超ハードSF、ハードすぎて一般人にはある種、観念的に感じます
2006/08/29 18:56
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大森望さんが、現代最高のSF作家と絶賛するグレッグ・イーガンの
「ディアスポラ」です。
難しい、難しいと聞いてはいましたが、噂に違わぬ作品で細部は殆どなにが書いてあるのか判りません。
しかし、話の大枠は大変わかりやすかったので、ちょっと吃驚!?。
大森望さんの、「わからないところは飛ばして読め!」を
実践させていただきました。
今回は、完全に理解しているとは、思えないので突っ込みは、ご容赦してください。
時は、今から1000年後の30世紀あたり、、。
人類は、もう肉体のくびきを必要とせず、電子的情報として存在し
大量にコピーされて繁栄しています。
主人公は、その中で人類のDNAを直接のオリジナルとしない
”孤児”と呼ばれる、ヤチマ。
が、一方でこの社会ではサイボーグみたい機械の身体で生きる人や、
以前肉体で生きている人もいます。
ところが、中性子星同士の衝突による、地球環境の破壊により
人類は、電子的コピー群を放ち宇宙進出をします。
というのが、大枠です。
この概略というか、大枠は、大変に判りやすいのですが、
小さい理論なんかが、理系用語(特に数学の位相幾何、トポロジーのあたり)のオンパレードでなにがなんだか、わかりませんでした。
特に、次元が変化した上での宇宙のあたりなど、私には、ちんぷんかんぷんでした。
巻末に用語解説がついているのですが、
この小説内で作られた、用語は意味があるというか、よくわかるのですが、
数学の用語は、数学のその分野そのものが、判っていないと、
ダメですね、、。
SF的に一番私が”萌え”たのは、なんといっても、
冒頭の電子情報化された生命群、が、多量にコピーされ教育される
シーンですね。
(最初だから、理解しようとする元気があったんだろう、といわないように)
ここが、一番具体的に想像しにくいところと、大森さんが書いていましたが、
このイメージというか、描写は、素晴らしい一言です。
ガジェットだけ、SF的なもの出して、SFだなんて、言っている作家は
到底太刀打ちできません。
大枠が判っただけでも、良いかなぁと達成レベルをぴゆーっと
下げて、喜んでいます。
アイデア盛り沢山の本格的ハードSF
2006/04/10 20:38
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
何冊ものSFが書けそうのほど、アイデア盛り沢山の本格的ハードSF。コンピュータ工学、量子力学(超紐理論)、宇宙論、天体物理学、分子生物学、遺伝子工学、などの様々な分野の最先端の科学知識をもとに、それらを空想的に外延し、ストーリイにもりこんでいる。最初は「順列都市」と同様なコンピュータのソフトウェアとして、バーチャルリアリティ世界に生存する人格の創造と成長の話。つづいて遺伝子工学で自分達を含め周りの生物を改変した人びとやロボット化した人びとの登場、連星中性子星の衝突による地球環境の崩壊をきっかけとした宇宙探検、先進種族を探す多次元宇宙への探索、奇妙で異質な生命体の登場。豊富で圧倒される内容である。本格的でハード的すぎるようなところもあり、自然科学にあまり関心も興味も知識もないと、読み通すのに疲れるだろう。
究極のハードSF
2017/04/29 14:40
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投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
裏表紙に書かれた謳い文句の通りに、究極のハードSFでした。
一度読んだだけでは、内容が全く理解できませんでしたが、二回読むことで内容を理解できました(理解しきれたとは思っていません)。
壮大な宇宙を探求しようとする姿を描いた宇宙SF、未知の生物との遭遇というファーストコンタクトSF、デジタル世界で生きる人間の姿を描いたサイバーパンクSFなど、様々な顔がこの作品にはあります。一冊読んだだけで、いくつものSF小説を読んだ気になれます。
これが理系妄想の噴出なのか
2007/03/21 01:33
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
