関西弁での会話文が軽快な、明るいエッセイ
2023/11/30 10:49
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投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者の大阪弁炸裂の柔らかい文体が心地よいです。明るく楽しく生きようという気になってきます。男は弱いが、女は強いということは、戦後の主婦達の話を読んでなるほどと思いました。
「人生はだましだまし保ってゆくもの、ゴチャゴチャしてるうちに、持ち時間、終わるよ」なのだそうだ。たぶんそうなのだろう。
2010/02/03 21:10
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投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
新幹線に乗る前に、ふと、バッグに詰め込むのに適当な本がないかと書店で物色した。田辺聖子はすでに一定の読者層を獲得しているベテランの作家だ。安心して手に取れそうな気がしたが、たしかに期待を裏切らない本であった。
本書は、車中の数時間をともに過ごすのになんとも最適。人生の機微を知り尽くした作家が、説教くさくならずに、夫婦の愛情、その他を巧みにエッセイにまとめきっている。
全体として言いたいのは、書名の「だまし、だまし」で言い表されているが、人生をそうやって乗り切る極意が、ユーモアまじりに描かれる。
処世訓が随所に織り込まれているが、実に鋭く言い当てている。中高年以上の読者には、「その通り!」とひざを叩くことだろうと思わずにいられない珠玉の言葉だ。
それも、大阪弁をじょうずに使っているので、肩が凝らずに読者に届く。本文は「である調」だが、差しはさまれている会話が大阪弁なので、いいアクセントになっている。
こうやって、人生はうまく暮れていくのだなあと思う。近頃の不況で思い詰めている人も多いかもしれないが、田辺聖子の本に接すれば、楽な気持ちになること請け合いである。
通読し終えると、年を取るのもまんざら悪くはないのだなと、安心感を覚えてしまった。
こういう作家が一人いるだけで、息苦しさから多くの人を解放してくれるに違いない。いずれまた、田辺聖子の作品を選ぶとしよう、再び新幹線に乗る前に。
以下は本書に収録の味わい深いアフォリズム(格言、箴言)の一部。
・人間も金属疲労が出てからがホンモノである。
・苦労は、忘れてしまうと苦労でなくなる。
・女は愛されていると確信したときに別れられる種族である。
・家庭の運営、というものは、だましだまし、保たせるものである。
・男はかよわい生きものである。
一緒に笑うことが恋のはじまりなら、弁解は、恋の終りの暗示である。
・家庭運営能力というのは、順応力のことである。
・悪夫とは、妻にホトケごころを出させる男をいう。
・うまくいっている夫婦とは、お互いに<話しかけやすい>人柄であるところに特徴がある。
・夫婦円満、それを発展、拡張させて世の中を融和させる究極の言葉はただ一つ、<そやな>(または”そやね”)である。夫からでも妻からでもよい。これで世の中は按配よく廻る。
・人間が”人間のプロ”になれる頃には、八十にはなっているだろう。
チャーミングなひとだったんだろなぁ。
2021/03/18 15:28
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
田辺聖子さんのエッセイ集を通し、彼女のこなれた人生を垣間見つつ読了。この方は、本当にチャーミングな生き方をしたひとなんだなぁとしみじみ。特に、なるべく怒らぬよう。怒ると人生の貯金が減る...と続く、「人間のプロ」などは、読むに値する一章。全編通して、紫式部と清少納言、百人一首などなど、この作家らしい歴史や古典の知識も散りばめられているところもいい。
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田辺聖子という人は賢くて、ユーモアがあって、チャーミング。それでいて決して鼻につかない。こんな女性になりたいと思う、共感できるエッセイ。
