紙の本
あとがき読むべし。
2004/01/12 20:36
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投稿者:エルフ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本に関しては「あとがき」を絶対に読み逃さないで下さい。
タイトルの「見張り塔」の意味と重松さんの「作家業」に対する思いが書かれているので…。
テーマは「あらすじ」を読んだだけでも重さが伝わる。
本を読むという事は、空想の中で疑似体験できる楽しみ、つまり本の世界での楽しみがあるのだが重松氏の作品には本の世界と現実の世界の垣根が殆どない。
本を読みながら自分のことにように主人公の辛さを感じ、人生の重たさを感じる。
何故こんなにもリアリティのある作品なんだろう?と毎度不思議に思っていたのだか、このあとがきを読んでその理由が分かったような気がした。
この三つの家族にはどれも結論が出ていない。
だからこの家族達が今後どんな道を歩んでいくのかは読者の想像による。
「みどりさん」が離婚届をどうするのか、ニュータウンの一家の未来はどうなるのか、読者は彼らの不安や希望を胸に本を閉じる。
まるで自分のことのように…。
取り合えず私は「陽だまりの猫」のみどりさんにエールを送りたいと思いました。
がんばれ、みどりさん。
紙の本
サスペンスの緊迫感と純文学の重さ
2001/01/13 13:46
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投稿者:ぽろぽろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
予期しない悲しい運命を背負い、あきらめのため息をこらえながら静かに人生を送る人々。現代人の誰もが同様な悲劇の当事者になりうることを思うと、ある種の戦慄を覚える。
3編の作品で構成され、本のタイトルが暗示するように、3つの人生を、高いところから見下ろすかのような客観的かつ冷静な視点で描く。サスペンスの緊迫感と純文学の重さをもって読者に迫る。
紙の本
目を背けたくなる心の闇と抗えない現実
2006/01/19 01:54
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投稿者:永遠のかけら - この投稿者のレビュー一覧を見る
きっと世の中のあちらこちらにあふれているだろうな…と思うような、目を背けたくなる暗い現実を淡々と描いていく短編が収録されている。
新しくマンションにやってきた家族に執拗ないじめを繰り返すことで、主婦たちはストレスを発散し、妻たちの行いに疑問を感じつつも、いじめがエスカレートするほどに活き活きしていく妻に喜ぶ夫…。
姑に嫌われ、旦那からも虐げられ、存在価値を見出せない嫁は、反撃に出ようと心に決め、息子を失った悲しみから立ち直れない夫婦は、その死を受け止められないがためにぎくしゃくしていく…。
人の心の奥にある“嫌な面”や抗えない苦しい現実を目の前に突きつけられたようで、いろいろと考えさせられた。モチーフが重く、精神的にこたえるので、読むのにはある程度の覚悟が必要。
紙の本
見張り塔からずっと
2024/02/27 17:15
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投稿者:kotep - この投稿者のレビュー一覧を見る
今は寂れているところが多い各地にあるニュータウン。新築当初に夢を持って購入し新生活を始めたのだが、何かと不便さを感じる住人たち。住人たちの不満や鬱憤はやがて住人に向かう。怖い話ですね、何気なく呟いた一言が曲解されてしまうとは。マンションを安く購入できた人への嫉妬もあるのでしょうが。住宅の購入もいろいろと考えないといけないですね。
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なんと初の重松清作品…遅すぎ。 期待していたものの、こんなにも暗い人とは思ってもいなかった!もっと希望の持てる話を持つ人かと思いきや、ものすごい暗い…篠田節子的怖さとかだけど、でも篠田節子よりも現実味が強すぎる!恐ろしい。でも、もちろん面白いですが、が、暗くてどんどん読もうと言う気には…。でも、文書はとても上手くて、読ませる。
マンションでのいじめを描いた「カラス」 子供を失った夫婦の苦悩「扉を開けて」 夫にも義母にもまともに扱ってもらえない、「みどりさん」を作り上げる20歳の若妻の話「陽だまりの猫」 誰も皆良い人で、ありえる人物たちで、そしてラストは…哀しい。これがもし山田詠美や姫野カオルコだったら、最後に殻を破ってどーんって出発しちゃうんだろうけど、現実をそのまま生きるのだ。彼らは…。 哀しい。でも、上手い作家だ。確かに。と思う。 ちょっと辛い時期には読みたくないね。でも、上手いねぇ・・・。
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『見張り塔からずっと』には、3編の小説が入っている。
