紙の本
レベッカに心ときめかせた人に
2015/08/31 09:48
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yomiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
『レベッカ』が大好きなので短編集も読んでみた。日常の生活や人間関係における心の機微や、ありきたりなようで意外な人間模様を、鮮やかにまたシニカルに描き出す傑作揃いだった。「十字架への道」で前歯が折れてしまった夫人をいたわる大佐が印象的。日々の生活をこうもドラマチックに描かれると、私の人生もそう捨てたものではないような気がしてくるから不思議だ。
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表題作は『赤い影』の原作
2016/12/09 15:06
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投稿者:igashy - この投稿者のレビュー一覧を見る
許容範囲のオカルト要素を混ぜて、主人公が異国で翻弄される状況を衝撃的な結末まで持っていく。英語学習用の小冊子が積読状態だったが、邦訳が出て嬉しい。
『ボーダーライン』は冒頭の父親の死のシーンの印象がほぼ薄れた結末であの種明かしがきたので一層衝撃。
『十字架の道』ご近所同士のエルサレム巡礼。旅先では色々本性が剥き出しになるんだよねぇ……。
末尾にSFが収録、年代広そうなので、各収録作品発表年の記載が欲しかったなぁ。
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判っていてもつい……
2022/11/27 15:10
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
不可思議で切ない物語。
幼い娘を亡くし、傷心を慰める為にヴェネチアを訪れた夫婦。レストランで居合わせて老姉妹が二人の側に女の子が見えたと妻に告げる。夫は嘘っぱちだと苛立つが、妻は興味を抱くし、どこか満足そう。表題作の「いま見てはいけない」はどこに着地するか最後まで目が離せなくなる。
バカンス先での災難が人生の景色を一変させた話。エルサレムへのツアー中のごたごたと参加者のの心の奥底を探る出来事を描く話。コンピューターで人の心や魂を量ろうと実験する研究者の話。それぞれが味わい深い。
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白眉は巻頭作
2018/12/06 12:01
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投稿者:暴れ熊 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大学時代に見た「Don't look now」というホラーな映画が気になってネットを渉猟して結局この原作にたどりついた。この作品集の中では、やはり「いま見てはいけない」が白眉の出来だと思う。ほんとによくできた作品だ。いままでミステリーというのは好んで読まなかったが、こういう作品なら読んでもいいなと思った。
あとは、「ボーダーライン」が面白かった。そして、せつなかった。「真夜中になる前に」は、ギリシアの海辺の風景が目の前に浮かぶようだった。「第六の力」(原題はThe Break
Through)は、私にはちょっと気味の悪い作品だった。SF仕立てと評する方もいらっしゃるが、私には、オカルトホラーであった。
趣向の異なるさまざまな作品が詰まった一冊。
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誰が正しいのか、誰を信用していいのか、自分の見たものを信じていいのか、足元の地面がぐらぐらするような不安感がたまりません。。。
「いま見てはいけない」が一番よく出来てる気がする。
解説は、デュ・モーリア作品と映画との関連をきちんと語っていて親切だと思う。
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映画『赤い影』の原作となった表題作をはじめ、日常を歪める不条理あり、意外な結末あり、天性の語り手である著者の才能を遺憾なく発揮した作品五編を収める粒選りの短編集。
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『レベッカ』『鳥』で有名なデュ・モーリアの短編集。短編と言うにはやや長いものばかりだが……。
デュ・モーリアの持つ不穏な感覚が堪能出来る1冊。表題作を始め、心理小説ともミステリともつかない作品がざわざわと読者の心を刺激している。中でも『ボーダーライン』は秀逸。
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これはもう一読くらいしたい感じ。タイトルのダブルミーニングとか、皮肉でひねった結末とか。「十字架の道」のような群像劇は相変わらず好き。デュモーリアっぽいのは、表題作と、「ボーダーライン」かな。
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短編集。冒頭では「普通」だった主人公が徐々に常軌を逸していく……というパターンが多かったような。設定としてはものすごいことが起きそうなのに、予想していたほどのことは起こらずに、終わってしまう(短編ですからね)。くるぞ、くるぞ、くるぞ……こーなーいー(もしくは「そこまでかー」)という感じで。でもこれがクセになりそうです。「第六の力」は長編で読んでみたいですね。
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・ダフネ・デュ・モーリア「いま見てはいけない デュ・モーリア傑作集」(創元推理文庫)は表題作を含めて全5作、約420頁の短篇集である。最近の文庫は活字が大きいといつても、単純平均で80頁ある。長めの短篇といふところであらう。いかにもデュ・モーリアといふ感じの作品が収められてゐる。やはりおもしろい。
