紙の本
北条早雲の生涯を描いた司馬遼太郎の力作
2005/01/20 08:27
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は司馬遼太郎が室町時代後期に活躍した戦国大名のはしりである北条早雲の生涯を描いた大作である。文庫本にして上、中、下の3巻仕立てという長編である。しかし、字が大きく読みやすく、長いという感覚はなかった。
北条早雲の名前はよく聞くがその実態を知る人はあまりいないであろう。群雄割拠といえば聞こえがいいが、一体誰が覇権を握っていたのかはっきりしていなかった中世の政治地図。そういう状況の中で図らずも陣取り合戦を繰り広げ、関東に王国を築いた北条早雲の物語である。
室町時代は上から下まで武力の裏付けのない将軍、公方、守護、地頭などが、果てしなく小競り合いを繰り返していた。起こるべくして起きた下克上、そして国一揆、土一揆。結果は乱世である。
足利将軍自体がお抱えの軍団を持たない名目だけの武士の統領であったが、それでいて看板だけで幅を利かせていた時代であった。征夷大将軍という称号こそ勇ましいのだが、その実は早々に貴族化して、名のみの将軍であった。平安時代後期に貴族の用心棒から地位の梯子を駆け上った武士の時代は鎌倉時代にとうに終わっていたわけである。
北条早雲は室町時代の征夷大将軍足利氏の執事を代々勤めていた伊勢家の端に名を連ねていた。伊勢家は小笠原家と同様、行儀作法の流派を保持していた名家であったが、早雲は鞍を造っていた。伊勢家の鞍は乗り心地などで優れており、早雲はその作り手であった。
早雲は幼少の頃は伊勢新九郎と名乗っていたが、将軍家の執事として応仁の乱の主役である足利義視の執事となる。しかし、義視の人物に愛想を尽かして伊勢に戻る。何の縁か今川家の嫡男の後見役を勤めることとなる。
北条早雲の幼少の頃から、応仁の乱、将軍家である足利氏と守護の関係、一所懸命という当時の封建制度の変化、下克上の実態など、まさに歴史の細部にわたっての室町時代史を早雲を例にとって解説しているかのようである。
早雲の生い立ちなどは不詳とされることが多いが、史上に名が出てくるのは、伊豆を領有してから、関東の雄三浦氏、関東管領上杉氏らとの衝突などで領地を増やしてからであろう。早雲、氏綱、氏康と続く所謂、後北条氏は豊臣秀吉に小田原城を攻められるまで関東の名うての戦国大名であった。
司馬遼太郎は、自らも認めている通りよく脇道に反れる。しかし、無駄ではなく早雲の生きた時代を裏付ける説明になっている。歴史の教科書もこのように具体例を示しながら説明を受けると納得がいく。三浦氏を討伐する際に登場する逗子の住吉城なども単に碑文を読むだけでは分からなかった経緯が理解できた。小説の域を越えた傑作だ。
紙の本
おもしろく読みました。
2023/10/23 22:40
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投稿者:satonoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
室町時代は関心が薄く、パッと思い出すのは金閣銀閣ぐらいです。
そして、北条早雲は小田原だよね?という程度のこれまた関心の薄さでした。
興味深く読み、今は(中)を読み始めました。
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早雲という人の、静かな強かさがじわっとくる話です。舞台が駿河〜箱根〜関東なので、見知った地が出てくるのも親近感がわく。東海道線にゆられてのんびりと旅をしながらこの本を読む、というのがちょっとした夢です。
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タイミングも悪かったんだろけど、あんまり読むのが進まなかった本。全三冊。北条早雲の話。こういう男の人には惚れないかな。関係ないけど。
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北条早雲その誕生たるや・・・。
鞍作りを生業とする伊勢新九郎、8代将軍足利義政の弟義視の申次衆を勤めてはいるが、義視の存在は無力そのもの、申次衆と言ったって秋の蚊ほどの力もない。
早雲以前の伊勢新九郎長氏時代が描かれている巻である。
40半ばまで世間に知られることもなく過ごした早雲、司馬さんは、早雲以前の新九郎時代に感心がつよく、さらに新九郎の思想形成に大きく影響した―というよりも早雲を生みあげたというべき―室町期の世情と応仁・文明の乱につよく心をひかれたと書いている。
時は応仁の乱の糸のような原因のうちのひとすじ、将軍継嗣問題が起こっているそのとき、司馬史観も光り、言うまでもなく興味深い。
個人的には当時でいう遠州出身の私としては、土地柄のわかる舞台、興味のある連歌師の登場と一層くいついて読んでしまった。まだ中が楽しみってことで★は4つ。
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応仁の乱で荒れる京都、伊勢新九郎、後北条早雲がいた。
家伝の鞍作りに明け暮れる。妹分の美しい娘、千萱の出現が、
彼の今までの生き方を激変させる契機となり覇者への道を歩み出した。
2008.9.19 読了!
