大村益次郎になるまで
2003/01/23 23:19
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投稿者:吉田くに - この投稿者のレビュー一覧を見る
仏頂面で必要以上の事は一切しゃべらない。風変わりな身なりと性格だが物事を数値ではじき出す力、先を読む直感力において右に出る者はいない。将来は村医者で終生過ごすはずの男が面白い程人間の出会いに恵まれ時代が求める男となっていく様を描いている。本書の中では「村田蔵六」とまだ大村姓を名乗る段階ではないがのちにこの蔵六が幕府を倒す人物になろうとは。
過激な志士が横行する時勢の中、淡々と与えられた任務をこなす姿、同じ適塾出身の者達がやがてそれぞれの運命で道が分かれていく人生の面白さを司馬氏は巧みに描き、読者をひきこむ。「運命の糸」というものは本当にあるのかもしれない。司馬氏の文脈の中で単に出会ったけれどすれ違っただけの人、単なる偶然というべきなのか何度も出会う人などを重ね重ね読むうちに「よくよく考えると過去も未来も人間の出会いほど不思議で面白いものはないのかもしれないね」というようなメッセージを感じずにはいられない。さらに生誕の地を愛し誇りに思う心、何のために勉学をするのか、日本人の生まれ持っての器用さなど、現代人が知らなかったりかつ欠けがちな心を司馬氏によって再認識させられたように思った。
嘉蔵とともに蒸気船を造った話は、上巻のハイライトです
2023/09/09 22:12
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
適塾入塾から緒方洪庵の死まで。具体的には、適塾に入塾するや頭角を表し塾頭に。しかし、家業を継ぐため帰郷。お琴と結婚。その後、二宮敬作の斡旋で宇和島藩科学技術部門の最高官として出仕。ここで、あの有名な蒸気船建造を指揮。嘉蔵とともに蒸気船を造った話は、上巻のハイライトです。宇和島藩での役目を終え、単身江戸へ。ここで蘭学塾の鳩居堂を開塾するや評判となり、蕃書調所(後の東大)助教授や講武所の教授に就任。千住小塚原で女死刑囚の解剖現場で桂小五郎と遭遇することで、長州に士官する道が開けたところで上巻は終わり。
ところで、個人的には歴代大河ドラマの中でも名作の一つと思っている「花神」。愛川欽也演じる嘉蔵と中村梅之助演じる蔵六が蒸気船を建造するシーンは今でも覚えています。また、子供心ながら浅丘ルリ子のイネより加賀まりこのお琴の方が良いなと思いました。
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
大村益次郎はまるで愛想の無い仏頂面の男。大抵の人には面白味の無い人間と判断されてしまうだろう彼に天は異能の才を与えた。そんな男が歩むとてつもない道を描く物語。
我が国の近代兵制の創始者、大村益次郎の生涯を描いた長編!
2016/08/05 09:38
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、司馬遼太郎氏の作品の中ではあまり目立たないかもしれませんが、中身は他の作品と劣らない、すばらしいものとなっています。周防の村医師から一転して討幕軍の総司令官となり、維新の渦中で非業の死を遂げた我が国の近代兵制の創始者、大村益次郎の波乱の生涯を描いた作品です。彼の偶然か、それとも運命か、蘭学の才能を買われ、宇和島藩から幕府へ、そして郷里の長州藩へととりたてられていく激動の生涯は、読者を魅了することでしょう。
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幕末。誰もが理想を抱いて闘った時代として描かれる歴史小説が多い中、実務家として希有な軍事的才能だけを手に時代の「しあげ」をした大村益次郎。田中芳樹氏の「七都市物語」でも同じ言葉がありましたが、「軍事」というのは芸術と同じで、才能だけが勝負を決する。そういう意味で大村益次郎(村田蔵六)という男には、プロフェッショナル的な凄みを感じます。
ちなみに「花神」とは所謂「花咲か爺」のこと。維新という花を咲かせるため、時代が必要とした時にあらわれ、仕事が終わるとさっと消えてしまった男。この合理主義の無骨なおじさんの話にこんなロマンチックで神秘的なタイトルをつけた司馬先生に脱帽です。
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幕末・維新という狂気の時代で、技術で時代の寵児となった大村益次郎の生涯。時代に媚びるのではなく、自らの技術を磨き光を放つ生き様に、共感を覚えた。
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村医から一転倒幕軍の総司令官となり、維新半ばで非業の死を遂げた近代兵制の始祖大村益次郎の生涯を描く長編。全3巻の一巻目。緒方洪庵の適塾に入塾してから長州藩お抱えとなるまでを収録。
以前大河ドラマでやってた頃、一度読んでいるはずなんだが、さすがに内容は忘却の彼方。
長州ものなので高杉晋作とかもちらりでてきますが、むしろ桂小五郎が思いのほか登場回数が多い気が。
