必読の国際関係論
2015/10/10 04:34
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
英語の副題は国際関係論入門であり、まさにそのとおりである。第一次大戦後に書かれたものであるにもかかわらず、現代国際関係論入門であっても十分通用する。
80年前に書かれたテキストながらいまだに人と国のやりとりになんとかわりのないことか。
ジョセフ・ナイのテキストでもツキディデスが必読とされるように、私たち人類は2000年の間、技術革新で変わった部分もあるけれど、人間たるものとしてのやりとりになんにも変りはない。進歩だの変化だのとは別の人間性があるんだと。
高校の世界史授業すこしやってないと理解が浅くなるのが前提知識。ただ中途半端な入門書とは比べ物にならない名著。
社会科学の教科書中の教科書
2022/04/15 00:34
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
岩波新書の「歴史とは何か」を
読んだ余勢を駆って手を伸ばした、
同著者による本です。
国際政治場裡の理想と現実との
鬩ぎ合いを活写する筆致に圧倒されます。
読了した暁には、原書に挑戦・・・
できるといいのですが。
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本書は国際政治学、国際関係論における古典である。第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期である1919年から1939年の20年間における国際情勢の分析を通じて、当時の国際政治における19世紀的な自由主義に基づいた理想主義(ユートピアリズム)を批判し、現実主義(リアリズム)の必要性を訴えた。しかしその一方で、国際政治における理想主義の必要性を認め、現実主義と理想主義の調和の必要性も主張している。
国際政治学、国際関係論におけるリアリズムとリベラリズムの関係を考えるうえでも本書の訴える内容は60年以上経た今日においても示唆に富むものである。
難解で読みづらい点も多いが、国際政治学、国際関係論を学ぶ方、学びたい方は必読の古典であろう。
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WW1後の戦間期に書かれた古典。その時代大勢を占めていたユートピアニズムを批判し、リアリズムの重要性と国際政治の二代潮流の両者を明確な理論へと押し上げた。と思う。
古典だから現代にそのまま応用する、というわけには行かないけど、一読に値するはず。
貴族や知識人によって行われていた伝統的な外交。大衆迎合的な現代社会の外交・政治に比べてなんと気高いものか、と、気品溢れる文章からそう感じた。
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実は今の時代にも十分通用するではと思う本。
この本の内容にテロリズムと宗教を加えれば十分に通用します。
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図書館から返却督促が来た為、半分だけ読んで返す羽目に陥りましたw
まじおもしろいです。100年たっても人間が考えることっていうのはあまりかわらないんだなぁと感じさせられますし、それだけに古典の凄さというものも身にしみました。
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今の国際政治の情勢は、戦間期の時代と通じる部分が多い。歴史から学ぶべきことって本当に多いなと感じさせられた。
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リアリズムの生みの親と言われるカーの著名な本。この本を読み直して感じるのは、カーは後世で理解されるようなリアリストではなく、非大国的視点から大国中心の国際政治を捉え直したリベラリストと言えるのではないか?という点である。大国的視点で国際政治を見続ければ、暴力的手段を用いながらもそれを価値や規範、そして共通普遍の原理のように本気で信じる西側(アメリカ、フランス、イギリス)のリベラル知識人と何ら変わらなくなる。しかし、大国的奢りから目をそらすと彼らの価値や規範が所詮、実力によって担保されているにすぎないという事実に気がつく。しかし、脱大国的な視点は、その暴力や権力を価値や規範で誤摩化している大国による政治への批判や疑問と結びつくという側面もある。実際にカーは、機能を説明しているだけであり、暴力や権力を肯定しているわけではない事を本著でも述べている。
晩年、彼は半ばマルキストとしてソ連研究の道を邁進するが、それは大国の権力によって規定づけられていた国際政治を脱構築しようとしたロシア革命の国際的な意義がスターリンによる独裁体制によって挫折したレーニンからスターリン期へと深く関心を有していた。この点からも、むしろカーが現在理解されているようなリアリストではなく、リベラリスト的な側面を多分に持っていたと感じ取れるような気がする。
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国際政治の古典として必ず名前が挙がるのが本書。
E.H.カーは、リアリスト(国際関係は各国のパワーによって決まる弱肉強食の世界である!論者)であるとよく紹介されている。実際に本書は、ユートピアニズム(手をつなげば世界は平和になるんだよ~♪論)が国際連盟において支配的であったために、第二次世界大戦の勃発を食い止められなかったと批判している。