「カラス」、「扉を開けて」、「陽だまりの猫」の3作であるが、どれも考えてみると恐ろしい内容である。
サスペンスとか、ホラーとかいう類ではないが、なにか、精神の奥底に、ゾクッとする感覚を起こさせる作品である。
「カラス」は、重松の小説の舞台としては有名なとあるニュータウン。滅び行くニュータウンで起こる人間模様を描いている。
重松は、いじめの本質をいじめる側、傍観者の側の心理をうまく分析して描いている。そこが、天才だなと感じさせる部分である。
「扉を開けて」も設定としては上手い。子どもをなくした夫婦。そして、亡くした子どもと同じ名前、同い年の少年。この少年に抱く妻の感情と自身の感情。
結末はまさにゾクッとしてしまうものだが、とても面白い。
「陽だまりの猫」は、できちゃった結婚をしてしまった若妻が主人公であるが、もう、取り巻きの人物がヒドイのなんのって。ストーリーの本流からは外れてしまうかもしれないが、もし、彼女をはらませたら、自分はどういう態度をとるのだろうと考えさせられてしまった。結末は、読者に委ねる形式だろうか。
この珠玉の3作はぜひたくさんの人に読んでもらいたい。
重松のスタンス、日常を観察する。言うなれば、巷(仮の)で起った出来事を、重松自身が、中心人物を選んで、観察して記していく。そういった心構えがみごとに実を結んでいるように思う。
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苦しいのに、本を読むのをやめられない自分がいた。大人にもある。あたしにもある。保身。そしていじめの誘惑。
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雑誌記者として出版社に長年勤めてきた重松清さん、様々な社会現象を目の当たりに「目撃」してきた自分自身のことを、見張り塔にいる哨兵にたとえている。
そして、われわれ読者もその断片を本書以後の彼の作品を通して「目撃」させられることになる。
3つの短編で成り立つ本書は、以後の重松作品の方向付けをしていると思う。
ニュータウンでひそかに行なわれる主婦間のいじめと、その流れ玉を浴びる夫たちの話、「カラス」。
1歳で亡くした息子と同じ歳、同じ名前の子供が、夫婦を悩ませる「扉を開けて」。
姑に見放され、マザコン夫には邪険に扱われる若妻は、18で結婚した。世間知らずとののしられ、その存在さえも消し去られる「陽だまりの猫」。
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中年夫婦の視点に立った作品。評価は高いらしいのですが、個人的にはあまり好きになれなかった作品。暗い気持ちになるのは請け合いです。
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発展の望みを絶たれ、憂鬱なムードの漂うニュータウンに暮らす一家がいる。1歳の息子を突然失い、空虚を抱える夫婦がいる。18歳で結婚したが、夫にも義母にもまともに扱ってもらえない若妻がいる…。
三篇からなる中篇集。心理サスペンス系です。こ、怖かった・・・!
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我々の世代にとっては、とってもイヤーな
話ばかり書いている重松清さんですが、
読了感が悪くなく、むしろさわやかなのが不思議。
でもマンション買うのをためらっちゃいますね。
これ読んだら。
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重松清のかなり初期の作品です。3篇共に家族の閉塞感が淡々と綴られています。Focusが曖昧な感じがして、もうちょっとthemaを突っ込んで欲しい気がしました。同年代が主役で、その点ではリアリティを感じやすかったです。
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3つの家族のお話。どれも人間の怖さが出ていてビクビクしてました。重松さんの作品初挑戦!
07/10/04
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様々な問題を抱える夫婦の短編3作が入ってます。
バブル時代に超郊外のニュータウンを高く買ってしまった夫婦が、近所の人たちと一緒に、後から来て値下がりした部屋を安く買った夫婦を虐める話。
幼くして亡くなった我が子と、いつも家の前でサッカーボールを蹴る同じ名前、生きていれば同い年の子どもを重ね、狂っていく夫婦。
超マザコンの夫と鬼姑の仕打ちをどこか第三者的な眼差しで見ることにより耐える若妻の話。
重松清得意の壊れてしまった家族の話、結構好きです。
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団地内いじめとか子供を亡くした夫婦やなんかどろどろしてます。特に団地話がコワイ。絶対現実にありそうと思わされる。