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司馬作品で最も好きなもの
薩長の幕末志士達が精神面を変えたとしても、それだけでは時代は変わらない。変えようとしても体だけが成長してしまい内臓がついていかない状況になるでしょう。そんな幕末、明治維新期の内臓の成長に注目
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幕末。大村益次郎の人生。桂がたくさん出てるのに惹かれて読んだけど、蘭学の世界も新鮮で面白かった。長州好きになるかもしれない。
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「世に棲む日日」と一対をなす大村益次郎(村田蔵六)の長編小説。上中下巻。本の題名は「花咲か爺さん」の意だそうで。読み終わった後、何だかその名前が愛しく思えてきました。 蔵六とイネさんの関係がとても好きです。「夏は暑いのが当たり前です」←笑う
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大村益次郎という人物が主人公です。私も最初はその名前さえも知らなかったのですが、
読み終わったあとは尊敬する
人物になりました。
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当時の学力の高さに驚き。
村医者から翻訳家そして戊辰戦争では作戦司令官。
もっと長生きして欲しかったうちの一人です。
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動乱の幕末期、倒幕派の司令官として活躍した大村益次郎こと村田蔵六の一生を描く大河小説。
面白い。司馬遼太郎作品では、『竜馬がゆく』の一巻と『燃えよ剣』しか呼んだことがありませんが、『花神』の上巻を呼んだ時点で私の中ではこの作品が、司馬作品の中での一位となりました。
何が良いかと言うと、主人公の村田蔵六が良い。
眉の異様に太い醜男で無口無愛想、趣味といえば豆腐で酒を飲むことくらい。カリスマ性が有ったか無かったかというと、多分無かったんじゃないだろうか、と思います。言ってしまえば学問馬鹿、しかしその学問には滅法強い。
彼は無駄だと思うことを全くしない。だからこそ一芸に秀でていた。
彼は別に、時代を切り開こうとは思っていなかった。彼が時代を動かしたのでなく、彼の秀でた一芸を、時代が求めた。
『燃えよ剣』も『竜馬がゆく』も確かに面白い。だが私がそれらを読むたびに思うのは、「もし彼らが現代に生きていたら、ただの変人だったのではないだろうか」ということです。現代に生きる私としては、だから彼らから何かを学び取ろうとは特に思わない。いくら憧れようとも、「でも今は幕末じゃないしなぁ」の一言で終わってしまう。
しかし、村田蔵六は違う。彼なら、もし現代に生まれていても、変人だとは言われるかもしれないが立派な技術者・学者になれるだろう、と思う。だからこそ、村田蔵六にはかなり感銘を受けました。自分も勉強したい、と思わせられた。
文明開化における日本人の技術習得能力は、素晴らしい。ちょっと大げさかもしれないですが、日本人であることが誇らしい、と思いました。
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上中下巻。大村益次郎(村田蔵六)が主人公ということで、ずっと読みたかったがなかなか読めずにいた本。『世に棲む日日』と姉妹編の関係ですが、偶然同時に借りていました。様々な人物が現れた幕末の中でも異彩を放っています。無口・無愛想・無遠慮(西郷や高杉に対しても変わらず!)と三拍子揃ってしまうが、なぜか「大村先生」と呼びたくなってしまう程魅力的(笑)。幕末の軍事実行者としてこの人程の手腕はなかったであろう(高杉とは軍才の性質が違う)。百姓医者ながら適塾(医学)のエリートで、そのくせ軍事でその名を馳せ、その渦中でも「革命」を冷静な目で見るその姿は際立ってます。本文や解説にある「革命における三つの段階」の、その当てはまり方には思わず唸った。余談ですが、桂さんってば本当に蔵六先生が好きだったのね。『五稜郭を落した男』もそうだったけど、桂はユーモアセンスのないところが逆に愛嬌(笑)
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上・中・下巻。内容は、村医の出でありながら、後に長州藩の軍事担当(なのか?)になり、討幕軍の総司令官となる大村益次郎(村田蔵六)の生涯を描いた作品です。
無口。無愛想。でも有能。合理主義(私見)。火吹き達磨というあだ名があったとか。
桂小五郎との強〜い信頼関係は、「そんなに入れ込みますか」と思うくらい深く感動すら覚えます。
ところで、愛弟子だった(はず)の山田市之允が、わずか数行しか出てこないのは何でなんでしょうか。
何冊か司馬遼太郎作品を読みましたが、私はこの本が一番好きです。
初めて読んだ司馬作品だというせいもあるんでしょうけど。
確か、昔にドラマ化されていたはずです。