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生きていくために必要な二つの言葉→「ほな」と「そやね」。別れる時はほな、相づちには、そやねといえば、万事うまくいくという。とてもうまい宣伝文句だが、おそらくもっとおもしろい内容がいっぱい詰まっていると期待して間違いないと思う。田辺聖子さんの文章。
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NHK朝の連続ドラマ『芋たこなんきん』、映画『ジョゼと虎と魚たち』の原作でも知られる恋愛小説家・田辺聖子のエッセイ集。『ラ・ロシュフコー箴言集』などに心酔した著者の、恋愛におけるアフォリズム(箴言)を、身近な話や文学などを題材に笑いやを交えて紹介している。例えば、『源氏物語』の六条御息所の話を挙げて「女は愛されていると確信した時に別れられる種族である」といったアフォリズムを打ち立てている。気軽さ漂うタイトルを裏切らない、気楽なエッセイだが、人生の参考になる一冊。
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エッセイの類はあまり好きではないのかもしれません。
「答えをすぐほしがり、しかも事物の即効性を求める」現代人を憂いているが、
ほんとそうだなーと反省した。
マニュアル本然り。読んでしまうが。
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この人の書く文章を読んでいると和む。
80歳の人でも、こんなこと(めんどくさいとか、自分はこどもだとか)
思うんだ、ということが、飾らず、自然体で書かれている。
背伸びせず、自分のできることをして、周りの人との会話を楽しんで、
そんな風に生きたいなと思った。
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最近、大小説家の小説、じゃなくてエッセイを読むことにハマっている。
鋭い洞察力、独特の感性、美しい日本語。
小説の中では「背景」になっているものや人が主人公になって、生き生きしているのも楽しい。
田辺聖子さんの小説は何冊か読んでいて、私は田辺さんの書く小説がすごく好きなので、エッセイも手に取ってみた。
関西弁というのは、使いようによってはすごく下品で汚い言葉になってしまう反面、ものすごくあったかみのある言葉にもなる諸刃の剣みたいな言葉だと私は思ってるのだけど、この人の大阪弁はまさに「柔媚」。(田辺さんは自分の父親の大阪弁は「柔媚」だと書いている)
古典への造詣の深い人で、特に源氏物語を愛している人なので、エッセイの中でもたびたび源氏のことが出てくるのが、全訳を読んだばかりの私には嬉しくもあるし、分かりやすくもある。
田辺さんの全訳も読んでみたいなぁ。。。
田辺さんの年の取り方というのは、理想なのだと思う。
家には飲み友達がよく集い(フィフティちゃんとイチブン氏の存在はエッセイの中でもパンチが効いてる!)、考え方は若い、でも当然いい大人で。いいなぁ。
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朝のNHK「芋たこなんきん」で、病院から1時帰宅した健次郎と秘書の純子さんの会話。
「シルクハットが似合う男になりたいって、、、。」
「紙のとは言ってません。」
ああいう大阪の大人の軽口。
しんどい時ほど相手を思いやって冗談を言ったりするのよね。
懐かしい気持ちで胸が一杯になりました。
「前から聞こうと思ってたんやけど、(そんな服どこで買うの?)」
って言い方も、よくするわー。
色んな大阪のおっちゃんやおばちゃんの顔を思い出した。
ちょっとホームシックかな、私。
大人の優しい男を演じた、國村隼(くにむら じゅん)さんは、京阪神の中年女性に「隼さま」と呼ばれているそうです。(西宮の友人談)
板尾さんが演じてた役は、藤本義一さんがモデルだったんですね。納得。
大阪弁が恋しくなって、田辺聖子さんの本を何冊か読みました。
一番笑ったのは、
「そうか、<家庭>というものは、人が、<面白疲れ>したときにいるのだ。
バクチ、漁色(ぎょしょく)、飲んだくれ、浪費、変態、ワルイことはたいてい面白いだろう。」
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田辺さん、若いころから「箴言」がお好きなんだそうです。
タイトルも田辺流箴言でしょうか。いや、なるほどと思います。
