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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
2012年のクリスマス、世界中に響いた「大いなる悲鳴」は、世界人口の三分の一を削り取った。全くのランダムに、生き残った者には何の影響を残すこともなく、突然に三分の一の人類が死んでしまったのだ。
しかし、半年たった世界は、未だその原因が分からないにも拘らず、それを冗談のネタにしてしまうことを許すくらいの平穏を取り戻していた。私立山石中学校一年の空々空(そらからくう)にはそれが理解できない。
小学生時代の野球のライバルだった少女の花屋瀟の紹介で、精神科医である飢皿木鰻の問診を受けた。そしてその結果、彼の住む世界は一変してしまう。帰り道に彼の前に現れた17歳の少女の剣藤犬个(けんどうけんか)にいきなりキスをされ、翌日は熱を出して寝込んでしまった空々空が次に目を覚ました時、家族はリビングで惨殺されていたのだ。
両親と弟たちを唐竹割りやスライスにしたのは先日の少女。そして彼女について来た男は、地球撲滅軍第九機動室室長の牡蠣垣閂と名乗り、彼にヒーローとなって地球と戦って欲しいと言った。
彼は言う。前の「大いなる悲鳴」は地球による人類虐殺の試みであり、有史以来、人類は密かにその地球のたくらみに抵抗して来た。人類社会には、人類と全く見分けのつかない、本人にも自覚のない地球のスパイ「地球陣」が紛れ込んでおり、空々空はその存在を見抜く唯一の存在である、と。
家族を殺した剣藤犬个と同棲することになり、そのことを何とも思わない空々空は、言われるままに、地球陣だという女性を踏み殺す。子どものいる母親だという彼女を殺しても、何も感じない。
しかし、多くの地球陣と、巻き添えとなった人間を殺してきたにもかかわらず、未だに良心の呵責を感じ、精神ブロック剤で感情を抑えつけながら、夜中に魘される剣藤犬个の姿を見たり、地球撲滅軍不明室によって、犬に擬態するよう改造され、空々空以外からは犬にしか見えなくなった幼女の左在存との逃避行を経て、彼は自らの戦うべき敵を見出して行くのだった。
概念的倫理は持っているものの感情的倫理を持たない少年が、その示すところに従って行動していくに従い、多大な犠牲を払いながらも、それによって得た経験が少年を成長させていく様を描いている物語だ。
ただ目が良いというスキルと、感情が希薄だという特性のみを利用しながら、本来なら怪人と戦うヒーローにも拘らず、何故かほとんど内部抗争に明け暮れるという展開に。親殺しの少女に惚れる展開はポピュラーかもしれないが、逆に惚れさせるというのは新しいかも。とにかくバンバン当たり前に死んでいく訳だが、このあたりは、命は等しく価値のあるものではなく、本人の重要度によって扱いが変わるという、当たり前の、しかし口にしがたい心理を説いているようにも思える。
人類の中に紛れ込んでいるという設定は「めだかボックス」に通じるところもあるかもしれない。
人生で最高の1冊
2016/05/20 19:00
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投稿者:tk - この投稿者のレビュー一覧を見る
西尾維新さんの中でも、最も好きな1冊です
他の作家やノベルなど全てを含めても、これが最高の1冊です。
続きの巻は、個人的にはちょっと残念な展開ですが、
伝説シリーズ最高の1冊、悲鳴伝なので、
紙版を持っていますが電子書籍で何度も読み返したいので、買いました。
続きの巻も、他の電子書籍サービスだと既に予約注文できたりするので、
hontoさんでも順次発売するのだと思いますが、