だが、彼はユートピアニズムを否定したわけではない。確かに合理的に考えれば、リアリズム的世界観の方が納得いく。しかし、人間には非合理的な面もある。ユートピアニズム的な理想論・倫理的な態度のおかげで行動を起こせるという事実もある。リアリストではこれらの面を把握しきれないのである。国際政治はパワーで動く。しかし、理想主義的な思想も見逃してはならない。彼は、両者をともに重視した。
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大学時代の教科書的に読んだのが初読だったが、政治向きのニュースを見る度に手に取る本でもある。引用にあるように、簡潔に、しかも色褪せぬ評価が至る所に散りばめられており、国際政治の本という本旨を持ちつつも、洞察に満ちた哲人の書のようにも思える。
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【その時代、理想が砕け、現実が立ち昇った】国際政治の古典的名著とも言える作品。第一次大戦終了から第二次大戦に至るまでの時代、いかにユートピア思想がいかに世界を席巻し、そして無惨にも現実に押し潰されたかを丁寧に捕えることにより、国際政治における理想と現実の問題に鋭すぎるメスを入れていきます。著者は、イギリスの外交官として活躍し、晩年は研究業に勤しんだE. H. カー。訳者は、自らも本書の魅力に抗うことができないと語る原彬久。
明晰でありながらも複雑な思考が展開されていきます。ユートピアの欺瞞を軽々と見破ったかと思えば、その次にはリアリズムの限界をあられもなく指摘し、ユートピアの必要性を説く。そして最終的にはユートピアとリアリズムという一見相反するものの見方をいとも簡単に統合し昇華させてしまう思考の柔軟さを目の当たりにさせられます。難しい作品なのかなと身構えながら読み始めましたが、原氏による新訳が非常にこなれていて、困難を覚えなかったところも素晴らしかったです。
国際政治の古典と呼ばれることが多いですが、政治一般を考える上でも非常に有意義な作品だと思います。ユートピアとリアリズムの相克については今日においても溢れているように思えますので、本書の今日的意義も改めて多くの分野でとらえることができるかと思います。それにしても本書の最後でカー自身が提示する控え目なユートピアのなんと魅力的なことか...
〜健全な政治思考および健全な政治生活は、ユートピアとリアリティがともに存するところにのみその姿を現すであろう。〜
もうね、表紙の写真がメチャクチャ頭キレキレってカンジですよね☆5つ
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冷徹なリアリズムの視点から、国際政治の本質を描いた良書。第一次世界大戦後、戦禍を目の当たりにした人類は、国際連盟などの仕組みをもって二度と戦争が起こらぬようにしたはずが、わずか二十年で規模が何倍も大きい第二次世界大戦が勃発したのは、何故なのか?この問いを中心に、国際政治を分析している
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井上版岩波文庫から16年。訳者も訳文も改められた。より口語的な文章になっている。E・H・カーのヒトとなりについての解説が詳しい。外交官としてキャリアを出発させ、後にロシア文学に傾倒しドストエフスキーに関する著作を発表し、ロシア革命、カール・マルクスを著すことになって、大学教員として迎えられた。しかし結局、彼の理論も思想も、ヨーロッパ中心主義からの歴史観であって、そらには自ずと限界があり、第三世界の緒制度を理論に取り込んでいるわけではなという訳者の指摘は尤もだと思う。
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【121冊目】これを読まずして◯◯なんか語るな、っていう本はたくさんありますが、主権を持つ者としてあまり本を読まずに選挙に行くことは仕方のないことですね。民主主義社会っていうのはそれでいいんだと思います。
さて、政治、特に国際政治を語るにはこれを読まないと資格がないよっていう名著中の名著、クラシック音楽の「第九」、歌謡曲の「川の流れのように」に当たるのがこの本です。イギリス外交官だったE.H.Carrがケンブリッジ大学教授時に書いた国際政治の本。戦間期の二十年を、理想主義が支配した前半と、その敗北によって一気に現実主義の前に陥落した後半によって構成された期間だったと看破します。「危機の二十年」というタイトルですが、第一次世界大戦や第二次世界大戦に至るまでの過程についての描写はCarrの主張を支えるための例示程度にしか出てこず、どちらかと言うと、理想と現実が(国際)政治において果たす役割について、深い洞察を持って描かれています。hindsightをもってすればCarr自身がとんでもない理想主義に陥ってることはクライマックスで一目瞭然なのですが(Marxismに影響を受けていたことは有名な話)、それを補って余りある理想主義と現実主義の相克に対する考察。
結論を言ってしまうとすごくありきたりな話で、現実を直視する冷静さと誠実さ、だけどそれだけではなく、我々を勇気付け前に進めようとしてくれる理想や夢、その両方が必要だよねってことみたいです。
こちらで読む本のほとんどがそうですが、西欧世界からの視点に終始しているのが残念なところ。
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名著、とのことだが全然歯が立たなかった。が、理解できなくても難しい本に挑んでいるときは意外にも至福であったりする。