電子書籍
経済という軸を持つと、歴史が理解しやすい
2017/05/22 06:19
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投稿者:キャメル - この投稿者のレビュー一覧を見る
「歴史上の出来事や偉人の行動には、経済面から見るとこんな意味があったのか」と楽しく読めました。学校の勉強としての世界史は、私にとっては年号と事件、人物名を暗記するだけの無味乾燥のものでしたが、その時々の経済状況という補助線を引くと、丸暗記していたものが、原因と結果がつながって「理解」に変わりました。学生の頃にこういう本に出会えたら、もっと歴史好きになっていたかもしれません。
紙の本
お金で世界を見る
2023/06/22 03:16
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投稿者:藤和 - この投稿者のレビュー一覧を見る
授業で習った世界史の出来事。
それを経済的側面からひもといていく本。
中身の文量的にだいぶかいつまんだ解説だけれども、古代から現代までざっくりと振り返ることができる。
授業の世界史でどうにも納得的なかった人は、これを読むとすこし納得できるかもしれない。
電子書籍
これは名著と言ってよいです!
2021/08/05 12:38
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投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
経済の世界史とでも言うべき、充実した内容の名著です。今まで?マークだった歴史の隙間を埋めるように、お金が絡んだ世界史をとてもうまく解説してあり、目から鱗の話も多くて非常にためになりました。特にスペイン、ポルトガルの隆盛と衰退の話、第一次と第二次の世界大戦前後の話はとても興味深かったです。お金の動きを考慮しながら世界史を俯瞰的に見ると、いろんな史実の背景に納得出来て驚きでした。これは世界史教養の本として、かなり優れた解説本だと思いました。
電子書籍
お金。国の栄枯盛衰も、ヒトラーの台頭も、すべての戦争も。
2020/07/14 20:00
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
「財や富を手にする方法は変わっても、人類が財や富を求めるという本質は、太古から変わらない。
世界の歴史は、人類が財や富をいかに求めてきたか、ということである。
歴史を動かしているのは、お金、経済なのである。政治や戦争ではない。」
この本の本質を表している文章だと思う。
国の栄枯盛衰には、一定のパターンがある。
最初は、優れた徴税システムで、領民から支持されるが、やがて、役人たちが私服を肥やそうとして不正を働き腐敗していく。
古代エジプトも古代ローマもイスラムもこのパターンで、衰退した。
日本も、コロナウイルスや豪雨被害により、国民にばかりしわ寄せが来ているけれど、大丈夫?
「ナイル川の堤防も、税収の減少により補修できなくなり、洪水の被害が起きた」と書いてあったけれど、、、。
国債制度や中央銀行を作るなどして、進歩的な国イギリス。
だが、一方で、貿易が奮わなくなった苦肉の策としての海賊行為容認や、植民地にした土地で各部族を故意に対立させたり、三角貿易をしてアヘン戦争をしたり、奴隷貿易をしたり、、、、、、富獲得のために略奪の限りをつくす。
よくこんなにも考えるものだなーと、妙に感心した。
かつては植民地だったアメリカが、大国になることができたのは、金や油などの資源が出るのと、金融に長じたユダヤ人が多く住んでいるためである。
なるほど、そうなのか。
タックスヘイブンに逃れる富裕層や大企業が増えると、古代エジプトや古代ローマのような国家崩壊パターンになるかもしれない。
自分たちの懐だけ暖めようなんて、、、、そんなこと止めて分け合いましょうよ。分け合ったり与えたりするのが、本当のお金持ちのはず、、、、。
電子書籍
世界史が身近になる
2017/01/27 11:31
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投稿者:かもちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
学校で学んだ世界史は、地域や時代があちこちに飛ぶので全体の流れが掴みにくく、ひたすら暗記するだけの退屈な科目だった。本書は「お金」を軸にビシッと一本筋が通った展開になっており、歴史の流れがとてもわかりやすい。また、教科書には書いていない、戦争など歴史的事件の裏事情もわかって、なるほどと思うことが多い。
加えて、現代の状況と比較することで、現代社会の問題点や、更には未来までもが見えてくる。日本史に比べるとどこか遠く感じていた世界史が一気に身近に感じられる良い本だ。
紙の本
世界史は面白い!
