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投稿者:黒猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
捜査官エーレンデュル・シリーズの二作目。一作目の「湿地」の最後の方でエーレンデュルと娘のエヴァ・リンドの関係に仄かな明るい予感を思わせる終わり方であったが、本作では更に悲劇と困難に満ちていて、エーレンデュルの苦悩は続く。淡々とした書かれ方で没個性的であったエーレンデュルの同僚達は今作では見せ場が多く人物像に深みが増し、次作が待ち遠しい気持ちにさせる。事件自体は住宅建設地で白骨が発見されたことから捜査が始まり、その過程もミステリとしては地味に思うが、DV被害者の妻と子供の様子が事件の長れに沿って丁寧に書かれていて、本作はミステリではあるけれども、DVとはどのようなものか縁のない環境下の人にとっては認識を知らしめる一冊にとして貢献しているのではないか。訳者後書きで、出てくる暴力に対して「~これを読んで模倣する愚かな人間が出てくるのではないかと不安になったことも。そしてこれを世に出していいのだろうかという問いが私の心に生じたことも。」とお門違いな迷いが書かれているが、模倣云々ではなく、現実として実際にこの小説以上に酷い現実を生きているDV被害者はいる。調べれば現実に起きてることが解る筈だが、この訳者のような多くの人々の為にも、理解を広める為に筆者は書いたのだろう。ただ一作目の「湿地」と違って、特に母子が可哀想で繰り返し読みたい本ではない為星4つとした。
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何から書けばいいのだろうか。アイスランドが舞台の警察小説。『湿地』に続く邦訳、第2作。
アイスランドってやはり寒いのだろうか?そう思ったのは、描写力と、物語が見事にこの土地の空気まで感じられるからで、~中断
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”家庭内暴力”を題材とした小説。
一見ハッピーエンドのようにも見えるが(暴力夫が死んで良かったと思う)、誰をもそこから解放されていないことを考えると、”暴力の連鎖”の罪深さを思い知る。苦しい小説でした。
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面白いー。シリーズもっと読みたし。
柳沢さんの翻訳が読みやすいのかしら。
他の作品も読んでみるかしら。
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内容(「BOOK」データベースより)
住宅建設地で発見された、人間の肋骨の一部。事件にしろ、事故にしろ、どう見ても最近埋められたものではない。現場近くにはかつてサマーハウスがあり、付近にはイギリス軍やアメリカ軍のバラックもあったらしい。住民の証言の端々に現れる緑の服の女。数十年のあいだ封印されていた哀しい事件が、捜査官エーレンデュルの手で明らかになる。CWAゴールドダガー賞/ガラスの鍵賞同時受賞。究極の北欧ミステリ。
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三つのパートから構成されている。人骨捜査とエーレンデュルの娘の災難は現在のお話。その合間に挟まれる、十数年前のとある家族のストーリーが、本作品の屋台骨をがっちりと支えている。人骨捜査もエーレンデュル・ファミリーの話も気にはなるが、とにもかくにも、この家族の歴史が凄まじく陰惨で、序盤は怒りを通り越して吐き気を催すほどだった。
“暴力”という表現は、それを経験したことのない人たちが使う言い回しだ──という台詞に思わず背筋が寒くなった。肉体的、精神的に破壊される様が淡々と繰り返し描かれている。目を背けたくなる心情に反比例するかの如く、なぜかページを繰る手は止まらず、気付けば一気に読み終えていた。強さと弱さ、惨さと慈悲、そして冷酷と優しさ、真逆の印象が秒刻みで、しかもそれぞれMAXで襲ってくるので、精神的にかなり翻弄されるが、読後感は悪くない。余韻は尾を引くが、一定のラインで折り合いをつけることで、沈静化するはず。
ミステリ度は低めたが、鋭角に食い込んでくる辺りに、シリーズとしての確実な成熟を実感した。やっぱり柳沢さんの訳だと安心するのかしら。
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思わずページを捲る手を止めたくなるほど悲惨な家庭内暴力。終戦直後の悲しい物語の結末は現代で発見された白骨とどう繋がっているのか。一応どんでん返しもあり、ハッピーエンドなのだが、全ての結末が読者の望む方向ではない。家庭内暴力という言葉が認知される前の話としながらも現代への警告という意図が多分に感じられた。
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アイスランドの住宅建設地で発見された人間の肋骨の一部。過去を遡り真実を明らかにしようとする。
過去の事件のため、ストーリーの展開はスピーディーではなく登場人物の状況や内面の方が重点的に描かれる。それでも決して退屈ではなく物語にどんどん引き込まれて行き、派手さは無いが面白かった。まだまだシリーズがあり未翻訳なので次が楽しみ。
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人骨発見の過去を捜査する軸、エーレンデュルと娘の確執を描く軸、そして人骨と繋がるけれど60年前の不幸なDV一家の物語の軸。それらが交差しながら、壮大な愛の物語を奏でている。それぞれの人物がそれぞれの問題を抱え生きているのだという重さが過不足なく書かれ、単なるミステリーではなく(もちろんミステリーとしても最後まで面白く)重厚な歴史小説を思わせる。このタイトル『緑衣の女』も含めて訳のセンスがいいと思った。
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アイスランド発のミステリシリーズは家族をテーマにしている。
