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投稿者:井沢ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代初めに浪人を集めて討幕を目指した由比正雪と、中国の明の再興を果たそうとして日本に援軍を求めながら抗清活動をしている鄭成功、この二人の実時の人物に、大盗禅師と浦安仙八という架空の人物をかませた幻想小説だが、比較的面白く読めた。妖術を使ってのストーリーなので現実性は乏しいが、割り切って読めば興味をそそられる内容だった。
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投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大坂落城から30年。摂津住吉の浦で独自の兵法を磨く浦安仙八は、豊臣浪人を父に持つ。丸橋忠弥という浪人に会い、自分の小屋に10日ほど泊めたため、浪人を泊めてはならないという法律に触れ、役人から呼び出される。亡父の境涯を継いで浪人になるなら、即座に所払いと言われてしまう。
司馬作品には、強烈な個性を持つ主人公がぐいぐいと周りを変えてゆくものが多い。
その場合、「歴史的なあの事件には、実はこの人が関わっていたんですよ。」と意外な真実が明かされれば、者は主人公にどんどん引き込まれてゆくが、今回は、主人公である仙八が丸橋忠弥、鄭成功、由井正雪などの歴史上の人物と出逢い、影響を受ける形になっている。そうすると、今度は仙八の目を通じた登場人物達に対し、読者が反発または共感を覚えていく形となる。
けれど、仙八が一貫した考えに基づく行動を取っているように見えず、かといって異なる考え方に遭遇する度に、葛藤して考えを修正しているようにも見えない。
そのため、彼の批判する対象、或いは傾倒する対象に対しても、読む側は、全面的に彼の意見を受け入れられない。
「この日本は人間が細かすぎる。細工が多すぎる。」
と、偉そうな事を言っているが、
「そういうあなたは、ただ流されているだけでは
ないのか?そのあなたの言葉に、どれほどの誠実があるのか?」
とこちらが言いたくなる。
思想論としての読み方はできそうもない。
大盗禅師、仙八の前に現れる男か女か判然としない蘇一官の放つ妖しさ全開の、独特の雰囲気。
倒幕を目論む由井正雪と明朝復興を掲げて戦う鄭成功の計画のリンクという斬新な発想。それでは、 東アジアを舞台にした一人の男の冒険譚として、娯楽作としてこの作品を楽しもうか。そう思ったが、今度は仙八の言葉に出てくる国家論、人物論が煩い。
思想論、エンターテインメント、どちらにも寄れず、両方をブレンドさせる事もできなかったのが、全集未収録の理由か。
ただ、ある一つの事には、はっとした。
過去を見ている歴史作家は、未来を予見できる慧眼を持っているのか。
5000人の公儀に虐げられる浪人集団の頭領で、幻術で人を惑わす大盗禅師という存在、浪人集団には厳粛なる尊卑の順序があり、高名をたてればその中で位階の昇進が可能となる組織上の決め事が、20世紀末日本で起こった事件と密接な関係を持つ団体のそれと、一致していたのは、単なる偶然だろうか。この作品を発表していた時には、まだ、あの事件は起きていなかったのに。
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まあ見事に奇奇怪怪。
夢か現か・・で繰り広げられる物語は妖しく、登場人物たちはみな個性的で味があり、内容のわりにまったーり気分で読み終えた。
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・9/29 由比正雪が出てくるなんとも怪しげで幻想的な物語だ.どこまで史実でどこからが創作なのかすらわからない.なんとも時代SF的でもあるし、どういう展開になるかも皆目検討がつかない.
・10/3 結構な長編だった.この人もこういう幻想的な歴史小説を書くのだとは知らなかった.こういうのにもこの人の独特な歴史観が入ってるんだからすごい.でもやっぱり史実に基づいた小説の方が俺は好きかな.
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登場人物はみな個性的でよかった。
ただ娯楽小説といえばいいのか、話の奥深さはない。結末も中途半端に思えた。
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由井正雪の乱と鄭成功の抵抗運動を結びつけたフィクション。幻術が頻繁に出てくる。一介の兵法使い浦安仙八が、様々な人物に翻弄され意のままに操られるが、やがて自分の意志で行動しようというまでに成長する姿を描く。11.8.6
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司馬遼太郎版「国姓爺合戦」というべき傑作。
島原の乱の数年後、世は将軍家光のもと幕藩体制がかたまりつつあった。
主人公の浪人剣客 浦安仙八は、怪しげな術を使う大盗禅師の導きにより、幕府転覆を狙う計画に加担させられるのだが・・・。
タイトルの大盗禅師をはじめ、由比正雪、鄭芝竜、鄭成功や、幕府隠密、両性具有の美女など多彩な人物が織りなす群像劇が幕を開ける!