2016/01/27 22:50
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投稿者:もこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
学生の時に習った歴史はウソとは言わないがあまりにも省略し過ぎていた。
昔からもめ事はお金が原因なのだということをイヤというほど教えてくれる。
膨大な資料をあたって執筆された、渾身の作である事が窺われる。
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タイトル通り、世界史の様々な動きを「お金」(経済政策、税制等)の側面から切り出した一冊。
国が栄えるために経済的な繁栄は不可欠である。
では、歴史上の国々はどのような方法で経済を豊かにし、そしてどうして経済的に衰退していったのか。
あるいは自国の富を積み上げるという動機から、どのような外交政策を展開していったのか。
全てお金を要因に当てはめれば、それなりに歴史のパターンが見えてくるようであり、切り口としては面白い。
数々の戦争の根底には、各国の経済的な欲望が往々にしてあるのだが、そのことだけに焦点を絞っているので論点がすっきりする。
一方で著者の得意分野の問題か、大航海時代以降の文章のキレはいいものの、それ以前に関しては歴史的事実の理解が正確でない(というか非常に大雑把)部分もあり、ちょっと怪しげではある。
とは言え、本書は細かい歴史的事実の知識の修得を主眼に置いたものではなく、あくまで「経済」から世界史を大づかみに切ることが目的なので、その辺りはさらりと読み飛ばしてしまえば、十分楽しめる一冊。
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古代エジプトから現代に至るまでの歴史にまつわるお金(税金などなど)について、時代の流れにリンクさせて説明してある本、といったところか。
歴史を金銭の動きで見る、という観点が初めての見方であったので、新鮮な感覚。関連書籍も読んで、苦手な歴史(世界史?)を頭にいれたい。
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最初、熟の講義を聞いているようなはじめ方だったが、それぞれの歴史のキーワードを、お金や税、金融。経済の動きから捉えると、関係性がよりわかり、後半はとても面白く読めた。フランス革命も戦争もお金の問題、力関係から・・というのがよくわかる。そして、今が変革のときとして「フランス革命前夜に酷似」と言っているのが、はやりそうかーと思った。
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似たような内容が多い著者の中で、他の本と異なり、著者の考えの根本に近い部分に触れられた感じがします。
非常に長いスパンで、お金の流れに着目しながら世界史を俯瞰して一冊にまとめてあるので、産業の発達や戦争や哲学・芸術など、他の面から見た世界史の観点と比べることで深く納得することができる部分があります。
そして、読んだ人の多くが、世界に波瀾を有無「超大国」の振る舞いに疑問を抱くのではないか、と感じます。その振る舞いが正しいか、間違いかを論じることにはあまり意味がない、とは思いますが・・・。
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お金を中心に歴史が作られたというパースペクティブが如実にとれる本書です。とくに、税と国家と歴史の観点で書かれた文章は読み応えがありました。
現代へのインプリケーションも多く、歴史に学ぶというこはお金の視点からも同じであると言えます。
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本当に歴史を動かしているのは、政治や戦争ではない。お金、経済なのである。
国の栄光清水医院には一定のパターンがある。徴税がうまくいっている間は富栄、役人たちが解していくと国家財政が傾く、それをを立て直すために重税を課し、領民の不満が渦巻く