・巻頭の表題作「いま見てはいけない」は「赤い影」として映画化されてゐる作品である。未視感といふのであらうか。いや、起きるべき未来が見えてしまつた、あるいはまだ起きてゐない出来事を見てしまつたことから起きる悲劇である。ヴェネチアに滞在中のジョンとローラの夫婦にイギリス人老姉妹が関はつて事件が起きる。構成も起承転結がきつちりできてをり、老姉妹と知り合つてからの2人の心理の推移がよく分かる。これはジョンが老姉妹を嫌ひ、ロー ラは引かれるといふだけのことなのだが、個人的には、ジョンが老姉妹を嫌ふ様子がたぶんに教科書的といふか、紋切り型といふか、それにもかかはらずおもしろい。さう、ジョンがいかにもそれらしく老姉妹を嫌ふがゆゑに、ここに事件の起きる気配を漂はせて読む者を引きつける。しかも、まだ起きてゐない3人を見 てしまつて以後のジョンの行動もまた、所謂スリルとサスペンスに満ちてゐてなかなかおもしろい。要するに、これがデュ・モーリアなのである。映画化された だけのことはある。次の「真夜中になる前に」も似た感じの作品である。主人公の教師がクレタ島での休暇中に体験したスリルとサスペンス(といふほどのもではないか)である。起承転結もはつきりしてをり、3人の登場人物の描写もまた分かり易い。絵を描くのに最適なバンガローではあつても、それが最も外れに位置してゐたために起きる、これもまた悲劇であらう。不躾な米国人夫妻と知り合つて別れるまでの主人公の心理がおもしろい。先のと同様に、追ひつめられてい く、あるいは考へすぎていくのは、ある意味、紋切り型ではあつても、それがやはりこの作品にふさはしい。これらとはいささか異なるのが「ボーダーライン」である。父が死んだことにより、かつての父の親友を訪ねることにしたといふ物語である。父と友との別れの原因を突きとめるためにアイルランドまで行つて主 人公が知つたのは……最後にどんでん返しがあると言つては言ひすぎか。主人公は相手をだましたつもりでゐたのに、実はだまされてゐたといふことである。これも構成的によくできてゐる。初めのうちは何だこれはと思つてゐるのだが、そのうちに引き込まれていく。ところが、最後の「第六の力」はさうはいかない。 SF仕立てであるらしいが、あまり良い出来とは思へない。少なくとも私はかういふのは好きではない。アイデアを消化できずに終はつたのであらうか、内容的に中途半端であつて、とてもSFとは思へない。更に言へば、ここには先の作品のやうな雰囲気がない。「十字架の道」もおもしろくない。これも「第六の力」 同様である。物語は現代のエルサレム巡礼といふところであらう。その人々の行動が描かれる。従つて、一つのきつちりとしたストーリーはない。個々のエピ ソードの積み重ねである。ゲッセマネを求めての散策等で��登場人物の描き分けはなされてゐても、そのエピソード自体が私にはおもしろくない。どの登場人物 も不平不満を述べるばかりである。そもそもこれがおもしろくないうへに、その行動も、そこから生じる出来事もおもしろくない。これでは物語がおもしろくならうはずがない。そんなわけでこの作品集、私には前3編と後2編が対照的に思はれて、巧拙、良し悪しとに二分されたのであつた。
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これを読みながらずっと「レベッカ」を思い出していた。「昨夜、わたしはまたマンダレイに行った夢を見た」という冒頭の一文から、ミステリアスで繊細な物語は始まっていた。ここに収められた短篇にも、「レベッカ」と同様の叙情が漂っている。そのストーリーテリングを堪能できる一冊。
「レベッカ」では、謎めいた物語に引き込まれるのと同じくらい、舞台となるマンダレイという土地や、そこに建つ邸宅などに魅せられたように思う。奥深く、底の知れない気配が立ちこめていた。本書でも、「真夜中になる前に」のクレタ島や、「十字架の道」のエルサレムなど、その土地こそが主役なのではないかとまで思わせる舞台が、それぞれ異なる魅力を持って描かれている。
中でも圧巻なのは表題作のベネチアだ。ひたひたと水に洗われる古い街が目の前に立ち現れてくる。映画になっているらしいが、まことにさもありなん。場面場面が目に浮かぶような気がする。不安で不穏な空気がこれ以上美しく似合う街もないだろう。
ゆったり贅沢な読書を楽しんだが、一つだけ、最後の一篇「第六の力」にはやや違和感があった。他の五篇とは趣が違っていて、これはない方が全体としてまとまりがあったのではないかなあ。
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『レベッカ』が大好きなので短編集も読んでみた。日常の生活や人間関係における心の機微や、ありきたりなようで意外な人間模様を、鮮やかにまたシニカルに描き出す傑作揃いだった。「十字架への道」で前歯が折れてしまった夫人をいたわる大佐が印象的。日々の生活をこうもドラマチックに描かれると、私の人生もそう捨てたものではないような気がしてくるから不思議だ。
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この中には5編の短編がおさめられているが、一番好きなのは「十字架の道」。好みで評価は別れると思うけど、すべて私は好みです。この人の作品はもっと読みたい。
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前半の3作は終盤になるまで何とも言えない不穏な空気が漂い、話がどこへ向かうか分からないハラハラ感にページを捲る手が止められない。ただ予想外のオチは、イマイチなものもゾッとするものもあったけれど、総じて『鳥』の方が好み。
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古いファンタジー短編集
新刊で登場しているが、1960年代の古い作品だ。悪い意味ではない。十分に新鮮な物語fである。
普通の夫婦を襲う悲劇のきっかけが近未来の透視であったという「いま見てはいけない」。なかなかにおもしろい。どうなるんだろう?とワクワク感が先行する。
二番目の作品はイマイチわからない。「真夜中になる前に」というサスペンス調のタイトルだが、内容も含め意味がわからない。
驚きのラストという意味では「ボーダーライン」は傑作だなぁ。父親の驚愕の真相がラスト数行で明らかになる。ラブロマンスを交えなければさらによかったと思うけれど、すばらしいオチで満足。
交互に変な作品が出てくる気がするんだが、「十字架の道」は登場人物が多いからか、読むのに苦労した。人物像が脳内に結実しないから、だれがだれかわからなくなるという(日本人が読むときの)海外小説にありがちな混乱の中で物語が終わってしまった。
短編中唯一のSF色を持つ「第六の力」は楽しいけれど、オチがオカルトになってしまい楽しくはないな。
1960年代の作品という意味ではとてもすばらしいと思う。そうだなぁ、そこまで古くはないけれど、シャーロック・ホームズの色かなぁ。