わがまま変人、かく語りき
2014/01/04 18:30
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投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮崎駿へのロングインタビュー。
「風の谷のナウシカ」から「千と千尋の神隠し」まで、断続的に行われた5回のインタビューを収録している。
元々は雑誌「Cut」「SIGHT」に掲載されたもの。
雑誌のページ数の関係で半分以上カットせざるをえなかったが、本書ではノーカットで収録したそうだ。
ジブリ作品が公開される前、宣伝番組が放送され、そこに宮崎駿監督が出てくる事はよくある。
その時は(それほど出番が多くないためか)「いい人」的な扱いで登場するが、こういうロングインタビューなど、取材に長い時間をかけたものだと、たちまち「わがまま変人」ぶりを露呈する。
映画監督に限らず、「表現者」という人種は、自分の頭の中だけでは飽き足らず、人に見せなければ満足できないほど、表現への欲求があるくらいなので、「わがまま変人」なのは、当然と言えば、当然だが・・・。
先日、「引退宣言」をしたのは記憶に新しいが、これまで何度も「引退」(もしくは、引退と受け取れる事)を宣言しているのは有名な話。
本書の中でも「山小屋に住んで、散歩でもしていたい」という事を言っているが・・・。
人がやっているのを見ると、どうしても何か言いたくなってしまうらしい。
なので、本当に引退する時は、「山小屋」に移り住む時だろうと思う。
ところで、本書では「ナウシカ」などのジブリ作品の話がメインではあるが、文明論、人間論などにまで話が及ぶ。
「(戦争には)懲りているんだけど、懲りてない。
懲りているけれども、新しい憎悪もちゃんと生産されている。」
咽喉元を過ぎて、熱さを忘れているような言動がよく聞かれる、と思っていただけにギクリとした。
また、経営者的な顔を覘かせるのも面白い。
曰く「一番近いものには厳しくすべきだけど、遠く離れてやっているスタッフに対しては配慮しないといけない。」
この「遠く離れてやっているスタッフ」には、荷物を届けに来る宅配便の人や、清掃員まで含んでいるのだから、参ったとしか言いようがない。
さらに1年目、2年目の新人だけでアニメ作品を作らせようとした事も。(実現したかは不明確だが)
当然、作品として未熟な上、赤字になるのは目に見えているのだが、「恥をかかせるチャンス」を作るのが目的らしい。
昔、「失敗は若いうちにしておけ」と言う人がよくいたが、いつしか、ほとんど聞かれなくなった。
一番、印象に残ったのは、次の言葉。
「職場には、ものの考え方とか、心構えをいつの間にか仕込む先輩がいる。
そういう人の影響をちゃんと被って、初めて職場の中に定着することができると思う。
それを遮断して、みんな自分よりバカだと思ったらおしまい。
そういう人間は伸びない。先輩は先輩として受け入れている人間の方が着実にやっていく。」
後者の方が、周りの人間と協調してやっていくので、仕事をいろいろ経験できて伸びていく、という事だと思う。
さすがに職場では「自分以外はバカ」と思って、行動に現す人間は少ない(と思う)が、職場を離れると、そのような考えでいる(と思われる)人が少なくない気がする。
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮崎駿作品の創作原点。著者の想いや創作話など盛りだくさん。千と千尋の神隠しまでのエッセイだが原点であり、その後の活動も予感させられる。
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思想の形成を原点から追い求める.表層的にも読めるが,かなり深層まで抉った内容で,どれ程の覚悟を以て零から一を創り出しているかがよーく判る.
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渋谷氏のロキノンは、エレカシと幸福な関係。
ブランキー初期とは幸せな関係だったが、浅井健一ソロとは決裂して……という。(→浅井健一は「音楽と人」へ。)
それくらいの印象。
もちろんロック方面、私が一時期首を突っ込んで、その奥深さに辟易し首を引っ込めた分野では、凄い人なんだろう。
が、駿へのインタビュアーとしては、ともかく続けてくれという懇談、そして次の回においては、だから前回私は駿さん続けるって言ったでしょー!? という、その鼻息に終始している。
とはいえ駿も鼻フンフンの若者に対し、ジジイとして鼻の穴をフンフンしているので、共犯。
素材としては悪くないが。
評論家は、こういういけ好かないインタビュー集を材料にして色々考えなければならないんだろうね、難儀だねえ。
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宮崎駿インタヴュー集『風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡』
宮崎駿インタビュー集第2弾刊行にあわせて6刷決定!