ストーリーの中心となる家族だけでなく、刑事の家族についても描かれる。
そのストーリーはやや陰惨にすぎるようで、アイスランドの天候には晴れが無いんじゃないかと思えてくる。
しかし最後の1ページでみごとに雲間から光が差し込む。
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捜査官エーレンデュルの過去と、彼らが追う事件の進展を絡めながらストーリーは進んでいく。
哀しくて、辛い場面もあるけれど作者インドリダソンが伝えたいと思う優しさも感じ取れる。
訳者・柳沢由実子さんの読みやすい訳文とあとがきに寄り
ストーリーを深く知る事ができる。
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北欧・アイスランドを舞台とする社会派ミステリである。
アイスランドは火山と氷の小さな島国、人口は30万人ほどである。ミステリ小説王国であるイギリスの後塵を拝し、この著者以前にはほとんど国産ミステリはなかったという。
著者によるアイスランドの風土を盛り込んだミステリ・シリーズは爆発的な人気を得て、すでに12作が発表されているという。うち、邦訳は、シリーズ3作目の『湿地』に続き、シリーズ4作目の本書が2冊目である。2003年ガラスの鍵賞(北欧推理小説対象の文学賞)、2005年CWAゴールドダガー賞(英国推理作家協会が主宰する最優秀長編作品に与えられる賞)をダブル受賞している。
シリーズの主人公となるのは、やもめの捜査官エーレンデュルである。結婚して2児の父となったが、妻との間がしっくりいかずに離婚。元妻には激しく恨まれ、息子・娘とは疎遠なままとなった。
エーレンデュルとは「異邦人」の意だという。事情があって小さい頃に田舎からレイキャビクに出てきた彼は、いまだにここを自分の居場所だと思えずにいる。決して優等生ではなく、スーパーマンでもない。自らも問題を抱えるいささかくたびれた捜査官が事件に向き合うところが本シリーズの魅力の1つだろう。
アイスランドの地理や歴史が織り込まれている点も、物語を読み応えのあるものにしている。
さしたる産業を持たない国が、戦時に英軍・米軍の駐留で賑わい、やがて近代化の波に揉まれていく。厳しい自然の中で遭難する失踪者も珍しくない気候を背景に、そうした変遷が綴られていく。
物語の軸は主に3つである。
住宅建設地で発見された古い人骨を巡る捜査。
妊娠中であるのに麻薬中毒である娘とエーレンデュルの間のわだかまり。
そして、時代は不明だが、激しい家庭内暴力に耐える女性とその子どもたち。
3つのストーリーが巧みに織り上げられ、終末へと向かっていく。
ミステリ部分のプロット自体はあっさりした感じである。派手などんでん返しはなく、犯人との息詰まる対決があるというタイプでもない。
著者は、スリルやサスペンスやトリックよりも、「なぜ」「誰の」骨が「どのような顛末で」埋められたのかを丁寧に追っていく。骨を取り出す担当となった考古学者が急がずに発掘を進めていくのに合わせるように、著者の分身のようにも思えるエーレンデュルも時間を掛けて真相に迫っていく。
犯罪を糾弾するのではなく、弱者を深く見つめようとするまなざしが印象的である。
人生どうにもならないこともあることを知る世代、特に男性読者には響くものが多いように思われる。
主要人物の出産直後の行動にいささか無理が感じられたり、各登場人物の視点転換がときにぎくしゃくした感じを受ける点は、瑕疵とまでは言えないが、個人的には引っかかりを感じた。
しかし、暴力や貧困、家庭の不和といった問題にじっくり取り組み、腰を据えて描いていく本シリーズは、機会があれば別の作品もまた読んでみたいと思わせる魅力を持っている。
*登場人物の1人、ソルヴェイグという名を聞いて、「ペール・ギュント」を思い出した。旅に疲れたペール・ギ��ントに優しく子守歌を歌う女性。北欧ではよくある名前なのだろうか。
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アイスランドは人口三十万人ほどで、殺人事件が年に2、3件しか起こらない国。アイスランド人作家のアーナルデュルのエーレンデュル主人公にした警察小説。捜査を推理と科学面で解決に導く類ではなく、まるで探偵の様に事件関係者の一人一人に話を聴きに行き、過去に起こった凄惨な事件の事実を一つずつ結び付けていく作風。
警察小説、探偵小説の主人公たちは例外ないというくらいに孤独に慣れ過ぎている帰来がある。エーレンデュルもその一人で、仕事だけをしている様な中年男だ。彼のこのくたびれた感じ、その癖、事件に対しては頑固とまではいかないが(若い部下のシグルデュル=オーリなんかはそう思ってるかも知れないが)一つも省かずに一つ一つを抑えておかずにはいられない固さを持っている。
彼のこの固さと言うのがどこからくるのか、それが意識不明に陥った、怒鳴り合ってばかりだった娘に語りかける物語として語られる。
最後の数ページで、事件関係者の一人であった、子供のまま成長を止めた老人シモンに相対する時に、吹雪の中で手を離してまった弟の明るさ・朗らかさを見たのだろうかと思うと、心が揺り動かされて仕方なかった。
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ミステリーとしてめちゃめちゃ面白い。
地中で発見された白骨が少しずつ掘り出されていくのと平行して、過去の事件も少しずつ暴かれていくという上手すぎる構成。
でもそんな構成の上手さなどどうでも良いくらい、深み凄みのある人物描写、物語世界。
これを読んでいるとき、「あまちゃん」も見ていたんだけど、正反対のトーンに見える2つの作品は、実は同じテーマを持っていると思う。
故郷や親族から切り離され都市に住む人間の転落、家族の崩壊というものだ。
「あまちゃん」はその崩壊をどうしたら再生できるのか考え抜き、天野アキという解答をクドカンが導き出した。奇跡の存在だ。
緑衣の女はそんな奇跡の存在がいないリアルな世界だ。
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北欧ミステリーというので、フォンエアーの中で読もうと思ったけれど、重い話だったのでやめた。読み終わって、新ためて重い話だった。