国内に充満した浪人を糾合し、幕府転覆を狙う由比正雪。
幕閣は由比正雪に警戒の念を高めながらも、国内に充満する浪人問題に頭を悩ませる。
一方支那では、南下する女真族に追いつめられた明朝は風前の灯火。忠国の念から立ち上がった海賊 鄭成功は、女真族に対抗するべく援軍の要請を徳川幕府に送る。
江戸・五島列島・廈門へと物語はスケールを広げながら男達の闘いを描く。
司馬遼太郎の小説は、膨大な取材と資料に基づいているため、歴史の解説が緻密である。
時折小説としては解説が多すぎるような印象をもつのだが、この作品のように虚実入り乱れた物語では、歴史解説が非常に効果的に時代の空気を伝えてくれる。
また、司馬遼太郎の小説には珍しく幻想的なシーンも多い。個人的には幕末の硬派な小説(やや時代論的に感じるが)よりも此方の方が好みに合った。
物語設定・登場人物の魅力・スケール感などどれをとっても素晴らしい。
ただし全集未収録作品といういわく付きの一冊でもある。
もしかして、司馬遼太郎本人はあまり気に入っていなかったのかもしれない。
司馬遼太郎のファンからしたら異質な作品にとられるかもしれないが、私的には最高のエンターテイメント作品だと思う。
伝奇小説好きの方んはオススメの一冊です。
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司馬遼太郎のファンタジー(フィクション)小説。妖術を使う坊主が主人公の兵法者(浪人)をそそのかし、徳川幕府を転覆させようとする、ある意味ぶっ飛んだストーリー。なぜか明に応援を求めに行きながら、勢力を急拡大している清を撃退しながら進み明の一将軍になってしまう。ん~、、、、ま、いっか。
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関ヶ原から40年、天下の泰平なるを不満とし、徳川幕府転覆を企む浪人たちの物語。由比正雪など実在の人物を軸に、架空キャラを絡ませる幻想小説で、表題の禅師は天皇のご落胤という設定。浪人たちを焚付け皇室主導の世を目論む。司馬作品の中ではダントツにつまらん。
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司馬氏ご自身が全集への収録を否定した作品なのだと言う(巻末の解説による)。慶安事件(由比正雪らによる徳川幕府へのクーデター=完全な未遂)と中国の明末期の鄭芝竜、鄭成功親子による抗清復明、日本乞師(にほんきっし)を連接させた着想がずば抜けて面白い。タイトルの大濤禅師、由比正雪、鄭親子、蘇一官、石谷将監、そして一番傍観者的な主人公である浦安仙八。みなそれぞれ全く別は方向に魅力的です。司馬さんの歴史小説と時代幻想小説の二つの類型では、着想が前者で中身が後者になった不思議な境界にある小説。それ故に司馬さんは自分の脳梁の秘密が見えてしまいそうなこの小説を、全集に収録すること拒否したのかな。
国盗り物語から始まる戦国時代の人々の超エネルギーは、徳川治世の何処の点へと収斂して、それは消えたのだろう。明治維新のあのエネルギーの収束点を、『翔ぶが如く』や『歳月』に読むとして、戦国時代の収束点は、『城塞』ではまだ見つけられなかった。この本に、そのしっぽの点を見つけた気がするのです。このことからも、この小説を幻想小説の類型側に簡単に整理出来ませんでした。西軍側についた者達の、一旦は大名として残りはしたが、後に改易されたもの、浪人として最低の生を続けるしかなかった者達に残っていたエネルギーが徳川幕府の封建制が完成する中でその最後振幅を止める瞬間。
幻術、妖術の奇怪さ妖艶さも、いわゆる完全な幻想小説の系譜に劣らず妖艶です。ストーリーが日本の国土を飛び出してしまう点で、後の『韃靼疾風録』のサイドストーリーの風であることも面白い。本作連載の全く同時期に『坂の上の雲』を連載されていたという事にも何と興味を惹かれます。
上記の複雑なバランス故に、読了後に司馬さんの作品が必ずもたらす、明確に浮かび上がる、強烈な教えや、テーマが1つに収束しないことは感じます。これが司馬さん自身による、この作品を没とされる理由か。
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司馬遼太郎の歴史ファンタジー(架空の物語)。
小説は歴史の研究書、学術誌では無いから、どれもファンタジーなのかも知れないが、極力史実に近いと思われる展開、会話を繰り広げるものもあれば、時代背景や一部の出来事だけを取り出して、他の出来事と関連づけてしまうものもある。これは後者で由井正雪や中国王朝「明」の崩壊などを上手く合わせた作品である。
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歴史上の事実を綿密な取材のもとに、まるで現実に見てきたように描くこの著者の作品の中で、この小説は異色です。
話のつながりが良くわからない。
どーしたんだこれ。
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司馬の幻の作品だそうですが、確かに幻想小説ともいうべき内容は本当に司馬?と思わせるようなところがあります。由比正雪、副主人公の剣豪浦安仙八、そして丸橋忠也、金井半兵衛、そして謎の禅師などが大物なのか、小物なのか、また何が現実でまた妖術に騙されているのか、幻惑に満ちた書き方で、実にユーモラスです。特に正雪と忠也が、正雪が勝った場合には友人になるという約束の下で対決し、正雪が槍の名人・忠也勝つという一件は本当に楽しい場面です。人物がどれもユニークで、奇想天外な展開が多く、また展開も早く、いつもの司馬の重厚さはなく、人を食ったような人物ばかりでお遊びの雰囲気が濃厚。司馬が「坂の上の雲」と平行して書いた作品だということに改めて驚きです。
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前半はいろんな登場人物が、偉大だったり滑稽だったり、、ちょっと高校時代の漢文を思い出す感じだった。後半は話がどんどん進んでいくようで、でも実は全くそうじゃなかったりで…
とにかく、様々な人物が、自分の考えを語り心酔し、それについて仙八が影響されたり馬鹿にしたり、、見方が何度もひっくり返ったりするところとファンタジーなんだけどリアルに思えちゃうところが面白かった!!
ラストの終わり方も良いなー。
結局仙八も大盗禅師も倭人なんだって感じで。
個人的に、人間の本性なんて簡単にはわからないし、口車に乗せられてすぐに信用したりするものじゃないなってことがとてもとても勉強になりました。
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曰く、全集未収録の幻の作品。
主題は謀反??
主題に沿って、中国史が絡んでいき、鄭成功が登場する。
台湾では英雄人物として祭り上げられているので、想像しながら楽しく読めた。
が、メインテーマは鄭成功ではなく、なんとなく登場してみたという話の筋の支離滅裂さ。
この流れが韃靼疾風録につながっていくのだと思えばご愛嬌か。