よい知らせと悪い知らせが。まずこの話はとっても面白いです。しかし、とっても読みにくい。
人類はコンピュータ上の仮想現実世界に自分の人格を丸ごとコピーして、その中で生活する技術を達成し、そこで暮らす人々と、肉体を持ったままで生きることを選択した人々に分裂している。さらにDNAに適当な突然変異を加えてまったく新しい人格=孤児をも作り出している。その一人ヤチマが本作の主人公であり、前半部は彼の成長と並行して進む。
これらについての技術的な詳しい説明が冒頭から延々続くのは、正直のところ、読んでいて疲れるし、実はつまらない。以後その手の、中性子星の連星についての理論、ワームホールの幾何学的理論と量子力学的実現方法といった緻密な描写が10ページ単位で頻出するのだが、好きな人でなければ適当に読み飛ばすのが吉でしょう。数式を使わずに詩的なイメージを提示しているという点で、優れものではあるけれど。
そうして地球に降り掛かる災難と、人類の宇宙への旅立ち、そこでの異種生命との邂逅などの物語が連作的に綴られる。特に「ワンの絨毯」のエピソードが秀逸、素晴らしい。本書は元々はこの短編を長編に膨らませたものということだが、それだけのことはある。海に覆われた惑星の水底に静かに佇む絨毯状の生物、果たしてそれには知性があるのかという探訪なのだが、知性とは、それを生み出しうるものは何かという問いに、(本作の)人類に対する強烈な皮肉になっている。またその後のエピソードではどんどんスピード感を増して、人類はさらに次元と時空を飛翔、行き着く先には突き抜けた快感がある。全編を通してみると、仮想世界的な存在の人類と、物理的世界のインタラクションの物語とも言えそうだが、そこらへんの追求は薄いし、「ワンの絨毯」のトラウマをもっと強く拡張した方が面白かったのではないかという気もする。
科学的説明のくどさは、ペダンティズムでもないし、特に深い意味があるというより、作者の趣味で好きなだけ思っただけ書きまくったという印象で、自分を開放し切った末の混沌と考えれば、それもまた面白い味かもしれない。ここまで徹底していれば、ある種の極北であろうし、奇書と言ってさえいいかもしれない。
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投稿者:Denny - この投稿者のレビュー一覧を見る
意地だけで読了しました。特に、延々と続く導入部、「認識」がテーマですが、あまりにもわかりにくい表現は、翻訳ものだからでしょうか?忍耐力を養う本!(苦笑)
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数学用語に溢れたSF。解説には「解らない言葉が出て来たら飛ばせ(大意)」と書いてあったので、私も「だーいたい」で読みました。スケールのでかさがとにかくスゲーです。1000年くらい、まとめて過ぎていきます。最近のSFは『生身の人間』が活躍する場がないのかしら、私はむしろそういうのオッケーちゃんだわ、と思いつつ読み終えました。イカス。……読む人を選ぶ本なので、できれば書店店頭で数ページ眺めてから読むのを検討した方が良いです。
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西暦3000年頃のお話。理論的な部分はよくわからなかったが、概念的には非常に興味深かった。
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あーSF読みでよかった。
とは言ってみたものの、作中に登場する理論、実はほとんどイメージできないんだよね。読み終わったあと、板倉氏やそこ経由イーガンのページで色々と補完。多少イメージが。
主観的宇宙論3部作がどちらかというと哲学的で理論を軽く読み飛ばせば数学も物理も関係なく大技を受け止められたのに対して、こいつはかなり難物。多次元にある程度イメージを持っている人で無いとわけわからんかも。
しかし、内容はSFの王道、世界の危機を救うため、遠い宇宙の旅に出る。うーん。しかも登場人物がふるっています。いわゆる人間ではないし。相変わらずしばらくは世界背景を探るためのお話が続きますそこで語られるのはソフトウェア生命(というか知性?)の誕生と成長、肉体を持った人々の価値観との相違。そして世界の危機。世界観は「順列都市」に近いのかな。
宇宙の旅に出るともうめくるめく理論の世界。
最後にたどり着くのは…
