紙の本
文中に出てくるロマンス小説談義が素晴らしい。ここだけを取り出せば★5つもの。ちょっと空回り気味のお話を助けてくれるのいはご存知、杉田比呂美のイラスト
2005/01/03 21:07
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「相次ぐ不運に嫌気がさした相沢真琴がたどり着いた葉崎市。彼女を海岸で待っていたのは若い男の自殺死体だった。その彼女に手を差し伸べたのが古書店アゼリアの主人で富豪の前田紅子だった」推理小説。
本の宣伝文句にはコージー・ミステリとある。一体なんだ? そんな疑問を吹き飛ばすのは、イラストレーター杉山比呂美と若竹のゴールデンコンビ。
31歳の相沢真琴の夢は、海に向って大声でバカヤローと叫ぶこと。勤め先の編集プロダクションは倒産し、彼女の打ち出した路線だけは雑誌に受け継がれていく。憂さ晴らしの泊ったホテルは火事で延焼、ショックで脱毛症になり、新興宗教に声をかけられ、強引な勧誘から逃げる時に足首を捻挫。だから神奈川県葉崎の海岸に憂さ晴らしに来た。そこで彼女を待っていたのが若い男の死体。早速、疑いは発見者の真琴に。
その男は一通の手紙を持っていた。そこには前田満知子という名前が。葉崎一帯で勢力を誇る前田家の本家の主人で〈葉崎FM〉〈前田満知子オフィス〉の社長 前田満知子の名が、警察署を揺り動かす。満知子のご機嫌ばかり気にして、早々に事件に幕を引こうとする署長、満知子の言うことを鵜呑みにする署長に反発する現場の担当者。
真琴の言うことを信用しない警察署の五木原巡査部長30歳と、部下のことを気に掛ける上司の駒持警部補は、とりあえず真琴に町に残ることを求める。警察が紹介したホテルに泊ることになった真琴は、食事に出かけた町で古書店を見つける。和服を着た老婦人が客に罵声を浴びせる現場、ロマンス小説ばかりを並べる奇妙な書店。絶版本や奇書珍書が溢れる店。
それが72歳の店主 前田紅子との出会いだった。彼女は満知子の伯母にあたり、大のロマンス小説好き。古書店で繰り広げられる真琴と紅子のロマンス小説談義は読んでいるだけで楽しいが、なによりそれを喜んだのが入院して健康チェックをしようとしていた紅子だった。彼女は一ヶ月間だが、真琴に店を任せることにする。
しかし、それが真琴を更なる不幸に巻き込んでいくことになるとは。葉崎FMのディレクター工藤、パーソナリティーの渡部千秋、前田満知子の娘で美貌のしのぶ。満知子の秘書の古川恒子、ホテルのフロントの篠山麻衣、歯科医の丸岡など多彩な人々が、旧家の不可解な動きの中に巻き込まれていく。死んでいた男は、十年以上前に行方不明になった紅子の甥の息子なのか。
冒頭に前田家の系図が載っているが、これを理解しておかないと話が分からなくなる。それから、トリックがある話ではないので、驚きは少ない。そのかわり文中でのロマンス小説談義をもっと楽しみたかった人のためだろう、親切なことに巻末におまけとして前田紅子のロマンス小説注釈が付いている。
相変わらず若竹らしい、柔らかな雰囲気の小説だが、登場人物の数の割りに、複雑な感じがするのはなぜだろう。もしかすると、私が大嫌いな家系というものが絡んでいるせいかもしれない。核家族化が進み、都会に出てきたせいで、遠い親戚との付き合いもしなくなった今の人々には、案外この手のものが苦手かもしれない。そのせいかユーモアもソフトなラブ・ロマンスも今回は空回りしている気がする。それでも杉田比呂美の優しいタッチのイラストは、見ているだけで心を温かくしてくれるからありがたい。
紙の本
まさにコージーミステリ
2014/06/18 15:43
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:papanpa - この投稿者のレビュー一覧を見る
さまざまな人間関係が絡み合って、見事に最終章へと向かいます。後味も悪くなくすっきり、おすすめの一品です。面白かった。
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アゼリアの店主前田紅子おばあちゃんがインパクトのあるキャラで、おもしろおかしくテンポ良く読めるよ。若竹さんの作品中ではかなり好きだなぁー。
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私が初めて讀んだ若竹七海の本。
いろんな不幸が身に振りかかる、ついてゐない主人公は、海へ出かけた。
海に向かつて「バカヤロー」と叫ぶことで、氣を晴らさうとしたのである。