タックスヘイヴン、世界的規模での特権階級、国が崩壊するときにありがちなパターン、
イギリスは略奪によって発展した、海賊と奴隷貿易、
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元国税調査官である大村氏による執筆本で、「お金の流れ」から歴史を見るシリーズの第三弾です。この、第三弾というのは私が読んだ順序によるもので、彼の著作としては、この本が第一作目だそうです。
今回のテーマは、高校時代に授業を聞いていて頭がこんがらがってしまった、世界史がテーマです。お金の流れを通して歴史を見てみると、お金がたくさんある・お金が上手に回っている・一般的に税金が少ない時代は、平和で良い時代のようですね。
いままで多くの帝国が栄えて衰退していきましたが、「お金の流れ」から見てみると、今まで複雑すぎると思っていた世界史に一本筋が通りそうな気がした本でした。
以下は気になったポイントです。
・古今東西、国家を維持していくためには、1)徴税システムの整備、2)国民生活の安定が絶対条件である(p20)
・国の栄枯盛衰には一定のパターンがある、徴税がうまくいっている間は富み栄え、やがて役人たちが腐敗していくと国家財政が傾く、それを立て直すために重税を課し、領民の不満が渦巻く(p24)
・古代エジプトでは、神殿の土地や収穫物には税金はかからず、神殿の労働者は人頭税を払う必要なかった。税金を払えなくなった者が神殿に逃げ込んだ場合、徴税役人からの追及が逃れられた(p26)
・紀元前206-197年の10年間だけで、金:1.8トン、銀:60トンが、スペインからローマに献納された。このお陰で、ローマは貨幣制度を整えられた。アメリカ大陸からスペインへ、1503-1660年の間に、160万トンの銀がもたらされた、欧州保有分の3倍、金は18万トンで全欧州保有分の5分の1(p29,83)
・日本では平安時代に、税逃れのために農民たちが貴族に農地を寄進した、これが荘園。これが広まるにつれて、国の中央集権力は弱まり、各地に有力者が割拠する「封建時代」になった(p37)
・ユダヤ人が西洋諸国でほかの民族と同じような市民権を手にするのは、フランス革命以降(p41)
・タルムードによれば、人を傷つけるものが3つある。悩み・諍い・空の財布、そのうち空の財布が最も人を傷つける(p46)
・中国の戦国7か国の中では、秦だけが、公定貨幣(形状と価値が統一)を製造していた。(p49)
・重い鉄銭を持ち歩くのが大変であるので、中国四川地域では、鉄銭を預かる「交子舗」という金融業者が現れた。この預かり証(交子)は、鉄銭と同じ価値を持つので、通貨の代わりとして用いられた。当時の四川地域では、印刷技術も発達していたのでこれが可能であった(p54)
・ローマ帝国は、キリスト教の教会と結びつくことで、過酷な税の徴収を行っていた。キリスト教徒であれば、過酷な税の徴収から逃れられないシステムになっていた。マホメットは、イスラム教に改宗すれば、人頭税を免除するとした(p57)
・イスラム帝国は、改宗しない者にも手荒なことはしなかった。キリスト・ユダヤ教徒は、「啓典の民」として、改宗の強制はされなかった。厳しく改宗を迫ったのは、それ以外の「多神教」の者たち(p58)
・イスラム帝国軍は、636年にローマ帝国が攻めてきた時、パレスチナの領民に対して、保護の代償である人頭税を全額還付した。この地の、ユダヤ・キリスト教徒は感激し、攻め込んでくる旧主君のローマ軍に敵意を抱いた(p59)
・現代の世界史は、西欧からの視点で描かれているので、オスマントルコについてはあまり語られない。中世から近代において、オスマントルコは世界に大きな影響を与えた、世界経済の中心的存在であった(p68)
・売上や経費などを記録する「損益計算書」と、資産や負債を記録する「貸借対照表」の2つの記録からなる記帳法である、複式簿記は、商売の記録を、当期の損益と、資産の増減の二面から分析できるので、より確かな会計状況の把握が可能となる。これは、イスラム商人が始め、それを北イタリアの商人が欧州に普及させたのが一般的な見方(p73)