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北条早雲が大好きになりました。
戦国初期は、後期とは全く違う面白さがあるのですが、この本は本当に面白い!!
早雲が「実は一介の素浪人じゃない」と知ってからちょっと残念な気持ちになっていたのですが、司馬先生は本当に上手い見解をして下さいました。
将軍の弟の申次衆だけど…という設定は、悔しいが納得してしまいますね。実際はもっとバリバリの申次衆で馬の鞍作りなんてしなかったかもしれませんが、それでもまあ何もなければ相模の太主にはならないと思われるので。。。
という設定云々よりも、本当に面白い作品ですっ!!(説得力無…)(いや本当に面白いんですって!)
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とある友人が司馬遼太郎の本を読んでいると聞いて影響を受けて司馬遼太郎の世界に飛び込んでみました。戦国武将、小田原の北条氏政の先祖、北条早雲の物語。
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全巻通読後のレビューです。
代表的な下克上の大名である、北条早雲が主人公。
室町時代(応仁の乱以降)の様子が、政治的状況以外のこともよく書かれていて、非常に参考になる。
それに和歌も登場して、日本史や古典文学に興味のある人には、なかなか楽しめる作品になっている。
早雲の前半生は史料がないため、筆者の創作となっているが、これもなかなか楽しめる。
また、当時にあって、早雲の思想の新しさも、この作品を一際輝かせているし、早雲が駿河に入って以降の合戦の様子も生き生きと描かれており、いかにもその状況が目に浮かんでくるようであった。
小田原北条氏五代の礎を築いた早雲の領国統治の方針は、現代にも通ずるものがあるのではないか、と思った。
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北条早雲の物語。先に読んだ「早雲の軍配者」で北条早雲に興味を持ち、この本を購入した。上中下の3巻構成の上巻。北条早雲がまだ伊勢新九郎と名乗り、京都で馬の鞍をつくっていてが、細川勝元と山名宗全の戦いに巻き込まれてしまうまでのストーリー。正直、そんなに面白くないので、さっさと中巻に行こう。
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全3巻。
北条早雲。
やっぱ。
早雲は若いころがキモ。
ほとんど分かってない若い頃に
どんな風な設定持ってくるかが
小説としての醍醐味だと思う。
早乙女版みたいなスーパーヒーローでなく、
割と事実っぽい設定が好感。
その分、改めてこの人の中年からの巻き返しがリアルに感じる。
長生きし過ぎ。
異常に思えるくらい。
相続してたりしてんじゃないかってくらい。
名前。
ただ、やっぱり資料が出てくる後半生は
やや小説としては失速感を感じた。
早乙女版ほどではないけども。
説教臭ささはあんまり気にならんかった。
ずっと疑問だった応仁の乱も知れたし。
よかった。
ただ、物語として作り込む途中で、
歴史小説にしなきゃ感が勝っちゃった印象。
物語の序章の期待感が、
後半全く活かされてない。
仲間をもっと活躍させてよ。
こういう中途半端さがやっぱ嫌。
上手いだけに。
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北条早雲の若き日の物語。京の鞍作りから、駿河に出立するまで。その時代の宗教、ものの考え方に言及し、当時の時代背景がよくわかり、思わず作品の中に没入してしまう。11.3.10
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物語当時の文化を説明しながら話が進んでいくため、物語自体を楽しみたいオレにとっては、冗長な感じがした。ただ最後まで読むと戦国時代が起こった背景をなんとなく理解することができる。
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北条早雲物語。
応仁の乱は中学校の日本史以来に出会いました。
徳川家康が関東に進出するために戦ったことくらいしか知らなかった人物がどうのし上がったのか。
上巻はほとんど武将らしいことはしていない。
どう展開していくのか
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個人的には微妙だった。決してつまらなくは無いが、面白くないのは、おそらく主人公に(あく)が少ないからかなと思
う。