全部買います。予約注文させてくれるなら今すぐ全部買うんですがね。
本編も最高ですが、あとがきがまた最高に素晴らしい
あとがきの2ページに詰まった簡潔かつ圧倒的なメッセ―ジには
伝説シリーズ全てで、この本を買ってよかった、を思える素晴らしい内容で、
他の西尾維新作品もこれくらい凄いのかなぁと、手を出そうか迷っております
敵が味方で味方が敵で。
2017/05/19 07:22
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投稿者:うりゃ。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
組織と個人とか、敵と手を組んで大きな目標に当たるとか、意外な敵の存在とか。
わりと構成要素は普通の物語にもありえるものなのに、それがどうしてこうなったという形になるのは西尾維新氏の個性によるものだろう。
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空々みたいな人がいない事はわかっているが
自分の周りにもいなくて
自分もそんなんじゃなくて
ほんっと良かったって思う
まぁ、空々のような性格を想像したことは
一度もなっかったけどな(笑)
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長かったのに長さを感じませんでした。
空々くんのお話をもっと見ていたいと思ったのは私だけではないのではないでしょうか。
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<あらすじ>
ある日人類は、地球が発した悲鳴を聞き、その3分の1(23億人)が死んだ。
第1話「ヒーロー誕生!地球の悲鳴が聞こえるか」
無感動無感情な主人公・空々は、親兄弟関係者全員を殺した地球撲滅軍に、人類を滅ぼそうとする地球と戦うヒーローになってくれと頼まれる。
第2話「戦え!ぼくらの英雄グロテスク」
親兄弟を殺されても何も感じない空々は地球撲滅軍に入り、地球が人間社会に送り込んだ怪物『地球陣』を倒すため、軍から支給された、身体が透明になり地球陣が見えるスーツ『グロテスク』を装着する。
第3話「届け必殺!グロテスキック」
地球陣は人間に擬態しているのでグロテスクでしかその姿を見ることが出来ないし、普通の人が地球陣の姿を見ると、あまりの神々さに感動して目がつぶれてしまうので、感動しない空々しか地球陣を見ることが出来ない。そしてグロテスクを装着し透明になった空々は地球陣の後頭部を踏みつけ殺すことに成功する。
第4話「頼れる仲間だ!狼の血を引く少女」
空々の両親兄弟を殺した後、空々の世話役となり共に生活している女剣士・剣藤がペット・在存を連れてきた。剣藤は犬だというが、空々には9歳の少女だった。在存は軍が地球陣の擬態を研究して作られた『犬に見える人間』だったのだ。
第5話「炎の戦士!熱き血潮の燃える魂!」
自由を願う在存のため、空々は在存と共に家を出るが、空々の関係者全員を殺した炎を操る『放火魔』に発見され、在存は殺されてしまうが、空々は『放火魔』を返り討ちにして再起不能にする。
第6話「幼稚園が危ない!二人の女剣士」
名実ともにヒーローになった空々は小学校時代の女先輩・花屋と再会する。彼女は軍メンバーで副室長だった。そして空々と剣藤と花屋の3人は幼稚園児に擬態した地球陣を虐殺する。
第7話「さらば友よ!空を翔けるヒーロー(前編)」
唯一の親友が空々の花屋は、空々と一緒に暮らして仲良くなった剣藤に嫉妬して、副室長権限で剣藤を殺す。
第8話「さらば友よ!空を翔けるヒーロー(後編)」
空々と花屋がタイマンで戦う!?
果たして勝者は?空々が選んだ道とは?