・肉料理に欠かせない香料を得るためには、オスマントルコを経由しなければならないが、欧州はそれを攻め滅ぼす力はなかった。なので、迂回してアジアと交易するルートを模索し始めて、大航海時代が始まった(p76)
・ポルトガルは、もともとカスティリャ(スペインの中心国)の一部であったが、この地方の領主であった、アフォンソ一世がイスラム勢力を駆逐して、1143年にローマ教皇の最低により、独立してポルトガルが生まれた。中世欧州では新参者であったが、1249年にはイスラム勢力を一掃している(p77)
・スペインは、西インド諸島等でサトウキビ栽培を始めており、熱帯地域で過酷労働に従事できる黒人奴隷を必要としていた。その販売をしていたのがポルトガル、黒人部族から黒人奴隷を仕入れていた。アフリカでは、黒人部族間の争いで、負けた側は勝者の奴隷になる風習があり、ポルトガルはそれを利用した(p85)
・1571年には、スペインはレパントの海戦にて、オスマントルコ(無敵艦隊)を破った(p87)
・スペインは1492年に、ユダヤ教徒追放令を出している。財政に長じていたユダヤ人を追い出したことは、スペイン財政を、大きく悪化させた。無敵艦隊を維持する費用は、歳入の半分以上にも達した(p88)
・スペインの消費税:アルカバラは、一品ごとではなく、取引ごとに課税された。税収が増えたが、物価は上がり景気が低迷した。(p90)
・16世紀後半までスペインは、イギリスやフランスの2倍の商船隊を持っていた、これが無敵艦隊の礎となっていたが、17世紀になると、船舶数で75%以上の激減となり、スペイン港は外国船に占められ、造船業も壊滅した(p91)
・16世紀前半のヘンリー8世の時代、イギリスはローマ教会から離脱した、1534年、イギリスは国内の教会財産をすべて手中にした。破門とされる前には、ヘンリー8世は、ローマ教会への「十分の一税」の支払いをやめていた。国王至上法により、ヘンリー8世がイギリス国教会の最高位者であると宣言した(p95、96)
・スペインがアメリカ大陸でポトシ銀山を発見したことで、銀輸出を主な産業としてきたドイツが衰退した。それまでのイギリスは、毛織物をドイツに輸出する貿易国であったが、ドイツの衰退により貿易が振るわなくなり、「海賊行為」をすることになった。国家予算の半分程度を海賊行為から得ていた(p97、100)
・海賊とは言わずに、「私掠戦」と呼ばれた。敵対国の船を拿捕することが認められた船である。イギリスでは、承認を与える代わりに、略奪した積み荷の5分の1を国庫に納める義務があった(p101)
・イギリスが奴隷貿易を始めたのは、1560年代、廃止は1807年なので、250年間以上も行っていた(p103)
・当初は密貿易であったイギリスの奴隷貿易だが、18世紀になると正式な貿易となる。1701年から12年続いたスペイン継承戦争により、その権利を正式に獲得した(p106)
・中世の欧州諸国では、国全体が王の領土ではなく、貴族・諸侯がそれぞれ領地を持っていて、王というのは、その束ね役に過ぎず、国王の直轄領はけして広くなかった(p108)
・銀行家であったネッケルは、フランスの国家財政の公表を行い、フランス市民の支持を得たが、ルイ16世は1781年に彼を罷免した。しかし市民の後押しを受けて1788年に財務総監に復職した。その翌年にさらに罷免すると、パリの市民が激怒してフランス革命が起こる(p115)
・1793年に国民総動員法がフランスで成立、18-25歳の男性は皆、兵として駆り出され、1798年には正式に徴兵制度確立。ナポレオンは、これにより安いお金で強大な軍隊を持つことができた(p117)
・ナポレオンは、アムステルダムの金融家を支配しようとしたので、彼らの多くはロンドンへ逃げ込んだ。そのため、世界金融の中心は、アムステルダムからロンドンに移った(p118)
・ナポレオンの最大の対抗勢力だったイギリスは、進歩的な税制と国債により、十分な軍資金を準備していた(p119)