しかし、そこで主人公が出會つたのは、溺死體であつた。
こんなシーンから、この物語は始まる。
ユーモアあふれる筆致で、ストーリーは輕快に進められてゆく。
卷末の解説によれば、この本は「コージー・ミステリー」といふジャンルに分類されるのださうだ。
確かに「コージー」、つまり居心地が良い。
本格的なミステリーを望む人にはお薦めできないが、氣晴しに讀書でも、といふ時にはうつてつけの一册である。
2003年11月2日讀了
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ヴィラ・マグノリアに続いて架空の町を舞台に殺人事件が起きるという「さっぱりミステリー(勝手に命名)」。あーなるほど、こーつながってたのね、という感想。ドキドキハラハラはないけど、さらっと読めちゃいます。個人的に好きなタッチです。
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ストーリーも語り口も好みだし、紅子さん大好き。ロマンスカルトクイズのくだりとか最高だし、キャラも好感持てる。しかし、のめり込めない。原因は、人間関係がめっちゃ複雑なお話なのに肝心のキャラが被ってることと、あまりにもあっさりと話が先に進んでいってしまうことだ。解説の池上冬樹も同じように感じているらしく、全然褒めてない解説が笑えた。うーん、もう1冊読むまで評価は控えるか…
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勤めていた会社が倒産、泊まっていたホテルは火事、あげくに怪しげな宗教家から逃げるために窓から飛び降りた時に怪我をした真琴。この怒りをぶつけるため(長年の夢)に「バカヤロウー」と葉崎の海に叫んだ真琴。海からの返事は、溺死体だった。あれよあれよと言う間に古書店アゼリアの店番になった。そこは、店主の紅子の趣味のロマンス小説ばっかりの店だった。そこでも新たなる死体と出くわす事に・・・。
葉崎市の名門の前田家の秘密とは?前田家・古書店アゼリア・ラジオ局などを舞台に駒持警部が謎を解く笑いと驚きがいっぱいのミステリーです。
これは、面白いですよ〜。ぜひ読んで欲しい本です。
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★あらすじ★なぜか不幸な目にばかりあってしまう主人公・相澤真琴が辿り着いた神奈川県葉崎市で、彼女は身元不明の死体の第一発見者になってしまう。その死体は長く行方不明だった地元の御曹司のものらしい…
★感想★作品のシチュエーションや登場人物の会話に重点を置いたコージーミステリ。地元の資産家一族や、ロマンス小説専門の古書店「「アゼレア」を経営する前田紅子など、登場人物たちのユニークさがいい。謎解き部分が弱いかなとも思いますが、こういう雰囲気を楽しむミステリがもっとあってもいいですね。「ロマンス小説の定義」にラストで納得されられます。
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勤め先は倒産、泊まったホテルは火事、怪しげな新興宗教には追いかけられ……。
不幸のどん底にいた主人公は海岸で変死体を発見してしまう。
運よく、古書店の店番の仕事にありつくが……。
ツイテない主人公が段々ツキを取り戻していく過程がなんとも微笑ましい一冊。
ロマンス小説専門店が舞台なだけに、巻末に納められたロマンス小説注釈は必見である。
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葉崎シリーズ。
ロマンス小説にとんと縁がないというか興味がない私でも、
ちょっと読んでみようかなという気にさせられる古書店アゼリア。
なんにしても矜持のある古書店はいいなぁ。
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勤め先は倒産、憂さ晴らしに泊まったホテルは火事、怪しげな新興宗教に追いかけらる等と、散々な目に会った相澤真琴は、葉崎市の海岸で海に向かって「バカヤロー!」と怒鳴ってた。そこへ溺死体がどんぶらこ。第一発見者である真琴は事情徴収を受け、葉崎市で足止めを食らうこととなる。受付の女性より近くに古書店があると聞いた真琴は、興味を覚えその扉を潜った。店主の前田紅子より怒涛の如く質問を受けるやいなや、店番を任せられた真琴。
一方、真琴が見つけた死体は、葉崎市で有名な前田真知子の甥である秀春という見解が下った。だが彼は12年間も失踪し音沙汰が全く無かった。