幾人かのSF作品を思い起こすラストですが、実に味わい深いです。イーガンの長編にしてはしっかり筋の通ったストーリーですね。これは2周目いかないと。買って良かった。
※2周目の冒頭でいきなりびっくりと言うか。そうか…
ただただしさん(かの有名なtDiaryの作者)の誰かのBlogでイーガン読むなら短編・長編はSFマニア向けとの発言に対して翻訳者山岸さんが降臨した一件。僕も長編は非SF読み以外にいきなり薦めるのは危険と思います。SF読みとは言わなくてもSF映画(と言ってもスターウォーズとかじゃなく)や漫画あたりの経験が無いと想像しがたい世界じゃないかなぁ。世界が浮かんでこないとそんなに面白くないよなぁ。
本筋から考えると確かに主観的〜3作はSF的ガジェットは世界観の補強に過ぎないんだけど。ディアスポラは世界観そのものに直結しているから、想像できるかできないかってのは大きな違いじゃないかな。
甲殻機動隊とかそういうのを面白いと思う人は受容体ありと思います。山岸さんいうところの「価値観・人間観・人生観・世界観を根底からゆさぶるところ」を体験するにはやっぱり大仕掛けの入った長編を読んで欲しいところです。
まあ、僕は半端な理解で楽しんでいるので大丈夫でしょう。
興味を持たれた方は「しあわせの理由」あたりから是非。
ディラックのベルトトリック、知らなかったけど面白いな。
http://gregegan.customer.netspace.net.au/APPLETS/21/21.html
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超難解な擬似科学理論に悪戦苦闘しながら、しかし中盤以降は読んでいて本当にワクワクした。ストーリー自体は、主人公が宇宙や未知の世界を冒険し、地球を未曾有の危機が襲い、地球外の知的生命に出会い……とかなり王道ながら、そんな王道のストーリーが、徹底的に作りこまれた擬似科学理論の生み出す説得力に支えられることで新鮮さをもって蘇る。
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こてこてのハードSF。ハードSF好きの私にとっても、なかなか骨のあるヤツだった。
舞台は1,000年後の未来。人類の大半が生身の肉体を捨てて、コンピュータ上のシミュレーションとして生きている世界。肉体を捨てていない人間も大半はDNA改造して特殊能力を備えているし、ソフト化しているけれど、ロボットボディーに入っている人間も居る。
そして主人公は人間ではない。
ソフト化した人間もシミュレーション世界の中で子供を作って繁殖しているのだが、主人公はコンピュータ上の管理ソフトが「DNAの未知の領域のテスト」用として定期的に生み出している「孤児」なのだ。人間と等価では有るが微妙な存在だ。
物語の最初のヤマ場は、DNAの情報がコンピュータのメモリ上に展開され、物理的な「発生」の段階をシミュレートして生み出される過程の描写である。
ようするに、この世界の人間は「人格」がシミュレートされているわけではなくて、「人間を構成する分子の一つ一つ」までを全て演算で作り上げている。
コンピュータサイエンス的にいえば、とてつもない力技だけで構成されている世界だ。
現実世界とのコミニュケーションは、世界中にばら撒かれたナノマシンが入力を担っているらしい。
肉体人をスキャンしてデータとして取り込むのもナノマシン。分子の一つ一つまでスキャンしているという設定なので、スキャンされると生身の人間はバラバラのドロドロに分解されて死んでしまう。その描写はほとんどスプラッタ。
ただ、この設定では一人の人間を生かすにも、とてつもないコンピューティング・パワーが必要なのは容易に想像がつく。現代では数えるばかりの分子の振る舞いをシミュレートするにもスーパーコンピュータが必要なほどだ。例えば、製薬会社が新薬の実験をするのは良い実例だ。
この時代の「都市」は、シベリアの永久凍土の地下数100メートルに隠されていたりするのだが、どんなに進化したコンピュータでも人間の分子の振る舞いを丸ごと計算させるとなれば、とてつもないエネルギーを消費し、発熱するはずだ。
まあ、作者は別の作品では人間をシミュレートするにはとてつもない計算資源が必要だというテーマの作品(順列都市)も書いているので、こちらの作品の矛盾は、 魔法として処理しているのだろう。
そういういみでは、これはとてつもなくハードな仮面をかぶったファンタジーSF というのが正確だろう。