・出資者は出資した金額だけ責任をとればいいという有限責任の概念を初めて明確にしたのは、オランダの東インド会社、イギリスの東インド会社は、その点が曖昧だったので、株式会社の起源という名誉には浴していない(p121)
・ワットは、蒸気機関の発明者ではなく、蒸気機関を実用化した人である(p122)
・なぜイギリスは資本力で先んじていたのか、財政改革(国債制度の確立・イングランド銀行の設立)にその最大の要因がある。名誉革命は「課税権は議会にある」とされ、国王の権利を制限した(p125、126)
・イングランド銀行は、イギリスの国債を引き受ける代わりに、通貨発行権を得るという仕組みになっていた。具体的には、政府は8%の利率で国債発行をして、イングランド銀行は通貨発行して民間業者に貸し付ける(p127)
・イギリスが巨大な植民地を維持していたのは、植民地の中での各民族の対立を煽り分裂させることで、イギリス本国の反発心を軽減した(p129)
・イギリスは、それまでインドを支配していたムガール帝国の影響を排除するために、あえてヒンズー教徒に対する優遇策を行った。そして、イスラム教徒と、ヒンズー教徒は対立することになり、イギリスの支配は成り立っていた(p130)
・アメリカは、西欧の植民地だけでなく、インディア��からも、オハイオ、インディアナ、イリノイを購入した。(p142)
・テキサスに入植する際には、カトリックに改宗するなどの条件があったが、プロテスタントのアメリカ人はそれを無視してメキシコに入植、1936年にはテキサスは独立を宣言した(p143)
・アメリカは1845年、メキシコに特使を派遣して、補償金を出すことを条件にテキサス併合を持ちかけたが、断られたので戦争に突入、テキサス・カルフォルニア・ニューメキシコを入手した、代価は1500万ドル(p144)
・フランスからルイジアナを買収したときは、イギリス・ベアリングズ銀行がアメリカ国債を引き受けている(p148)
・1492年、ユダヤ人はカトリックへの改宗者を除いてスペインから追放、1497年にはポルトガルからも追放。多くがオランダのアムステルダムにたどり着いた。オランダの世界進出につれて、中南米ブラジルに進出、1654年ポルトガルがブラジルを再占領すると、当時オランダだった北アメリカのニュウーアムステルダムへ逃げた(p150)
・明治維新から第二次世界大戦前までの70年間で、日本の実質GNPは約6倍、工業生産は30倍、農業生産は3倍となっている。このような急激な成長をしている国はなかった(p170)
・明治日本が経済発展するためには、外国からの技術移転が必要であったが、そのお金は、輸出(生糸)で賄った(p174)
・第一次世界大戦は、戦争の形を変えた。エネルギー源の主流を石炭から石油に変わったエネルギー革命をもたらした(p186)
・1924年に定めらえた、トランスファー保護規定とは、ドイツが賠償金をマルクで支払えばよいとしたもの。このため、マルク価値が下落しないように連合国側が調整する義務が生じた(p192)
・1929年の春に、ドイツと連合国との間で、賠償金額が3分の1に軽減される代わりに、トランスファー保護規定が破棄され、ドイツは相手国通貨で払うことになった(p193)
・アメリカは自国内でインフレが起きることを懸念して、ゴールドが流入しているにもかかわらず、通貨量を増やさなかった。1922年以降、流入したゴールドは、連邦準備銀行の金準備に含めないようにした。金がますます流入して、1923年末には世界の金の4割をアメリカが保有(p196)
・アメリカが、世界貿易の通貨、である「金」をため込んでしまったことが、世界を恐慌に陥れる強い「負のエネルギー」となった(p197)
・英仏が宣戦布告する前(第二次世界大戦前)までのナチスドイツの領土拡張のほとんどは、旧ドイツ帝国の国土回復か、ドイツ語圏地域の併合であった。宣戦布告後は、資源確保のために侵攻をした(p201)
・1940年7月にドイツが発表した「欧州新経済秩序」は、ドイツの占領地域ではマルクを通貨として、資本・労働力・商品の往来を自由にする、今のEUのような計画であった。これは、(金を持っている)アメリカにとって、嫌なものであった。アメリカは金本位であったので、世界一の繁栄ができていた(p209)