「どんな状態になっても世界を肯定したいっていう気持ちが自分の中にあるから、映画を作ろうっていうふうになるんじゃないかと思うんです」(本書より)――『千と千尋の神隠し』でついに第75回アカデミー賞を受賞し、名実ともに世界のトップ・アニメーション映画監督となった宮崎駿。決して大人に向けてではなく、ある10歳の子どもたちを観客として想定して作られた作品であり、しかも湯屋を舞台に何から何まで非常に日本的なるもので作られた作品であるにもかかわらず、『千と千尋』が年齢も国境も超えたグローバルな普遍性を獲得することができたのは何故なのでしょうか。本書は12年の歳月をかけて行われたインタヴューのすべてをノーカットで収録した、宮崎駿の決定版インタヴュー集です。華やかなサクセスストーリーを歩んでいると誤解されがちですが、宮崎駿のアニメーター人生は決して平坦な道のりではありませんでした。実は苦渋の決断だった『ナウシカ』のアニメ化、『となりのトトロ』の興行的な失敗、表現者としてぶつかった壁……のどかな世間のイメージとはかけ離れた、一人の表現者・宮崎駿、そして人間・宮崎駿の真実。本書ではそのすべてが、宮崎自身の肉声によって語られています。様々な苦悩と困難を乗り越えて、宮崎駿はなぜ世界を肯定できたのか。12年間かけてじっくり積み重ねられた、あまりに重く、そしてあまりに眩しい言葉の数々。本当の宮崎駿を知ってください。
目次
○ 風が吹き始めた場所――1990年11月
映画/拠り所/現代/風/娯楽/ブランド/黄金律/自己嫌悪/日本人/動態/左翼思想/本音と建前/手塚治虫/ディズニー
○ 豚が人間に戻るまで――1992年7月
豚の由縁/崖っぷち/東西の崩壊/嘘/豚でしかない人間/「仕方のないもの」/根拠/出発点/創作意欲/終わっていない映画/メガヒット/本質/突き抜けたニヒリズム/ジャパニメーション/時代劇/奇跡/種を蒔く人
○ タタラ場で生きることを決意したとき――1997年7月
引退/職工頭/業の深さ/日の当たらない日本史/コダマ/『もののけ姫』の世界観の裏側/新しい歴史観/不条理な生/���力性/自信の喪失/愛憎/ジブリというタタラ場/庵野秀明/押井守/高畑勲/無意識
○ ナウシカと千尋をつなぐもの――2001年7月
静かな山場/千尋と海/急遽の変更劇/油屋=ジブリ/顔の見える観客/銀河鉄道の夜/大事なもの/予感/鉄砲オタク/物語
○ 風の谷から油屋まで――2001年11月
失業者/漫画家/持ち込み/制約/職場/橋/「ライフワーク」/映画版『ナウシカ』のエンディング/世界観の造形/『ナウシカ』の成功/少年モノとしての『ラピュタ』/脇役/戦前・戦後/キスシーン/女性観/『トトロ』への積年の想い/日本/日常/草原/台風/『トトロ』の失敗/ヒモつき/思春期/佳境に入ったコミック版『ナウシカ』/社員/経営者/冷戦の終結とバブルの崩壊/後悔/真っ向勝負/シンプルでストロングなストーリー/「タタラ場」という現実/祝福/メロドラマ/答え
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人は誰もが表に見えるだけの人ではないと言うことですね。あの巨匠 宮崎駿 という括りからはみ出している部分が見えた気がします。とても人間らしい、表に出ていない部分が。前回読んだ鈴木さんの言われたことと違わない?と感じたところがあって、まぁそれぞれに捉え方が違うということでスルーしました。
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書影と宮崎駿著だけで購入。エッセイ集だと思ってたらインタビュー集だった。僕はいまだかつてここまで酷いインタビュー集を読んだことがない。
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非常に読み進めにくかった…
独特の世界観を言語で理解するのも難しかったし口語が永遠と続く。
ちょっと読んでて疲れたかな。