しかしこの作品、後半は「宇宙論」になってしまう。
近傍の中性子星が起こしたX線バーストの影響で、肉体人が滅びてしまう事件を受けて、超光速航法の研究をしたり、都市のコピーを1,000個作って、銀河に新天地を目指して離散してしまう。
とにかく話のスケールがでかい。
話はこれで終わらず、問題のX線バーストは、一中性子星が消滅するに留まらず、銀河のコアがバーストしてしまうことが分かり、銀河系をどれだけ逃げても絶滅は回避できない…ということから、異次元に逃げ込む話に進む。
地球より進化した異星人が「平行宇宙」を渡っていった痕跡を追って、異次元から異次元にほとんど無限の平行宇宙を渡り歩く話になる。
ここまで来ると、あまりの話の大きさに意識が朦朧と…(笑)
主人公たちは、コンピュータ上のプログラムなので、銀河や平行宇宙を旅している間は動作速度を落として「主観的早回し状態」で居るので、何万年経過しようと苦にならないのがまたなんとも。
とにかく、話の大きさでは群を抜く作品で、人類がコンピュータ化して不死になっているのも、普通ならそれでけで一本の作品のネタだが、この作品にとっては、後半のとてつもない宇宙の旅に主人公が立ち会うために必要な単なる設定とも言える。普通の人間では、何千、何万年も生きないからね(^^;
…と、スケールは大きいこの作品だが、一方やたらと「ナノマシン」 が活躍する。
仕舞いには「フェムトマシン」で原子を直接いじっちゃうとか、とにかく小さいほうにもとてつもなく小さな話が出てくる。
まあこれはどこから見ても「魔法の粉」みたいなものだ。
エネルギーの供給はどうなっているかとか、自力で移動できないだろうとか、無数のナノマシンを統一した意思の下で動かす方法が無い(通信出来ない)だろうとか、サイエンスの部分からはかなり無理がある。
イーガンは「ナノマシン」大好きみたいなのだが、何しろ便利すぎて作品が軽くなってしまうのは欠点だ。全編にいくら物理学用語、コンピュータ用語がむき出しで散りばめられていても、あるいは、ナノ、フェムト、ギガ、テラなどのスケールを展開しても、魔法の粉(ナノマシン)で問題解決しているのでは腰砕けというか反則技っぽい。
もちろん、ワープ航法や人工知能も「ウソ」だが、ナノマシンは便利すぎて、節度を持って使うのが難しいという感じだ。
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久々に衝撃を受けた、ハードSF。
部分的に今の理論とかと違うところもあるけど、もう10年以上前の作品だから許す。
読後感想
「人間って根本的にはバクテリアと同じなんだなぁ」
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肉体に縛られない、肉体無しでの出発点で個を獲得するというものとは。
ヤチマは長い長い旅をして吸収しては切り離し、時にとんでもなくのんびりしてみたり、でも割と大冒険。
わたしは文系脳なので、理数脳の文はチンプンカンプンですが、一番良い方法は読み飛ばすことです(笑)
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イーガン面白いよといわれ
絶賛されていたので購入。
初読は追いかけるのに精一杯。
頼むよ、幾何学持ち出さないで(泣
現在3周目、やっと輪郭がつかめてきましたよ
(ヲイ
「長炉」の長さに目まい。惑星間ぶっちぎる加速器ってさ・・・
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最初から最後まですばらしかった。
文系の自分には科学的な話はまったくわかりませんが、そんなことは関係なく面白い。
(解る人にはもっと楽しいのだろうな、と思うと羨ましいですが)
たった二文字にこめられた作者の哲学に感動。
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イーガン節であるコンピュータの中で生きる人たちの描写、宇宙の果てで出会う人類以外の生物の描写、こういった部分は読んでてドキドキさせられる。
ただ、難しすぎた……(;´Д`)
あとがきに「難しいと思ったところは、飛ばして読め」とある。
あとがきはいつも最後にみるので、この「読み方」を最初に見ておけば、もう少し気楽に読めただろう。
と言いつつも、イーガンには不思議な魅力があって、またイーガンの本を手に取ってしまうんだよね。