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投稿者:にい - この投稿者のレビュー一覧を見る
中篇4作が入った一冊だが、どれも傑作と呼べる出来
作者の小川一水氏は最近力をつけて来ている注目のSF作家だが、大作を狙いすぎて粗筋のように大きく端折ってしまっている感があり、「いま一歩」と思っていたのだがこの一冊で大きくイメージが変わった
最近多く出回っているキャラクター物とは一線を画す、本当に「良いSF」である
紙の本
丁寧な、いい仕事です。
2007/03/26 15:57
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
SFやファンタジーは自由に世界を設定できるだけに、どれだけ無理なく、しっかりと世界を創ってあるか、が作品の大事な要素である。著者の作品はこれが初めてなのだが、この一冊におさめられた作品はどれも、その設定の基礎が丁寧に良くできている、よみごたえのあるSFとして満足感を与えてくれた。
表題作品の「老ヴォールの惑星」に登場する異星の生き物はなかなか想像するのが難しい。表紙カバーのイラストに随分イメージを助けられたが、独創的な生き物である。
理想を目指す若さが先走るようなところもある「ギャルナフカの迷宮」。作者は1975年生まれということであるからまだ30代。それを考えれば「若さのさわやかさ」にも感じられる。
おさめられた4作品のなかでは「漂った男」が一番楽しめた。人はなにを頼りに生き続けるか?そんな問題をからっとした調子で書いていく。軽いタッチだがじんわりとした味わいもある。孤独になった主人公がちょっと狂いかける場面などは真に迫るし、引き離された男女の心の複雑な動き、男同士の心の繫がりもいい描かれ方をしている。
著者の既著を調べてみたら、派手な表紙の「若・少年少女」向けのものが多いようであるが、この一冊は広い年代層が満足できるものといえるだろう。今は若い味のさわやかさがまず感じられるけれども、今後さらに熟してくると違う味もしますよ、という期待を感じる。中年を過ぎたら渋い味を出してくれそう、と。いい仕事、期待してます。
紙の本
日本のSFで久々にワクワクした
2018/05/02 14:09
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投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
中編4作品からなる一冊です。
4作品どれも甲乙付け難く素晴らしいものばかりでした。
初めて氏の作品に触れた「コロロギ岳から木星トロヤへ」では、少し緩いような、物足りなさを感じたのですが、本作には完全にやられました。
「ギャルナフカの迷宮」
では人の社会性の妙を、興味深い設定の中で淡々と描いて読むものを引き込み
「老ヴォールの惑星」
ではハードSF的な世界観をわずか50ページほどの長さにも関わらず、十二分に展開し、
「幸せになる箱庭」
では異星知性体とのファーストコンタクトから、意識と自我のありようをとてもワクワクする物語として描き
「漂った男」
では孤独ということを本当に真剣に考えさせられる、どこかほのぼのしたユーモアも感じさせながら最後には胸に迫ってくるものがある珠玉の作品だと思いました。
「老ヴォールの惑星」は2003年SFマガジン読者賞
「漂った男」は第37回星雲賞日本短編部門賞受賞
本作品はベストSF 2005 国内編第1位を獲得と内容の素晴らしさに相応しい評価を受けているようです。
私にとって小川氏は、ネットで少し調べてみるとSFというジャンルの中でもかなり多様で幅広い系統の作品を書いておられるようなので、これから是非とも全作品を手に入れて読んでいきたい作家さんになりました。
紙の本
2006年星雲賞受賞
2017/01/12 10:30
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
「漂った男」では、惑星全体が栄養で満たされた海を遭難する奇妙な世界だ。監獄よりも埋蟄よりも深い孤独を表現できるのは、著者が人の心を信じているからなのかもしれない。
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「群青神殿」しか読んだことがなかった。というか、読めなかったというか・・・おもしろいとは思いつつも、ただ一点ヒロインのあまりにも「萌えキャラ」なたたずまいに拒絶反応が出たというのが正直な感想。今回五つ星なのは拒絶反応がおきなかったからってことでしょう。なにせ、話はべらぼうにおもしろいのだもの。
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■「導きの星」や「第六大陸」は読んでたのですが、なんとなく手が遠のいてました。これは長編ではなく中短編集。100頁デコボコのが三つとその半分の表題作で計4編。
■地下迷宮に投獄された男を描く「ギャルナフカの迷宮」。
木星型ガス惑星の知的生物を描く表題作。
異星人とのファーストコンタクトかと思いきや…「幸せになる箱庭」。
大地のない惑星に着水、延々と救援を待つ「漂った男」。
■短編よりアイデアを充分に膨らませられて、長編のようにキャラクターに左右されない中編てのは好きなので、その点、大満足。
いやホント、「漂った男」なんて、このシンプルな設定で飽きさせませんから。
■今年は小川一水を掘り進めようか、と思わせる一冊。
引き込まれます。
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http://mit56.way-nifty.com/dawn/2005/08/post_6c62.html
