだ。」
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白石一文らしい作品。
以前の作品のどれかに似てる。「一瞬の光」だったかなあ。
誰がベストか、どれがベストの選択か、そんなこと誰にもわからない。
若くしていくつかの選択を迫られた明生。
東海さんにたどり着いただけでも救いだと思うべきなのか。
白石作品では登場人物の誰かが病気になるね。
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「ほかならぬ人へ」
誰がみても別れた方がよいと思えるのになかなかなずなを切れない。やっとこ東海さんと結ばれるのに幸せは長く続かない。そういう不条理さこそ現実だと思う。
「かけがえのない人へ」
黒木は「初めて」を与えてくれる。水鳥にはない。それが総てではないか。
形式的に世間のルールに適っていても幸せになれるとは限らない。つまらない人間と付き合っても本当の意味で幸せにはなれないと改めて思わされた。
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やっぱり運命の人に出会うまで、間違った人と付き合ったら別れた方がいいよね。間違ってるってわかってるのに…別れたい
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いつもながら白石一文作品、登場人物が目の前にいるかのように実写的に文章に吸い込まれる。文体に肌が合っているんだと思う。ずっと読んできているので、「直木賞受賞作だから」とか「・・・にしては」とかの力んだ感慨は特にありませんが、「ここでおわり?あれ?」という突き放されたような読後感は残りました。映像化するとしたら東海さんは誰が演じるのがよいかな?
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宮川直実さんの解説が、すべてを語っている。
『見つめ合うべき二人がちゃんと見つめ合うという至極当然のことがこの世界でやなかなか実現しない』
この言葉には、思わずページの端を折りました。
わたしも「ちゃんとした組み合わせ」の人と出会えるといいなあ。
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20130203読了
東海さんいい女だな
「明生くんの赤ちゃんを産めなかったことだけが心残りかな。ごめんね明生くん」
この言葉にはぐっとくるな。これが愛だと言われれば確かにそうなのかなと思えるけど。じゃあ愛って何?信頼?許し?思いやり?
こんなことごちゃごちゃ考えるより、体は正直だってことを言いたいのかな。匂いだったりセックスの相性だったり。
白石作品の中では「どれくらいの愛情」と並んで好きな作品
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男性、女性それぞれの一般的な倫理観的には正しいとは言えないかもしれない結婚、恋愛のお話です。
目新しさはありませんがとても良くまとまって居てすっと心に入って来ます。
女にとって結婚は悪魔の呪いのようなもの
っという表現に共感しました。
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白石一文の直木賞受賞作です。普段は後書きは読んでも解説は読まないんですが今回ツイッター上でやたらと著者の白石一文さんが解説が素晴らしいとおっしゃってたので本編読了後に解説も読みました。この作品、4年前に単行本で一度読んで★3つで登録したんですが今回、解説も含めて★4つですね!解説も素晴らしかったんですが、「この世の全部を敵に回して」、「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」の流れで読んだのも良かった。
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東海さんも、黒木さんもいなくなってしまうとは、切ない…明生には幸せになって欲しかった。ベストな相手にめぐりあうのは難しいと思う。解説が愛情を込めて書いてあり、心に残った。
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非凡揃いの名門家族の中で、正しく平凡であり続けるという非凡さを持って生まれた末っ子の明生。
両親に反対されながらも、 キャバクラで知り合ったなずなと結婚し、幸せになる筈が、徐々におかしくなり始めます。
そんな中、上司の東海さんに色々と相談をするのですが、この東海さんが、とても素晴らしい女性なのです。
もう、読んでいる内に、次々とフラグが・・・。
東海さんの「いい匂い」は、きっと、明生がベストな相手に出会えたという証拠だったのでしょうね。
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最初のページから惹きつけられてすぐに読み終えてしまった。何だろう、うまく言葉にできないのがもどかしいが、違うけどわかるような、無かったけどあったような、かんじ。