日本ファシズム論を超えて
2016/10/17 21:39
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投稿者:コーク - この投稿者のレビュー一覧を見る
おそらく戦前の政治史を考える際に基礎的な文献の一つとして挙げられる本書であるが、この本の魅力はかつて歴史学界で主流であった「日本ファシズム論」を史料を用い実証的に否定したことであろう。
恐ろしいことに30年以上前の書でありながら未だ内容は古びておらず学術的な評価にも十分耐えられる本書が復刊されたことは、素直に嬉しいものである。
太平洋戦争開戦前夜の近衛内閣の内部における構想を暴いた貴重な一冊です!
2020/03/21 11:38
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、太平洋戦争がまじかに迫った昭和15年に、我が国で起こった近衛文麿による新体制運動について、知られざる事実を明らかにして、詳細に解説した画期的な歴史書です。当時、近衛内閣は、財閥の打倒、既成政党の解散、軍閥や宮廷官僚の一掃を行い、すべての国家機構を一つの党の指導下に置こうとしました。いわゆる大政翼賛会体制です。この新体制では、憲法改正と解釈改憲で、党の指導者が天皇に対する唯一の輔弼者となることになったのですが、こうした構想はどのようにして生まれたのでしょうか。同書は、太平洋戦争の開戦前夜の近衛内閣の内部を明かす貴重な一冊です!
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次の3箇所が印象に残りました。
(1)大政翼賛会をつくろうとした人々が、大日本帝国憲法
が著しく分立主義的であったことを問題にしていた。
(2)一国一党=幕府論という批判があった。
(3)「戦時体制=ファシズム」ではない。
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「『大政翼賛会』は、本当に『軍部主導』で行われたのか?」という疑問について、明確に回答してくれる書籍である。1931年に勃発した満州事変以来、日本に対する国際社会の視線は、年を追う毎に厳しくなっていった。このままでは国際社会における地位は低下し、ひいては日本の権益も外国に奪われるのではないか?戦前における日本の侵略行為は厳しく処断されて叱るべきだが、驚くことに日本の侵略政策について、日本の無産運動をリードしていた社会大衆党(戦前における、日本の社民主義者が集まって結成された政党)はもちろん、共産党幹部の中にも、この政策を支持するものがいたのである。「大政翼賛会」は、もともと「軍閥・財閥・既成政党に対する対抗勢力として、革新派官僚である「革新官僚」や、先に挙げた社会大衆党所属の政治家、元共産党幹部、日本の将来を憂える保守リベラルを標榜する政治家らによって企図されたものであった。彼らはその象徴として、その当時高い人気を誇った近衛文麿を代表にしようと画策する。だが肝心の近衛の態度・政治姿勢が定まらず、その結果できたものは、当初考えられたものとは全く違ったものになってしまった。
濃密な人間ドラマが凝縮された一冊だが、引用している資料が漢文混じりだったり、言い回しや仮名遣いに古めかしいところがあったりで、理解しにくいのが難点である。だが70年以上前野政治状況は、現在とあまりによく似ている。果たして、歴史は繰り返すのか?
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第1部 近衛新党運動“昭和一三年”(さまざまな「復古‐革新」派;軍部の中の動き;社会大衆党の「復古‐革新」派化;実現しなかった近衛新党計画)
第2部 近衛新体制運動の展開“昭和一五年”(近衛新党に対するさまざまな期待;動き出した新体制運動;大政翼賛会の発足;大政翼賛運動の落日;新体制運動とは何であったのか)
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初版:1983年(中公新書)。1938年の近衛新党運動から40年10月の大政翼賛会発足を経て、41年4月の翼賛会改組に至る過程を1次資料に基づいて追跡したもの。翼賛会改組で分析を止めているのは、これが新体制運動の推進者たる「革新派」の敗北を意味するため。
もっとも、革新派が全くの無力だったのではない訳で(たとえば電力国家管理)、彼らの活動がトータルとして日本社会にどのような足跡を残したのかは、本書刊行から30年以上経つ今日でも未だ、評価は定まっていないといえよう。
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「新体制」が盛り上がって、頓挫?するまでの背景・経緯・理由等々が克明に描かれていて、大変興味深い内容になっている。既存政党打破&新党ブームってのは戦後も繰り返されているわけで、ある意味日本が「異常」であったこの時代に起きた事は現代でも参考になる部分は多いように思われる。
それにしても近衛が「強い者へのあこがれ」というコンプレックス?があり、次女の結婚祝いのパーティでヒトラーのコスプレをしたという逸話には驚かされる。