ほかにも、ほーとか、へーとか、うならせられる言葉がたくさん。
話のもっていき方が上手なんですね、きっと。
いちいち面白くて、読み終えるのが惜しいくらいでした。
「女は自分が惚れた男のことは忘れても、
自分に惚れてくれた男のことは忘れない」
「可愛い男とはすぐ切れるが、
可愛げのある男とは、だらだら続くものである」
「老いぬれば、キレやすし」
「女に言い勝ってはならない。収拾つけようと思えば」
「悪妻を自認するのは一番始末に悪い悪妻である。
さまざまな悪徳の上に、居直りという悪癖も加わっている」
「なるべく怒らぬよう。
怒ると人生の貯金が減る」
「苦労は逃げえ」(苦労からは逃げなさいという意)
なんやら引用ばっかりして気が引けますが、
田辺さんも若いころは
「言いつくろってごまかそうとする人間を見ると、腹が煮えくり返り、
とことん追及して白黒の決着をつけ、ぎゃふんといわせずには
おかない気であった」らしいです。
それが
「角が立っては引っこみつかんようになるのやないか」
と先々が読めてくる。
「世の中は複雑に絡みあっており、引きずり引っ張って、
どこへ影響を及ぼすかしれないということをも学習する。
といって、あまりに放恣でもならず、そのへんのかねあいの
むつかしさも、オトナの修行である」
私、全然、オトナの修行が足りません。
一人前に年はいったけども、
まだまだ、まだまだですなぁ。
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「人生はだましだまし」なんて言葉は嫌いだった。誤魔化しなんか一切なしで、そのときそのときを全力で楽しみたいと思ってた。
就職して初めてこの言葉が身に沁みた。
害毒のエーテルに溢れてしまいそう、そんなときこそだましだまし、なのかな。
若者をたきつけるばかりじゃなくて、「苦労は逃げえ」と言える田辺聖子はかっこいいと思う。
アフォリズムって楽しいね。
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『ほな』『そやな』は標準語には変換できない多くの意味が含まれいるようで、ちょっと羨ましい。どうやらこれらの意味には、相手を受け入れる、許す、こんなもんだろうなと思える意味があるみたい。人間商売には大事なワードです。
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他人に不満が募って心が荒んだとき、読み返したい1冊。
ナァナァの大切さ
金属疲労の出た大人の良さ
家内安全の秘訣
御歳80幾つの田辺さんの言葉だからこそ、ずっしり来るものがある。
大人を叱って、大人にしてくれる本。
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ずっと積ん読になっていた本。
今一番心に残ったのは、恋愛は、はじまりではなく終わりが一番大事だということ。何も失恋する、とかそういう話ではなくて、歳をとり、どういう風に終わりに近づいていくんやろうなぁ、、と考えるのは、心がよく整理されるように思う。また、恋愛も含めて、人生というのは人との付き合い方を学んでいるんやなと思う。
私はまだまだ若造なわけで、何か穴を見つけるとすぐに埋めたがるところがあるけど、時間をかけながらあっちを直しこっちを繕うっていうのも「アリ」なやなぁと、気付かされる訳です。
人でも物事でも、そんなすぐに100%いい状態になれる訳がないやなと。そこを、ちょっとずつ自分を改めながら、自然と周りが変わっていくのをじっくり待つ。これも、人生の面白みやなぁと思う。
あれがアカン、これは気に食わん、そう思うのはようあるけど、そう思ったところで自分の人生に面白みが出てくるかというと、そうではないと思う。
うわわ、と思いながらも、あ、わたしはこういう所が嫌やなと思ってたんや、とか、自分の声に気付いていくというのも人生の味なんやろうなと思う。こういうのを嫌やなと思う自分がおったんやな、、という自分の発見、ていうのかな。
それを発見したら、自ずと問題やらしこりはほぐれていってくれるような気がしている。別に頑張って物事に立ち挑んでいかなくてまも、相手から勝手に変わってきてくれるというのかな。
とかまぁそんな事を考えさせてくれるエッセイでした。田辺さんのエッセイもなかなかに、よいです。