イギリス人旅行家の眼からみた明治時代の日本がわかる一冊です!
2020/03/03 12:32
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、明治時代にイギリスの女性旅行家であったイザベラ・バードが著した『日本奥地紀行』の読書会を開催した日本観光文化研究所での講義録をもとに編集された一冊です。同書には、イザベラ・バード女史の眼から見た、日本人の何気ない暮らしや文化が垣間見られます。同書は、「地上の楽園」、「蚤の大群」、「子どもたち」、「貧しさと豊かさ」、「祭り」、「女の一人旅」、「アイヌの人々」といった構成からなっており、明治時代の日本の農村での風景が生き生きと描かれています!
異文化体験の元祖的存在かも
2017/10/10 08:00
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
異文化体験はいつの時代でもある。しかしイザベラ・バードのように19世紀
イギリス女性が、日本や朝鮮など世界を旅行し、その体験を書いているのは珍しい。彼女は異文化との出会い肯定的に捉え、自分のこれまでのイギリスなどでの体験
の範疇を超えることを楽しみにしているようだ。現代は、パック旅行がありツーリズムも盛んで、それなりのお金さえ出せば、すぐにそれなりの海外旅行も出来る。せっかく未知の外国へ行ったのに、買い物に気を取られ、旅の後の思いでもない。未知の土地や未知の文化あるいは異文化との接触を楽しまなければ。彼女や彼女の旅行記をそのことを思い出させてくれる。
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宮本常一『イザベラ・バードの旅』講談社学術文庫、読了。本書は副題「『日本奥地紀行』を読む」の通り碩学の手による購読講義録。英国人女性旅行者の眼差しの記録の中から、当時の人々の暮らしの有り様を読みとり、自身の膨大な知見とすり会わせていく。伝統は明治に創造というが襞に分け入る好著。
解説(「差別とは何か、という問い」)は赤坂憲雄さん。バードも差別感覚とは無縁ではない。しかしその文明的記述は素直すぎる。より問題なのは、日本人社会内における(特にアイヌに対して。同行通訳者の伊藤は「犬」と呼ぶ)構造の方が錯綜している。
バードの本文に寄り添いながら、現代の日本、そして近代化以前の日本を対比する宮本の視線は、日本という世界の貧しさ、そして多様さ、そして庶民の知恵を浮き上がらせる。昔は良くもあり悪い。江戸しぐさ的イデオロギー的歪曲の懐古趣味を退ける一冊。
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宮本常一がイザベラ・バードの「日本奥地紀行」を解説している。
「日本奥地紀行」は明治11年にイザベラが横浜~北海道を旅した話であり、宮本が全国を調査した経験を元に、イザベラが話す明治の地方の暮らしを補足していくスタイルとなっている。
●彼らはめったに着物を洗濯することはなく・・・夜となく昼となく同じものをいつも着ている。(奥地紀行)
一年に一枚くらいの割合で着破ったと考えられるのです・・・着物一人分の一反を織るのにだいたい一ヶ月かかるとみなければならない・・・働いている上にそれだけのことをしなければならないのです。(宮本)
●日本人に病気が多い・・・その大部分の病気は、着物と身体を清潔にしていたら発生しなかったであろう・・・(奥地紀行)
日本人はきれい好きである、風呂好きであると言いますが・・・村へ入ってみると風呂のないところが非常に多かったのです・・・戦前はすごく垢を溜めた子が多かったし、特に洟をたらし、それを袖で拭くものですから袖口のぴかぴか光った服を着ている子が多かったのです。(宮本)
●昔アイヌ人は弓矢・槍・ナイフで戦ったが、彼らの英雄神である義経が戦争を永久に禁止したので、それ以来は両刃の槍は熊狩りに使われるだけになった・・・(奥地紀行)
「義経記」がアイヌの世界に入っていって、ここでユーカラと同じように語り継がれたのです。源義経は北海道へ行きアイヌの世界に入り、そこで英雄として祀られた。
アイヌはかつて北海道で一つの統一体をなしていたことがあった。北方民族と戦って、その時の様子をうたったのがユーカラなのだ。少数民族の場合、琉球王国は形成され、アイヌは国家的要素をかえって解体させていった。(宮本)
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イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を、民俗学者の宮本常一氏が解説する作品。宮本氏が実際に行った講読会が、この作品のベースとなっている。
本作を読む前は、イザベラ・バードと宮本常一と聞いて、チョット意外な組み合わせだなと思ってしまった。でも、何の先入観も偏見も無い外国人が描いた、開国直後の素の日本という背景を考えれば、実は民俗学的要素が満載なのである。
昔の日本にはノミがたくさんいて、ノミによる寝不足解消を祈願したのが、ねぶた祭りの起源であった事。そして日本の警察官は元々士族階級だったため、一般の人々に対する態度がデカい事などなど、バードの描写に対する宮本氏の説明がとても面白い。
バードの旅の途中によく登場する、好奇心旺盛でデリカシーの無い日本人の態度が印象に残っていたが、実はこの好奇心の強さこそが維新後の日本発展の一因であった、という考察には妙に納得してしまった。
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まだ「江戸」が生きる東北・北海道へのイザベラ・バードの旅である『日本奥地紀行』を解説する本だった。バードの著した部分は必要最小限に引用され、本著者である宮本博士の民俗学的な所見が講義録に良くまとめられている。関西地方の旅先で本書のほとんどを読めたことは、当時と現代の交通を比較する面白さを味わわせてくれた。旅先の大型書店で『日本奥地紀行』を入手できたというオマケ付き!