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アニメーション作家の業というものをイヤというほど思い知らされるインタビュー集です。アニメーションというのはもうやってもやってもきりがないもので、おそらく100パーセント満足できたなんてことはないのでしょう。だから映画を作る度にもうやめたい、となるのでしょう。でもまた自分のなかで、もやもやと「作らねばならないもの」が動き出す。途方もない時間と、カネと、人材とを消費して、傲慢で自分勝手なクリエイターとして「それ」をつくりつづけなくてはならない。
自分はこんなふうに一度でもものづくりをしたことがあるだろうか。と問えばあるはずもなく、うなだれるしかない。やはりまともじゃない人にしか、並外れたものはつくれないのでしょうか…。せつなくなります。
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作品の背景のようなものが分かるので、宮崎駿さんの映画のファンではあるので楽しめました。
ただ自分と年代が違うし、ある種の思想が入っている感じでどうにも理解できない部分も多かった。
内容から、映画1本作ることが本当に大変なことなんだなということと、宮崎駿さんの凄さが伝わってくる。でも上司に持つとややこしいんだろうなと思った。
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ケンカ腰が本当を引き出していた。
渋谷陽ーの宮崎駿へのロングインタビュー。
最初は喧嘩腰。
それが回を重ねるごとに噛み合い、思わぬ本当を引き出していた。
それは渋谷と宮崎に通底する思想や教養があったからこそ。
土俵があってこその喧嘩腰。
「『これはブランドもんだから好きだ』って着てるのは駄目ですよ! そういうスノビズムは、どっかで可愛げがあったときはいいけども」
「僕は回復可能なもの以外は出したくないです」
「僕は、人間を罰したいという欲求がものすごくあったんですけど、それはヤバイなあと思ったんです。『新世紀エヴァンゲリオン』なんかは典型的にそうだと思うんだけど、自分の知っている人間以外は嫌いだ、いなくてもよいという」
「下請けの人が仕事を持ってきてくれたときには挨拶したいしね、暇があったらお茶でもいれたいぐらいの気分なんですよ。~ところが案外ね、みんな平気な顔してるんですね」
「シンプルでストロングなストーリーで端的明瞭っていうのが映画では一番いいんだっていうのは、ほんとそのとおりだと思うんですよ。でも、それだけやってしまうと、この現代の世界は取りこぼしてしまうんですよ」
心にとまった所をピックアップしてみると、常識というか、知性というか、教養というか、もののとらまえ方が自分に響いたとわかる。
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『「不幸にして君は出会ってないだけで、どこかにいるに違いない」って僕は思うんですよ。』宮崎駿のインタビュー。渋谷陽一の若さゆえのエゴの塊的な誘導には辟易したけど、宮崎駿の頑固さに救われた。長い年月をかけて、向き合う二人の変遷は悪くなかった。宮崎駿は哲学の人という印象があって。「わかる」必要はないし、わかんないなりに考えることで得られるsomethingはきっとある。と。
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宮崎駿。著となっているが、インタビュー集で、インタビュアーが渋谷陽一。つまりそれぐらいのコッテリさということ。
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【衝撃の引退劇――世界のミヤザキの原点】『風の谷のナウシカ』から『千と千尋の神隠し』まで、十二年間に及ぶロングインタビューで、天才・宮崎駿の発想の“源泉”を探る。
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「ストーカー」「ミツバチのささやき」、宮沢賢治、手塚治虫、ブルース・スプリングスティーン、シニアジブリ、関東大震災、庵野秀明、押井守、杉浦茂、「テス」、「ライアンの娘」
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少し前に読んだので、くわしい内容は忘れてしまいましたが・・・ 各映画を作成したときの背景や想いをつづった本。