・ドイツが「欧州新経済秩序」を発表した2か月後の1940年9月に、アメリカは、イギリス・カナダと、「駆逐艦・基地協定」���結んだ。イギリス軍基地を99年使用する代わりに、50隻の駆逐艦を供与する(p210)
・イギリスは産業革命で紡績業の機械化・合理化に成功していたが、それらは老朽化していた。日本は100年遅れであったので最新技術をそのまま取り入れた。財界人が協力して大工場を作った(p213)
・日本は国内生産以外に、上海・青島にも最新鋭の紡績工場を建設して、イギリス製品を中国市場から駆逐した。1928年にはイギリス輸出額の37%であったが、1933年には追い抜いた、インド市場を奪われたのが痛かった、そのためブロック経済化した(p214)
・インド市場から締め出された日本は、そのはけ口を、満州に求めた(p216)
・1938年10月に、国民党政府の重要拠点である、武漢三鎮と広東も攻略し、11月には「東亜新秩序」の宣言を行う、これを機にアメリカは強硬姿勢を取るようになる。翌年1939年にアメリカは日本との通商条約を破棄、石油禁輸措置、蒋介石への支援開始(p221)
・東南アジア地域が、簡単に日本軍の手に落ちたのは、欧米諸国の植民地政策に対する現地の反発があったから(p224)
・ソ連は平等だったから崩壊したのではなく、自由主義国よりも不平等だったので崩壊した(p230)
2016年12月7日作成
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国光氏が「勉強になった!」と書いていたので読んでみる。サクサクと読める文章だったし、私も作者と同様「あらゆるモノゴトには経済的側面や事情が必ずある」と思っているので、興味深く読めた。お金や経済的観点から歴史を古代から第二次世界大戦までことごとく読み解いている。特に知らなかった話としては第二次世界大戦後の経済秩序を作ったブレトンウッズ体制の基本的考え方(ドル機軸)とその無理さ(本質的に基軸通貨と貿易黒字、金保有とが矛盾するのでいずれ破綻するモデルであったこと)についてと、ケインズはその点を指摘して、ブレトン・ウッズ体制に反対をし続け、その代わりにバンクコールというどの国の通貨でもない基軸通貨を創設して、それを各国の貿易収支と完全にリンクさせて世界経済を健全に廻そうとする構想を提示していたということが白眉であった。確かにその後の為替に翻弄される世界情勢を見ればこれは慧眼であったように思う。
筆者は冒頭で、「国家が衰退するパターンはどれも一緒。健全な成長と健全な徴税によって国家は成長し、そして富裕層が特権を作って税金を逃れ、中間層以下に皺寄せが行くことにより崩壊に繋がっていく」としたうえで終章でいまの日本や世界の経済情勢を俯瞰して、「まさにそうなっていない?」と警告を発している。この本が書かれたのは2015年ということだが、まさにその後、パナマ文書やトランプ旋風などが起こっていることを思えば、簡便な本ながらなかなか深い指摘をしていたということになると思う。
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経済から読み解く世界史のおもしろトピック本。高校レベルの世界史が頭に入っていると、そうだったのか、というネタが詰まっていて面白い。ボストン茶会事件は、課税に反対するだけでなく、イギリスからのお茶輸入で関税を払っていなかった密輸業者が打撃を受けたので発生したとのこと。
ヒトラーがノーベル候補に上がっていたというのも初耳だった。皮肉だったとWikipediaにも書いてあるが、筆者によるとミュンヘン会議でヒトラーの拡大停止宣言が世界平和につながると評価されたから、とのこと。宥和政策の流れの中ではあり得る話ではある。サブタイトルにあるように、「こんな見方があった!」というのが本書をよく表している。知ったからと言って世界は変わらないが、世界史の教科書では説明しきれない道理が、歴史中には無数に埋もれている。という点で歴史好きには面白い本だと思う。