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イザベラバードも歩いたが、宮本常一も歩いた。
日本人の衛生観念は、割りと最近になって発達したことがよくわかる。
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宮本の講演から起こされた本なので、とても読みやすいが、「日本奥地紀行」そのものを読むのと内容は変わらない。ただ、宮本が日本奥地紀行の「どこに着目したか」がわかる。
バードが訪れた東北の盆地、港町、山中の集落の風俗で、特に当時の日本人の衣服、居住まい、大人しいさま、臭い、蚤の多さ、通訳である伊藤の蕃なとことと責任感、車夫、馬子、子供をいつくしむ様子、リベートの習慣など。
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バードさんの旅の記録を、日本の民俗学者さんの視点で。
なかなか興味深い内容。
講演の記述のらしく、お話を聴いている感じでとても読みやすかった。
『日本奥地紀行』を「はーん、ほーん、ふーん」(鼻ほじほじ)で読み流してしまった(失礼な)私には、とてもよい解説書だったと思う。
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バードの『日本奥地紀行』を、つっかえながら、しかしもう半年以上、読み終えられず。
今、青森あたりを、バードとともにうろうろしている(苦笑)。
いや、読みはじめたら面白いと思うところもあるのだが、なかなか手が伸びない。
これを打開するには、優れた先達あれ、と思い、本書を手にする。
この本を読むと、バードの紀行文のどこを面白がっていいか、とてもよくわかる。
自分だけでは、「へ~、当時はそうだったんだ」で終わってしまう。
それが、博識の宮本さんから、次々と関連情報が示されるので、バードの記述が立体的に見えてくる。
例えば。
バードが宿屋で障子に穴をあけて覗かれることに閉口する記述は有名だ。
彼女はお金が盗られるかも、とも心配しているのだが、宮本さんは昔の泥棒は放り出してあるものは盗らなかった、という証言を引っ張ってくる。
昔は家に鍵をかけなくても平気だった、と祖父母の世代の人からよく聞いたものだ。
これは狭い地域で限られた人間関係の中で暮らしていたから、と解釈してきたのだけど、泥棒の側にも今とは違う仁義の通し方があったのかも、と思わせられるエピソード。
こんな風に、バードの記述を通して、現代の日本との違いに目を開かせられる。
清潔度や健康の面で、本州にもずいぶん地域差があったことにもバードは触れているが、アイヌはこの点で高く評価されている。
まだ北海道に入ってからの部分は読んでいないので、どんなことが書かれているか楽しみになってきた。
やはり、この本を読むという判断は間違ってなかった、と自画自賛して、レビューを書き終えることにする(笑)。
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宮本常一による日本観光文化研究所の講義録。
わたしも少しはものが言えるようになったと思っていたが、この方の膨大な知識量を浴びるとやはり言葉がない。同じ本を読んでこれほどにもゆたかに思索を巡らせるのか。もう少し知識が深まったときもう一度読みたい。
巻末の赤坂憲雄氏による寄稿が非常に、ひじょーーに興味深かった。だよねえ。
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イザベラバードの紀行の原文を読もうと思ったことがあるが、なかなか難しくて理解出来なかった。
本著はそれをバードが感じた当時の日本文化や習俗について解説をおりまぜて触れているため、とてもわかりやすかった。
日本人がある種醜い人種とされている一方で、アイヌ民族にバードが共感を得ているところが驚きだった。何より当時の日本の生活レベルの低さに正直驚かされた。
ノミの大群。ある意味、今の時代に生きれてよかったと思う。
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イザベラ・バード著『日本奥地紀行』で描かれた各トピックに対して民俗学者である宮本常一さんが知見を語る。76年〜77年に行われた講義録。
先に『日本奥地紀行』を読了していたため、大変興味深く読めた。同じ本の何気ない一節でも、民俗学のプロの目から見るとこのように読めるのだなと。勉強になりました。
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時に外国人の視点は気づきにくい他国の真実を記録してくれる。魏志倭人伝、フロイス、サトーなど。同様にイザベラ・バードの紀行文を民俗学の泰斗が読み解くと実に新鮮な視点。
やはり民俗学者の視点は面白い。実は普通の日常の生活文化や風習は記録が残らないので難しい再現、想像できない、ところが多いが、たまたま外国人の紀行文の記録が貴重な資料となる。
イザベラ・バードはちょっと難しい本だが、本書は講演会の内容そのままなので読みやすい。