テンポも良くて、面白いです。笑いあり、ユーモアあり、読みやすくてライトミステリーな感じなんですが、どんでん返しがビシッと入っててミステリーファンの私はご満悦でした。
でもって、紅子さんが良いです。物凄く好きなキャラ。
ロマンス小説に疎いので、この辺りの掛け詞が理解出来なかったのが無念。
久し振りに若竹著を読んだが、「海神(ネプチューン)の晩餐」に継いで琴線に触れました(個人的に)
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たて続けに悲惨な目にあった相沢真琴は、
長年の夢「海に向かってバカヤローと叫ぶ為」に
葉崎市の海岸に行き着いた。
しかし、叫んだ直後に波に押し出されてきたのは
死体だった・・・
真琴が発見した死体は葉崎市の名門・前田家の
家出して消息不明になっている息子らしい
お家騒動絡みの事件に巻き込まれ、更に新たな死体が・・・
軽快な会話も楽しいけど、ハラハラドキドキさせられるし
事件は一応解決するんだけど、安堵したと思ったら、
最後に2回もどんでん返しが待っている。
そのどんでん返しがゾッとする。
ロマンス小説好きには、色んな作品の紹介が
文中に出てくるから、楽しいと思います。
最後に、文中に出てきたロマンス小説の解説を
登場人物の紅子さんがしてくれてます。
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落語のような調子の良い会話と伏線徹底回収劇はおみごとっ!!
特に刑事と真琴の会話、駒持と秘書の会話は笑ったなー。
「ゆうべ、お前の愛人が猿に襲われたんだそうだ」のくだりと、
「もしかして、偶然、手紙の中身を見てしまった、なんてことはありませんかね」
「まさか、刑事さん。わたくしがそんな真似を」
「偶然、と申し上げましたぞ。有能な秘書であるあなたを、ワイドショーを見過ぎた嗅ぎ回り屋と一緒にするとお思いですか」
「実を申しますと、二度ほど見たことがございます」
のシーンは
夜中に吹き出してしまいました。
ただ、コミカルなノリが続く割りに事件はなかなかに重いです。設定(人間関係や葉山という街の説明)が複雑で序盤、混乱しましたが、最終的には夜を徹して一気読みでした。
ロマンスが読みたくなりました♪
若竹七海作品はこれで2作目です。もっといろいろ読んでみようと思います。
《所持》
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若竹七海って、あっさりなイメージがあったのね。たぶん、本人がどこかで言ってたらしいけど、「枝葉を削っていくのが好き」だからなんでしょうね。 こういうあっさり感は、まともにホラーとかゴシックっぽい推理小説でやっちゃうと物足りないカンジがするんだけど(俺的に初期の今邑彩氏。現在の氏と、完全ホラー系の話については知らないが)、こういうタイプの話にはピタっとハマるんですねえ。
コージー・ミステリっていうの、初めて知ったよ。わりと好きかも、っていうか、最近の自分の傾向がそっちに向いてるなあ(さいきん濃いの読めないのよ…二階堂と京極をどうしてくれよう)。だからよけい良かったのかも。 個人的には、これだけロマンス小説のタネをちりばめてあるなら、もっと真琴を主人公っぽくして、五木原ときっちりロマンスするまでおとしてほしかったな、と。最後ちょっとだけ出るけど、それだけじゃ物足りないわーっ(笑) 主人公が真琴だと思って読み始めたら、結局主人公ってどう考えても真琴じゃないし、視点も真琴だけじゃなくてころころ変わっちゃって、それがいけないわけではないんだけどさ、一本通った軸がないような気がしちゃうのだね。 話自体は非常に面白かった。よくここまで細かいことをつなぎ合わせてこういう事件になるものだと感心したり。 しかし実際、事件っていうのは、原因は一つじゃなくて、こういうふうにいろんな要因がたまたま一点に集中した時に起こるんだろうなあ。
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仕事を失い、気晴らしに高いホテルに泊まってみたら火事で焼け出され、人づてにカウンセラーを紹介してもらったら新手の新興宗教の勧誘で、、、と散々な目に遭った三十代独身女性が「バカヤロー!」と思い切り叫ぶためにやってきた葉崎で本当に叫んでみたところ溺死体を発見してしまい、、、。無理やりな感じもしつつ設定はきちんと筋が通っていて登場人物の設定もかなり漫画チックにデフォルメされているのであまり気になりません。終盤でいろいろなことが明らかになる怒涛の展開はおおおおと思いました。