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期待して読んだのですが、ハードSFファンとしては方向が違っているので残念ながら厳しい評価に成ってしました。
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最近読んだ国産SFでは一番のお気に入り。この作品集で感じたのは景色、頭の中に浮かぶ風景です。幸せになる箱庭以外の3編は首題とは別に私に新鮮な風景、景色を見せてくれました。全編を通じて結末には大きな不満がありますが、風景の点では楽しませてもらえました。特に「老ヴォールの惑星」と「漂った男」の2編は楽しめました
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小川一水、初の短編集。
四篇ともどれも趣きが異なっていて飽きが来ない。
ギャルナフカの迷宮
反社会的な政治犯として一枚の地図とともに地下迷宮に落とされた元教師テーオ。地下には人数分の水場ときのこみたいなものが生える餌場しかない。生き残るために水場と餌場の記されている地図の奪い合いが起こり、人々は疑心暗鬼になっていた。一部の人間は、食べ物を求める欲望を抑えきれずに、野蛮な生肉食いと化していた。テーオはこの無秩序な迷宮に、文明的な社会を作ることを決意した。
閉鎖された厳しい環境下での生への渇望がナマナマしくてエグい。嫌いじゃないけど。
老ヴォールの惑星
巨大な海の惑星。その表面に生きる知的生物。体から光を発することにより、情報を種全体で共有することができる。多くの知識を溜め込んだ長老ヴォールは若者に、空の星のひとつに彼らの惑星サラーハに似た世界がある事を教えてその生を終える。サラーハに危機が迫ったとき、残された彼らは老ヴォールが発見した星を探し出そうとする。
この本のなかではやっぱり表題作であるこの短編が好き。地球起源の生命とは根本から異なる知的生命体の不思議な生活様式の描写に惹かれる。
幸せになる箱舟
火星まで生活圏を広げた人類は、木星で地球外知性体によって作られた自動機械を発見した。ビーズと呼ばれるようになったそれは、木星の大気を採取し彼らの母星に向かって超高速で射出していた。このままでは木星の重量が変化し、近い未来太陽系の惑星の軌道がずれていってしまう。人類はビーズを作り出した知性体クインビーと交渉するため、専門家達を特使として送り込んだ。危険と困難を極めると思われたそのミッションは、予想に反してとんとん拍子にことが運び、うまく行き過ぎることに疑問を抱いた時・・・。
人類を危機に追い込む地球外生命体による太陽系への干渉+人間の望んだ夢を見せてくれる未知の星。辛めに言うと、既出のアイディアを二つくっつけただけかも。
漂った男
未開の惑星の偵察任務中、タテルマの乗った機は墜落。海しかない巨大な惑星パラーザで漂流してしまった。救助を要請したが、広大な面積のため惑星のどこを漂っているのか特定できず、発見は絶望的だった。栄養価の高い海の水と空間距離に影響されないU(アルティメイト)フォンを命綱に、タテルマは漂流し続ける。
ほとんど何も起こらないことがポイントのストーリー。x年も独りぼっちで海を漂うなんて気の遠くなるような話だ。
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中短編が4編。全部すばらしい出来ですが、中でも『漂った男』は秀逸。
『ギャルナフカの迷宮』の舞台設定は好きだなぁ。
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ギャルナフカの迷宮と漂った男の二編はすごくよかった老ヴォールの惑星も良い部類に入る。一冊の中に良いと思えた作品が3作あるのはすごいなぁと思う。
全編の鍵になる言葉は多分「信頼」
とは何か?
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この作品と出会えて、小川一水さんと言う作家と出会うことが出来ました。久々にSF作家で好きだ〜と思う人と出会えましたよ。(なぜかと言うとあまり新しい作家を開拓していないから…)昔も今も結構保守的に好きになった作家さんばかりを読んでいるので新しい作家さんと出会う機会が… この本は本屋で衝動買いしました。
何せ世界の作り方が実に丁寧で好きだ。SFだからこそ、架空の世界を作り上げるからこそ、細部にまで拘ってリアリティを出して欲しいなあ〜と常々思っている自分にぴったりのお話でした。と言うわけでそれから全部揃えましたよ!…といいたいところですがラノベは買ってないなあ〜 探すのが大変で…
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偵察機の墜落により、おれは惑星パラーザの海に着水した。だが、救援要請は徒労に終わる。陸地を持たず、夜が訪れない表面積8億平方キロの海原で、自らの位置を特定する術はなかったのだ―通信機の対話だけを頼りに、無人の海を生き抜いた男の生涯「漂った男」、ホット・ジュピターに暮らす特異な知性体の生態を描き、SFマガジン読者賞を受賞した表題作ほか、環境と主体の相克を描破した4篇を収録。
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SFの楽しさを最初に教えてくれた一冊。短編集。表題作『老ヴォールの惑星』はホットジュピターに生まれた知的生命と人類のファーストコンタクトを描いた傑作。『漂った男』はパニックもの好きの僕にとっては最高の仕上がり。