<感想>
サクサク読めてとっても面白かった。地球撲滅軍に所属するメンバーが、戯言シリーズみたいな感じのニックネームだった。
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西尾維新節、炸裂。
いーちゃんと空くんは似てる。そっくりだ。
とラストまで思ってたけど全然違った。
悲惨すぎる。
そんな終わりアリなのか。
映像化とか無理無理ぽいけど、劇場版で観たいな。
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西尾維新「悲鳴伝」を読了。今月25冊目。
西尾維新の中では最長作品。2段組で500ページ超。原稿用紙でいうと1000枚だとか。とはいっても1日かからずに読み切ったので、難解な作品という事もなく、割とシンプルな話だったと思う。
作者が語っているように冒険譚であり、英雄譚だったと思う。ちょっとひねくれているけど。ただ、ひねって、ひねって、構造的には元に戻るというか、主人公の中では、何もねじれてないけどど、周りがねじれているというか。
話が終わっていないと感じる人もいるかもしれないけど、主人公の中では1つの完結を見ているので、これはこれで良いんだと思う。でもいくらでも続編は書けそうな気もするけど。
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純粋に面白かった。単純にもっと読んでいたい、有体に言うとこれからの主人公の動向が気になるといった感じでしょうか。
英雄譚と銘打たれていて、人類を守るために地球と戦うなんて煽られていたけれど、そんな大層な話ではなくて、帯に書かれている「少年よ、逃げろ。」というのが、この1冊を端的に表現できているなと、そう感じた。
個人的に著者の作品はキャラクターありきだと考えているのだけど(こういう話が書きたいではなく、こういう人物を書きたいみたいな)、今回登場するキャラクター達は、特異でありながら異常だと切り捨てられるってわけでもなく、妙にリアリティーがあって、共感するのは難しいかもしれないけれども、その気持ちも分からなくはないといった感じで、等身大の少年が、結局何を思っていたのか、どう変わっていったのか、読者任せみたいな感じになってはいるけど、一人の少年のお話は、人類とか地球とかとは関係のないところで、幕を閉じたのであった。
今回死んだキャラクターは、一人を除いてみんな死んで悲しいかな。みんな良いキャラだった。
英雄というのは人類の英雄ってわけではなかったんだね、おそらく。そこが良かったと思うのであった。
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西尾維新の原点回帰と言っても過言ではない
戯言初期を思い起こすようなエグい設定に、個人的には物語シリーズより楽しめた
特に、章始まりの0の部分が復活してたのは嬉しい
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装丁が好き。続きが読みたいなぁと思ったけど、どんな続きになるのか、どんな続きが読みたいのかまったく想像つかなかったので、ちょうどいい長さで、きれいに完結したってことなんだろうな。
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戯言中期、りすか、の劣化版。そんな感じ。
目次の特撮ヒーローノリが「嘘はついていないけど大嘘」
なのだけが笑える。
とにかく人が死ぬ。とりあえず死ぬ。
人類が3分の1死ぬw
敵も死ぬ。ペットも死ぬ。味方も死ぬ。親友も死ぬ。ヒロインも死ぬ。
「死ぬ」って文字列がゲシュタルト崩壊したwww
ヒーローもヒロインもそれほど魅力的ではないので★三つ。
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最近軽いのばかりだったので待望の長編。
突如日常から切り離され、地球と戦うことになったって、そんなことは彼のセカイには何の影響もない。人類の存亡だって、彼女との関係を表現する一つの出来事でしかない。大事なのは愛だ。たとえ理解できないとしても。
異常者が異常者のまま幸せになる物語が西尾維新のテーマだとするのなら、彼はそれを確かに全うしたはずだ、愛せなくても愛されてはいたんだから。
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"分からなささ"、そして"共感のなさ"故に、空々はヒーローなのだという潔さが面白い。
面白いのに、それを地の文で説明し過ぎる。
それぞれのキャラがネガティブに自己認識できていなかったり、他人に依存し過ぎていたり、と際だっているのに、際だったことを説明し過ぎる。
だから読んでいて、心躍らない。
戯言シリーズより説明が酷い。
思い切って、連作短編の方が切り取り方に変化が出来て面白かったのでは? と思う。
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地球撲滅軍を名乗る組織に家族や身近な人々を皆殺しにされた少年が、その軍に参加しヒーローとして人類のために地球と戦う話。
良くも悪くも西尾維新だね。
いつものネーミングセンスや西尾節、敵も味方も一般人もばっさばっさ死んでいく展開は健在です。
主人公の空も、いーちゃんや串中弔士を思い出させるような少年。
こういうキャラ好きなんだろうな…w
西尾維新らしい作品であるからには色々と変なキャラが登場するんだけど、
その中の一人が「狼ちゃん」。
見た目は小柄な女の子なんだけど、空以外の人間は犬として扱っている。
はたして彼女は人間なのか?犬なのか?
空が覚えた疑問は当然読者も覚える疑問で、
正体が判明するまでの一連のシーンは没頭して読んでしまいます。
こうした展開や読ませ方は流石だね。
「ヒーローが人類を救うために戦う作品」であるはずなんだけど、そこは西尾維新、ひねくれた主人公によるひねくれた作品となってます。
アンチ王道な作品が読みたい人は、ぜひ。