紙の本
ヒトの生態を描いた小説
2016/02/28 23:05
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者いわく、本書は「宇宙人の目に映るヒトの姿とはどのようなものか」を表現した短編集だとのこと。この本を一通り読んだ結果、これが小説と呼べるのか正直よく分からなかったです。
この本は人の愚かさと醜さをあまりにもストレートに映し出していて、小説というよりヒトの生態(狂態?)をつらつらと書き下した別の何かだと思います。
「ボラード病」が群衆の愚かさを描いた作品であるのに対し、「虚ろまんてぃっく」は個人の愚かさを描いた作品が多いです。どの作品も、果てしなく下品で汚いです。それでも、そう思うと同時に「品」なんてものは所詮人間の価値観でしかないんだよな…とも思わされてしまいます。もうこれを読む前の認識でヒトを見ることはできなくなってしまいそうです(笑)
紙の本
不愉快なのにやめられない。
2015/09/30 09:43
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投稿者:りー - この投稿者のレビュー一覧を見る
不愉界のラーメン二郎とでも呼ぶべき吉村萬壱氏の短編集。始めはこれくらいの不愉快さ、大したことないぜ!と読み進めるんだけど、読んでも読んでもただひたすらに不愉快な描写が続いて気づけばお腹いっぱい。最後の数ページなんて、スープの中にそっと麺を沈めて完食したフリをする時みたいに無表情で読み飛ばして、読まなきゃ良かったなぁと後悔しながら、また書店で「吉村萬壱」の名前を見かけると吸い寄せられる様に手にとってしまうのだ。とりたてて美味しくもないし身体にも悪そうなのにやめられない。この感じ、まさしくラーメン二郎だぜ。
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現存する日本の作家で新刊が出たら矢も盾もたまらずみたいにがっつくのは吉村萬壱先生ただひとり。ほとんどは文芸誌掲載時に購入して読んでいたのだけど、再度こういう形で読むと一入。
夏の友、大穴、大きな助け、が特にお気に入りで、大きな助けはすでに文芸誌のほうで何度も読み返している。読みやすい形状で手元に置いておけるということが嬉しい。コップ2030と大きな助けは私の地獄だ。
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表題の「虚ろまんてぃっく」の途中で、いったん挫折。
そこで、ブクログのレビューを見て(今現在2レビューだけですが)、「家族ゼリー」をつい最後まで読む。オエっ。
さらに途中飛ばして「大きな助け」
とりあえず、読み終わる。
帯に「不道徳きわまりない」「とてつもなく美学に反する」とあるが、うむ、確かに。
でも、まだ読んでない吉村萬壱を読んでみようと思っている。
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10編からなる短編集。どの作品も人間のダークな部分をクローズアップして描かれていた。
昨年、読んだ「ハリガネムシ」もいい意味での変態性が際立っていたが、それよりももっと増していた。
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行列
「クチュクチュバーン」的不条理リアリアズムをシンプルに。寓意がちょっと鼻につくも、吉村ワールド全開で、気持ちいい(悪い)読書感が楽しめた。後ろ見ちゃダメなわけな。そういうルールってことな。
夏の友
ノスタルジーグロとでもいうべきか。主人公以外の登場人物の闇とその必然による地獄のような不幸が、どうしてかすっきりとしてしまう。
虚ろまんてぃっく
主人公は埠頭。構成が発明的で、最後に大笑いできた。
メリットシャンプーを選ぶセンスがちょうどよい腐り庶民的。次作「家族ゼリー」に頭だけリンクする。
家族ゼリー
とりあえず感情移入して気持ち悪くなるわけで、そこには「娘」設定が無くて助かった。この家族に娘がいたら、完全な総当たり戦になる。基本ギャグ作品としてとらえるべきか。それにしてもくしゃみの匂いだのゴルフボール大の疣痔だの、よくぞまあ思いつくものだ。
コップ2030
2030年のディストピア。どうやらデジタルによって認知が破壊されているらしいが、壊れているのが主人公なので、文章描写も壊れるのだ。職員役は1984パロディだし、それを筒井風のメタ狂気手法でまじめにやっている感じ。なんのこっちゃ。
樟脳風味枯木汁
この辺になるとどうも「人としてどうも嫌だなと感じること」を苦労して探し出して綴っているような気がし出した。今回は老女性愛である。老女が決して上品ではなく、醜怪なキャラであるのも納得する。単にエロ小説ではないのだ。
大穴(ダイアナ)
「家族ゼリー」「樟脳風味枯木汁」とリンクしつつ、「臣女」のプリクエルともとれる内容。特に家の間取りや造作は「臣女」の舞台と一致している。同じように愛情の底深さが漂うにょだ。
希望
ショートショート。「行列」の別パターンのメモみたいなものかと。
歯車の音
老人偏愛性欲が露骨だ。幼少時に見たという祖母の陰部が繰り返し実体験として別稿で記されているが、そんなに強烈だったのだろうか。息子の罵詈雑言がおもしろい。半ば植物化したした父親への復讐譚であるが、嘗ての性交日記を耳元で朗読するなど、考えるだに恐ろしい。でも短編として良く出来ているよにゃ。
大きな助け
DV、児童虐待。とにかく胸糞悪くなるし、人類全体がクズ化していく様はどこかリアルだ。しかも爆笑してしまう。
あとがきにもあるように宇宙人目線で人類のクズっぷりを抽出するというのは、確かに必要だし、読んでいる読者はそれが気持ちいいのだから、もっともっと欲しがるにょだ。
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短編集。
どの作品もカフカのように不条理に満ちていてシニカルに描かれている。文学的でありオチなどは特に無いものの読ませる力はあると思う。
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不条理で、限りなく不道徳で、深い沼の底に沈んでゆくような感覚。なのに、なぜか読んでしまう。闇なのか、病みなのか。
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これはなんだろう?正調の胸糞悪い作品。サド侯爵も当時はこんな感じだったのだろうか?「時計じかけのオレンジ」の拷問シーンみたいな感じ。見たくないものを見る。読みたくないものを読む屈折がある。一旦、がっつり気分悪くなることでトランポリン効果はあるかもしれない。
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短編集。
あとがきに、これを書いた著者は頭がおかしいと思う、と当の吉村氏が書いていた。
まぁ、おかしいかどうかわからないんだけど、最初から3作品読んで、ギブアップしてしまった。
気持ち悪いのに、特段のカタストロフィも感じられない。
ただただ気持ち悪いだけ…
残念。
しかし、題名カッコいいな。
そこは最高。
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家族ゼリーがびっくりするくらい気持ち悪かったけど、どれもものすごく面白い短編集やった。
人の頭の中とか、その頭の中と外の境界がよくわからないとか、そういうものがわたしは大好きです。
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相変わらず、というか、やっぱり、というか・・・。
とにかく人間性を否定したいのだろうか? かろうじて普通の話に見えた作品も、わずかに文末の言葉遣いがおかしかったり。
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よくこんなひどい話を次から次に考えつくもんだと感心する。書く方も書く方だが、読む方も読む方だ。あとがきから先に読むべき。んーだーぷっぷ。